創られた「日本の心」神話 輪島裕介著 昭和歌謡史に新たな視点

2010/11/10付
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(光文社新書・950円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

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演歌は、日本人の叙情をうつしだしているという声を、しばしば耳にする。美空ひばりのうたう演歌に、民族の魂とふれあうひびきを聴きとるむきも、いなくはない。このごろよく聞こえてくるそんな物言いを、しかし著者はねじふせる。

演歌という区分けが、あるまとまりをもってうかびあがったのは、1960年代後半からである。そして、そのさきがけをなしたプレ演歌には、さまざまな洋楽が影をおとしていた。ラテン音楽やスウィング・ジャズが、それらの下地にはしみこんでいる。森進一のしわがれ声は、ルイ・アームストロングの後追いを、ねらっていた。

民族をこえてまじりあったそういう音楽が、なぜ日本人の魂をあらわすと、言われるようになったのか。その裏側を、この本はおしえてくれる。レコード会社の思惑、共産党の文化指導と、それにあらがう人々のさやあて、等々を。寺山修司が、竹中労が、そして五木寛之が、そこにどうかかわったのかも、おかげでよくわかった。

目の中にあった鱗(うろこ)を、あらいおとしてもらい、気持ちがすっきりする。昭和の歌謡史が、新しい見取図で見えてきた。

★★★★★

(風俗史家 井上章一)

[日本経済新聞夕刊2010年11月10日付]

★★★★★ これを読まなくては損をする
★★★★☆ 読みごたえたっぷり、お薦め
★★★☆☆ 読みごたえあり
★★☆☆☆ 価格の価値はあり
★☆☆☆☆ 話題作だが、ピンとこなかった

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