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日中、国債持ち合い 円・人民元利用を拡大

【北京=高橋哲史】25日、野田佳彦首相と温家宝首相が合意した日本による中国国債の購入は、両国の経済関係が互いの国債を持ち合う新たな段階に入ったことを意味する。ドルへの不信を募らす中国は人民元の国際化を急いでおり、日本が持ちかけた「国債の持ち合い」を好機ととらえた。日本との経済関係の強化を印象づけ、アジアへの関与を強める米国へ対抗したいとの思惑もちらつく。

中国では外国当局が中国国債を買う場合、中国人民銀行(中央銀行)の認可を得る必要がある。会談では日本側が人民銀への認可の申請手続きを始めることで合意。具体的な購入額は明らかにしていないが、最大100億ドル(約7800億円)相当になる見込みだ。

中国は既に外貨準備で日本国債を保有している。2010年末の中国から日本への証券投資残高は10兆5000億円。ほとんどが中国当局による日本国債の購入とされる。欧州債務危機でユーロの先行きが懸念されるなか、中国が日本国債への投資を積極化しているとの観測は絶えない。

会談では両国間の貿易や投資で円や人民元の利用を増やす方針でも合意。日中貿易で使われる通貨は現在、ドルが6割、円が3割程度で、人民元は1%にも満たない。円や元での決済を増やせば、両国の企業は為替リスクを大幅に減らせる。

中国は09年7月から人民元建てでの貿易決済を段階的に認めている。08年秋のリーマン・ショックでドルの信認が大きく揺らぎ、ドル建てで輸出する中国企業が為替リスクにさらされる恐れが浮上したためだ。今年9月末で元建ての貿易決済額は累計2兆元を超え、中国の全貿易に占める割合は約10%に達している。

元建ての貿易決済を広げるには、貿易相手国の通貨当局が外貨準備に人民元を組み入れる必要がある。中国政府は各国当局に人民元の保有を呼びかけており、これまでナイジェリアやモンゴル、マレーシアなどが中国国債の購入に動いている。日本は初の先進国であり、中国は「人民元の国際化に弾みがつく」(国営新華社)と歓迎している。

ただ、日本が100億ドル相当の中国国債を購入しても外貨準備に占める割合は0.8%程度にとどまる。政府高官は「少額であり、外貨準備運用の多様化という位置づけでは全くない」と説明する。

中国に次ぐ世界2位の外貨準備を抱える日本が、ドルに偏った運用の多様化に乗り出したと市場が受け止めれば、ドル相場の急落につながりかねない。

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