中国が北極海を商業利用 大連、ハブ港めざす
欧州への航行、2週間短縮
【大連=森安健】中国がロシア沖の北極海経由で欧州に向かう「北東航路」の商業利用に乗り出した。国有の海運大手、中国遠洋運輸集団(コスコ・グループ)の貨物船が中国の商船としては初めて、大連港(遼寧省)からオランダのロッテルダム港に向かった。従来のスエズ運河を経由する航路と比べ約2週間早く欧州に到着できるため、海上貨物輸送の流れが変わる可能性もある。

コスコ傘下の中遠航運(広東省)の多目的船「永盛」(1万9461トン、全長155メートル)は8日、大連港を出港した。積載貨物の内訳は公表していないが、海運関係者によると天候や波の影響を受けにくい鋼材とみられる。8月下旬にベーリング海峡を通過、ロシア沖の海域を経て9月11日にロッテルダム港に到着する計画だ。

北極海の氷は夏場の気温上昇で徐々に薄くなり、海氷面積は例年9月に最も小さくなる。北東航路は7月末から約4カ月しか利用できないが、燃費・人件費の削減に加え、インド洋やマラッカ海峡に多い海賊のリスクも回避できるため、世界の海運会社が注目している。2020年には中国のコンテナ輸送の15%近くが北極海を通るという試算もある。
自国の領海を活用できるロシアは、すでに試験的な商業利用を開始し、主に資源燃料を輸送している。日本もコンテナ輸送などの活用を探る考えだが、「ロシアへの事前申告の必要性など情報を収集している段階」(日本政府関係者)。まだ調査船や商業船は派遣していない。
北極海に向かう貨物は、拠点港で寒冷地を航行可能な「アイスクラス」と呼ばれる特別仕様の船に積み替える必要がある。大連港は航行の実績を重ね、ハブ港になることをめざす。
北海道の苫小牧港や韓国の釜山港も同様の考えを持っており、北東アジアの物流拠点を巡る争いが激しさを増しそうだ。
一方、地球温暖化により北極圏の永久凍土が融解して大量のメタンガスが大気中に放出され、世界の気候や経済に悪影響を及ぼすとの研究もある。このため、北極圏の大規模な開発には慎重論も出ている。