シリア緊迫、周辺国に火種 難民流入など不安定要因に
貿易・物流にも影響

2013/9/3付
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【ドバイ=久門武史】米国が攻撃を準備するシリアと、周辺国とのあつれきが強まっている。米軍事介入がただちに行われる可能性はなくなったが、攻撃の巻き添えを恐れてレバノン、イラクなど隣国に逃れる難民は増え続けている。受け入れ国では社会・政情不安が起き、摩擦の火種となりかねない。シリア経由の物流が滞るなど、中東域内の経済活動にも影響が出始めた。

「シリアの戦況悪化に伴って難民が急増し、地元住民から迫害されるケースもある」。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)エジプト事務所のダイリ代表は日本経済新聞の取材にこう語り「(食料などの)支援よりも身の安全の保障を求める声が高まっている」と明かす。

最も多くのシリア難民が流入しているのは、シリアの西隣レバノンだ。人口が約430万人にすぎない同国に70万人以上のシリア難民が流入。シリア人が雇用を圧迫しているとの声もあり、レバノン人との衝突で負傷者も出ている。地元住民からは難民が事実上定住することへの懸念も上がり始めた。

国境を直接接していないエジプトでも、シリア難民はすでに11万人にのぼる。イスラム原理主義組織「ムスリム同胞団」と対立する暫定政権側は、反政権デモに加わったとしてシリア難民1人を逮捕。地元メディアではシリア難民に対する批判的な論調が目立つ。

イラク北部のクルド自治政府は8月下旬、シリア難民の受け入れを一日3000人までとする上限を設けた。ロイター通信が伝えた。

エジプト・カイロでのシリア攻撃反対デモに参加するシリア人女性(1日)=ロイター

エジプト・カイロでのシリア攻撃反対デモに参加するシリア人女性(1日)=ロイター

●人口の3分の1避難 AP通信によると国連当局者は2日、シリアの国内避難民が500万人に達したと述べた。UNHCRのまとめでは周辺国に逃れた難民は約200万人。合わせると約700万人となり、シリアの人口約2100万人(昨年推定)の3分の1に当たる。米国がシリア攻撃に踏み切れば、難民が一段と膨れ上がるのは必至。周辺国は事態の悪化を恐れている。

宗教的な対立構造がシリアと似るレバノンでは、すでに宗派対立が波及。イスラム教シーア派の民兵組織「ヒズボラ」が支配するベイルート郊外の地域で爆弾テロが発生すると、8月中旬にはスンニ派住民の居住区域で、報復とみられる連続爆破事件が起き、40人以上が死亡した。

イラクなどではイスラム勢力が米国への報復に動く可能性もある。ロイター通信によると、イラクのイスラム教シーア派の民兵組織の一つは「米国がシリアを攻撃すれば、イラクや(中東)域内の米国の権益が標的になるだろう」と警告した。

●中継地がマヒ シリア情勢の緊迫は中東の貿易・物流にも影響している。トルコは中東のアラブ諸国向けに、農産品などをシリア経由の陸路で輸出していたが、中継地のシリア北部アレッポの物流機能がマヒ。代替ルートとしてイスラエルが使われ始めたようだ。

現地からの報道によると、イスラエルのハイファ港ではトラックが直接乗り降りできる「RORO船」のトルコからの寄港が急増している。下船したトラックはシリアを迂回してヨルダンを経由、サウジアラビアやイラクに向かっているとみられている。

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