中国企業、米豚肉加工大手を買収
食品安保 問題視も
【ニューヨーク=西邨紘子】米豚肉加工大手のスミスフィールド・フーズは29日、中国の双匯国際の傘下に入ると発表した。買収額は約47億ドル(約4750億円)。米国内の豚肉需要の伸び悩みで事業環境が厳しいスミスフィールドと、中国向けの供給強化を目指す双匯の思惑が一致した。中国企業による米企業の買収額としては過去最大級となるが、米当局の審査が安全保障上の観点から長引くとの見方もある。
双匯はスミスフィールド1株あたり現金34ドルで市場から買い上げる。買い付け価格は買収発表前の28日終値より3割強高い。買収後は非公開企業にする。双匯は、買収後もスミスフィールドを米国の独立事業として維持する方針。2013年下半期に買収手続きを終える見通し。
スミス社の負債の引き受けを含めた買収総額は約71億ドルに上る。米メディアによると、中国企業による米企業買収では過去最大級という。
スミス社は養豚から豚肉の加工販売まで一貫して手がける。主力市場の米国を含めて世界12カ国で事業を展開している。12年4月期の売上高は131億ドル。
中国では中間層の拡大を背景に豚肉需要が伸びている。中国農家の養豚技術の遅れや衛生環境の悪さで豚の死亡率も高いとされ、不安定な供給による市場価格の乱高下が社会問題となっている。今回の買収で、双匯は安全性の高い米国産豚肉の安定的な調達網を確保できるようになる。
一方、中国製食品の安全性問題は米国でもたびたび取り上げられてきた。スミスフィールドは米国産の豚肉を加工用として扱っており、ポープCEOは「中国から米国に(豚肉を)輸入することはない」と強調。買収の狙いが「中国への輸出拡大にある」と説明した。
ただ、一部の専門家は今回の買収について「(食品の)安全保障の観点から米当局が入念な審査を実施するのでは」と指摘する。
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