経済底上げへ異例の措置
新貸出制度を検討 設計・実効性に課題多く

2010/5/1付
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記者会見する白川日銀総裁(30日午後、日銀本店)

記者会見する白川日銀総裁(30日午後、日銀本店)

日銀が環境・エネルギー関連の事業などを活性化するため、金融機関向けの新たな貸出制度を創設する。少子高齢化の進展や産業競争力の低下で日本経済の成長力が落ちているとの危機感を強め、中央銀行としては異例の措置に踏み込んだといえる。政府が6月にまとめる新成長戦略と歩調を合わせることで、追加金融緩和の圧力をかわす狙いもあるとみられる。ただ新制度の設計や実効性には課題が残りそうだ。

民間の取り組みを支援

「民間金融機関による自主的な取り組みを、中銀の資金供給機能を生かして支援できないか検討していく」。白川方明総裁は30日の記者会見で、新制度導入の狙いをこう説明した。

日銀は同日発表した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で、経済・物価の見通しを上方修正し、2011年度の消費者物価上昇率が3年ぶりのプラスに転じると予想した。にもかかわらず「成長基盤の強化」に的を絞った資金供給に乗り出す理由は、展望リポートの中にある。

「世界経済は金融危機以前の状態に戻る過程にあるわけではない」。展望リポートは世界経済の構造変化を強調。今後の日本について「少子高齢化・人口減少などを背景とした国内需要の減少が見込まれるなかで、実質成長率や生産性を引き上げていくことが重要な課題だ」と指摘した。

緩和圧力かわす狙い? 日銀内では「足元の景気や物価が上向いても、中期的な見通しは暗い」との見方が強まっている。これが通常の金融緩和とは違った新制度の導入につながった。

量的緩和政策や国債買い取りの増額といった政府・与党の追加緩和圧力をかわす狙いも見え隠れする。特に与党内ではマネーをどんどん増やせば、デフレ(物価の継続的な下落)から脱却できるという声も浮上している。日銀内では「それで本当に長期デフレを脱却できるのか。潜在成長率を引き上げるという根本的な議論が軽視されることが心配だ」(幹部)との焦りが募っていた。

「臨時貸出」を参考

日銀は1998年から99年にかけて「臨時貸出制度」を導入した。企業金融の支援策と位置づけ、企業向け貸し出しを増やした銀行に累計1兆915億円を貸し付けた。当時は貸し渋り対策の色合いが濃く、融資先の業種や資金使途などは限定していなかった。

新制度はこれを参考に検討するとみられる。ただ今回は成長促進を目的としており、対象を絞り込む見通しだ。白川総裁は(1)技術革新を促進する研究開発(2)科学技術の振興(3)環境・エネルギー関連の事業――などを例示した。

日銀は昨年12月から、期間3カ月の資金を年0.1%の低利で金融機関に供給する「新型オペ(公開市場操作)」を実施している。新型オペは1回の供給額を8000億円に限定しているが、金融機関の調達希望はその6~7倍に達している。新制度を導入すれば調達手段の選択肢が広がり、成長分野への融資を増やす動機になりそうだ。

ただ景気回復のペースは緩慢で、設備投資や研究・技術開発の資金需要が増えるかどうかは不透明だ。「金融機関は数少ない有望案件を競い合って融資しているのが現状」(大手行)との声も出ている。

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