/

長期分散投資、リバランスのすすめ

内外の株式や債券など、複数の資産を組み合わせて長期間投資をする「長期分散投資」は、リスクを抑えながら堅実に資産運用する代表的な投資手法だ。ただ、長期とはいっても、資金を投じたまま放っておくのではリスク軽減の効果が薄くなるので、定期的なメンテナンスが必要だ。それが「リバランス(資産配分の再調整)」。最近はリバランスに便利なインターネット上のサービスも増えているので、上手に活用しよう。

複数の資産を組み合わせる分散投資では、時間の経過とともに相場が変動し、ある資産が値上がりする一方、別の資産が値下がりするなどして、当初の資産配分からずれが生じる。増えた資産がそのまま上昇を続ければよいが、相場は上下に変動するのが常。大きく値上がりしたものほど、下落幅も大きくなりがちだ。リバランスしないで放置すると、値上がりした資産のリスクを当初の想定以上に抱えてしまうことになるが、リバランスをすることによって崩れた資産配分を元の比率に戻せば、リスクを想定の範囲内に抑えることができる。

自分のルールを

グラフAは2003年1月に内外の株と債券に25%ずつ投資をした人が、「全くリバランスをしない場合」と「1年ごとにリバランスをした場合」とで、運用成績(パフォーマンス)にどのような変化があったかを示したものだ。各資産がおおむね上昇を続けていた07年夏頃まではリバランスしない方が好成績だったが、08年9月のリーマン・ショック後の落ち込みはリバランスした場合よりも大きく、10年12月末時点でのトータルリターンはリバランスした場合よりも10ポイント近く劣る。

投資の基本は「安く買って高く売る」だが、売買のタイミングを的確にとらえるのは難しい。「値上がりしているときには『もっと上がるのではないか』と思い、逆に値下がりしているときには『下がり続ける』と思いがちで、売り買いの時期を逃してしまう」(投資助言会社イボットソン・アソシエイツ・ジャパンの小松原宰明さん)からだ。

リバランスは値上がりした資産を売り、値下がりしたり、相対的に安くなったりした資産を買うので、自動的に「安く買って高く売る」を実践できることになる。

リバランスの方法は大きく「定期型」と「乖離(かいり)型」の2種類に分かれる。定期型は「半年ごと」「1年ごと」などと、一定の期間ごとにリバランスする方法。乖離型は「当初の資産配分から10%以上ずれたら」というように、乖離幅が一定以上に開いたらリバランスする。

乖離型の場合は、資産配分の変化を日々チェックする必要があるので、仕事などの関係で投資に専念できない個人投資家には定期型の方が取り組みやすい。「自分の誕生日」や「年度末」など、覚えやすい日を決めて、1年に1回、資産配分が変わっていないかを確認するとよいだろう。

イボットソンの調査では、1年ごとよりも3年ごとにリバランスした方が運用成績がよかったが、あまり間隔が空くとうっかり忘れてしまいかねない。次善の策としては、資産配分のチェックは毎年するが、乖離幅が小さい場合はリバランスを見送るという方法もある。ただ「リバランスは相場観を交えずに、機械的に実施するのが基本」(ファイナンシャルプランナーの福田啓太さん)なので、「乖離幅が当初の資産配分比率から2割未満ならば見送る」といったふうに、自分でルールを決めておくことが重要だ。

では、リバランスは具体的にどのようにしたらよいか。例えば200万円の資金を株と債券に50対50の割合で投資し、1年後に株が20%(20万円)値上がりし、債券の価格は変わらなかったと仮定する(図B)。全体の評価額は220万円に増え、資産配分は55対45に変わる。もともとの株式の配分比率は50%なので、220万円×50%=110万円あればいい。ここでリバランスするとは、株式の超過分10万円を売却し、その資金で債券を買い増して、どちらも110万円になるようにすることだ。

投信は「1万円分」などと金額を指定して売買できるので、リバランスしやすいが、個別株などぴったりの金額で売買することが難しい場合は、近い金額になるものを選んで売買するとよいだろう。利益の出ているものを売却すると税金がかかるが、「税金は売却した金額のうち利益部分にだけかかるので、それほど大きな金額にはならないはず。必要なコストと割り切った方がよい」(福田さん)。

自動でグラフ表示

様々な資産が一斉に値下がりしたリーマン・ショックのような時には売却はしないで、資金を追加投入することでリバランスする方法も有効だ。表Cは海外債券、国内株式、新興国株式、世界不動産投資信託(REIT)の4種類の投信に分散投資していた投資家の資産配分の変化と、保有資産の評価額の推移を示したもの。リーマン・ショック直前の08年8月末時点の評価額は合計で約3千万円あったが、ショック後はすべての投信が値下がりし、09年1月末には約2千万円まで目減りした。海外債券に比べて国内株式や新興国株式、世界REITの下げ幅が大きく、資産配分も大幅に崩れた。

そこで、09年5月に合計額の1割に相当する約200万円の追加資金を投じて、海外債券以外の投信を買い増してリバランスしたところ、10年4月には評価額が3200万円まで回復。追加の投入資金を考慮しても、ショック前の水準まで戻すことができた。

資産配分の状況を確認するには、取引をしている証券会社や銀行などからデータを集めて、自分でエクセルファイルなどに入力するのが一般的。その作業が面倒に感じる場合は、ウェブサイトの資産管理サービスを利用するのも一法だ。イボットソンが運営する「投信まとなび」やモーニングスターのサイトにある「ポートフォリオ」の機能を使えば、例えば保有する投信の購入日や金額を入力するだけで、現時点での評価額や保有投信全体での資産配分をグラフにして表示してくれる。バランス型投信のように複数の資産に投資する場合も、投資比率に応じて自動的に振り分けるので便利だ。どちらも無料の会員登録で利用可能だ。

マネックスビジョンβの資産管理サイトの画面。保有資産を種類ごとに自動的に分類してグラフ表示する

マネックス証券が同社の顧客向けに提供している「マネックスビジョンβ」は、株や投信などのリスク資産だけでなく、銀行預金などの安全資産や外貨預金などもまとめて管理できるのが特徴だ。マネックスで購入した商品だけでなく、口座番号やパスワードを登録すれば、他の証券会社や銀行の口座情報も自動的に取り込み、どのような資産配分になっているかグラフで表示できる。

(小国由美子)

[日本経済新聞朝刊2011年2月20日付]

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン