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損しない火災保険の選び方

少額短期保険も選択肢

賃貸住宅に入居する際、火災保険に入るよう求められた人が多いはず。「必ず入るもの」と言われ、内容をよく確かめずに加入する人もいるのでは。実際は自分でどの保険に入るかを選ぶことができ、生活上思わぬ時に役立つこともある。この機会に知っておこう。

「入居者は火災保険に加入するものとする」。賃貸住宅に入居する時、契約書類を見るとこんな内容が――。賃貸マンションなどでは通常、火災保険加入が入居の条件になっている。

3点セットの構成

保険に入るよう求めるのは家主だが、実際に保険料を払って加入するのは入居者。結果的に「賃貸入居者向けの保険は、一般に家主にも入居者にも役立つ3点セットになっている」(日本損害保険協会)(表A)。

保険料の内訳で最も大きいのが、入居者自身の家具や衣類といった「家財」の損害を補償する「家財保険」。これに加えて、例えばタバコの火の不始末で火事を起こして建物が燃えてしまった時などに家主への損害賠償費用を補償する「借家人賠償責任補償(借家人賠責)」が必ず付く。家主からすると一番大切な補償といえるだろう。

次に、洗濯機の水漏れで階下の部屋が水浸しになった時などに、住民への損害賠償費用を補償するのが「個人賠償責任補償(個人賠責)」。つまり、家財保険に2つの賠償責任補償を加えるのが、賃貸向け保険の基本スタイルだ。

ファイナンシャルプランナーの平野敦之さんは、「入居者は強制的に加入させられると思うかもしれないが、賠責も家財の補償も入居者を守るもの。もしもの時を考えれば、加入を義務付ける物件の方が管理がしっかりしている」とみる。持ち家派が住宅ローンを組むときに加入する火災保険では家財補償も個人賠責も基本的にはついていない。賃貸住まいの人は、初めから持ち家派より充実した補償があるともいえる。

現在の家財保険では、保険金の計算は原則「新価・実損払い」。例えば保険金額を100万円に決めておき、火事で全焼した場合、家財が古くなっていても100万円の保険金が出る。半焼などの一部損害でも、決めてあった保険金額を上限に、同じ程度の新品を買い直す費用や修理費用を全額もらえるのが普通だ。

入居者が払う保険料の額は、主に家財の保険金額で決まる。しかし建物と違って家財は総額いくらか計算するのが難しく、買い足したり捨てたりすることもある。どうやって保険金額を決めればよいのか。

 保険会社は様々な調査結果に基づき、住民の年齢や家族構成などから平均的な家財の総額を算出した一覧表を作っている。加入時はこの表にしたがって、例えば20代前半の夫婦なら保険金額を500万円程度にするよう勧められるが、表は目安にすぎない。「今の自分の生活レベルを再現するのにいくらあれば足りるか」と大まかに考えて金額を決めるのがいいだろう。

新価・実損払いでも、保険金で購入時の値段相当をまるまるもらえるわけではない。例えば新製品が出ると旧タイプが値下がりする家電は、持っている型式と同等の製品の実売価格が保険金額のベースになる。購入時に20万円だったパソコンと同じスペックの製品が10万円に値下がりしていれば、保険金は10万円だ。

日常の事故にも

賃貸向けの保険で、意外に使えるのが個人賠責だ。平野さんは「飼い犬が散歩の途中で子供をかんだとか、自転車で通行人をはねたといった日常生活の損害賠償費用も補償される」と話す。親元を離れた大学生の子どもの事故でも有効。補償限度額は商品によって幅がある。自分の保険を確認し、いざという時は忘れずに使おう。

入居時には特定の商品だけを勧められることが多いが、通常は自分で選んでもかまわない。選ぶ時のポイントを表Bにまとめた。

まず、保険料の節約。最近の家財保険は火災や落雷、爆発、水漏れ、盗難、不注意による事故など幅広いリスクを補償するのが一般的。いらない補償を外せば節約できる。賃貸向けで家財の補償を選べる商品は少ないが、例えば東京海上日動火災保険と損害保険ジャパンの商品は水害の補償を外せる場合がある。東京海上日動では、家財保険が300万円で2年契約の場合、水害の補償を外すと2年間の保険料が約2500円安くなる。とはいえ2階以下の部屋や水害が多い地域なら外さない方がいい。

不要な補償外す

個人賠責を外すという手もある。前出の東京海上日動と損保ジャパンは個人賠責を付けない選択もできる。東京海上日動では、家財保険が前述と同じ条件で、個人賠責を外すと保険料が2年で約2000~3000円安くなる。個人賠責は自動車保険などに付いていることがあり、もしもの時は片方からしか保険金が出ない。自動車保険に入っていれば要確認だ。

手続き次第で保険料を安くできることもある。富士火災海上保険は、条件を満たせば、ネットで加入手続きをすると家財保険の保険料が1割引きになる。

補償内容の特色も選択のポイント。例えば家財保険や賠責では家族しか補償の対象にならないのが一般的だが、AIU保険やエース損害保険・エース賃貸少額短期保険のようにこれを広げるところもある。結婚前のカップルやルームシェア仲間といった「同居人」も補償される。富士火災も、今年中をめどに「同居人」まで対象を広げる予定だ。

賠責に示談交渉サービスが付いているものもある。三井住友海上火災保険や富士火災などは、個人賠責と借家人賠責の双方にこのサービスがある。

最後に、忘れると損なのが退去時の手続き。賃貸向けの保険は、保険期間を入居契約に合わせ、保険料を一括前払いするのが基本。期間途中で退去する場合、「残り期間分の保険料は普通、少なくとも一部は返してもらえる」(日本損害保険協会)。保険会社に直接、途中解約を伝えるのが確実だ。(大賀智子)

賃貸向け保険では少額短期保険も選択肢になる。耳慣れない人が多いと思われるが、損害保険会社の保険とどう違うのか(表C)。
 まず、保険会社が破綻した場合、損害保険会社の商品だと「損害保険契約者保護機構」によって契約が続き、保険金額の8割以上は受け取れる。少額短期保険業者には、こうした仕組みがまだなく、契約が続かない恐れがある。また保険金額の上限がある。賠償責任補償は家財保険と別枠で1000万円認められるが、補償上限額は損害保険会社に比べ少なくなる。
 一方、保険料は全国一律の場合が多く、シンプルでわかりやすい。ジャパン少額短期保険ではネットだけで加入手続きを終えられ、家財の保険金額200万円で2年契約する場合、2年分の保険料が1万1000円。「賃貸契約の更新時にネットから加入する人が増えている」(同社)という。

[日本経済新聞朝刊2010年4月18日付]

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