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「隠れ優待」に個人の関心 議決権行使やアンケート回答の謝礼で商品や金券

開示の在り方に課題も

株主優待制度として公表せずに商品などを提供する「隠れ優待」への個人投資家の関心が高まっている。インターネットなどを通じて情報が広まり、実質的な株主配分として位置付ける動きもある。ただ、法的根拠などは不明確で実施の有無が分かりにくいケースもある。投資情報としての活用には慎重さも必要だ。

「今年もすだちが届いた」――。分譲戸建て中堅のフジ住宅に関するネット掲示板は秋になると「すだち」の話題で盛り上がる。同社は株主への情報誌の送付と同時に実態調査のアンケートを実施。今年も単元株以上を保有する回答者全員にすだち1キロを送付した。

株主優待は交際費として計上し課税されるのが一般的。一方、アンケート回答への謝礼は経費として損金算入が可能だ。フジ住宅のIR担当者は「税負担軽減の分、商品に費用をかけられる副次的効果もある」と話す。

アンケートに回答した株主に商品や金券を贈る企業は珍しくない。「数十社はあるのでは」(IR支援会社のプロネクサス)との見方もある。「個人投資家の保有目的や意見を把握する」(クラレ)ことを目的とするケースが多い。以前からあるが、最近はネットなどを介して情報が流布するようになった。

大東紡織のように株主総会議決権を行使した株主にクオカードを贈呈するといったケースもある。持ち合い解消を進めた結果個人株主が増え、議決権行使比率が下がってしまったため、行使を促すために謝礼贈呈を決めたという。

株主優待や隠れ優待には法律上の明確な規定はない。企業が柔軟に決められる一方、問題視されるケースもあるようだ。会社法に詳しい葉玉匡美弁護士は(1)配当可能な利益がない(2)会社法上の利益供与に該当する(3)株主平等原則に反するなどのケースが法的問題になる可能性を指摘する。

会社法は金銭以外を株主に配分する「現物配当」を規定している。隠れ優待とされるもので、自社のサービスと関係ない金券の贈呈などは実質的な現物配当に該当する場合もあり得る。配当可能な利益のない企業が、隠れ優待を実施すれば配当財源規制に触れる可能性も否定できない。

2007年の株主総会で委任状争奪戦になったモリテックスのケースでは、議決権を行使した株主に500円の金券が贈呈されたが、東京地裁は「利益供与に該当する」として、総会決議を取り消す判決を出した。

「法的問題に発展する事例は限定的」(葉玉氏)だが、公表される株主優待と違って実施も取りやめも確認しにくいという問題は残る。隠れ優待を当て込んで株式を購入してもいつ中止になるかは分からない。

「掲載しないでほしい」。株主優待関連の書籍を刊行する大和インベスター・リレーションズには、隠れ優待実施企業からこんな依頼がくることがある。公表するとやめにくいという企業側の本音が見え隠れする。

隠れ優待は、株主と他の投資家の情報格差を生みやすい。「優待利回り」を重視する個人投資家もいるなか、分かりやすさへの配慮も求められそうだ。

(小林由佳)

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