民主提言案、政府の増税論けん制 「成長阻害」と批判
具体論言及は回避

19日判明した民主党の2011年度税制改正の「提言」は、増税メニューが目白押しの政府税制調査会の検討方針をけん制する内容だ。法人税率の引き下げを巡っては、租税特別措置縮小などを見返りとする「税収中立」型の政府税調の方針を批判。子ども手当の上積み財源として浮上した配偶者控除や成年扶養控除への所得制限については、「慎重に検討」するよう求めた。
党の提言は具体的な結論について言及を回避。政府税調に委ねている。
民主党政権は、政府税調が税制について最終的な決定権を持つ唯一の場と位置づけている。しかし、昨年の税制改正では、ガソリンにかかる揮発油税の暫定税率の存廃を巡って、政府・与党の調整が混乱。最後は当時の小沢一郎幹事長が唐突に示した党の「重点要望」が事実上の最終決定となり、政府税調での決定権の「一元化」は掛け声倒れに終わった。
2年目となる来年度税制改正では、党内に税制改正プロジェクトチーム(PT)を設置。党側の意見を反映しつつ政府税調の議論を進める。党の提言もその一環。
今月末をメドに法人税率下げや所得控除の見直しなど「大玉」案件について、民主党としての考え方を政府税調に提言する。
一方の政府税調は来年度税制改正で、増税を検討する姿勢が目立つ。子ども手当の上積み財源として浮上した配偶者控除については所得1000万円以下に限定する案、23~69歳までの扶養親族を対象にした成年扶養控除では400万円以下の世帯に限る案を軸に検討が進んでいる。
これに対し、党側の提案は増税批判を恐れて警戒感を示した。配偶者控除の縮小は境目の所得前後の納税者の不公平感が強まりかねないとして、「所得制限はなじまない」と位置付けている。
法人税率の引き下げ論議も租税特別措置の縮小などの合わせ技で「税収中立」を目指す税調の姿勢を批判。ナフサ免税の一部縮小や、研究開発税制の大幅縮小などについて「かえって経済成長を阻害するようでは本末転倒だ」との見方を示した。さらに税率下げで「所得段階での増収が得られることも考えられる」とも指摘。証券優遇税制の廃止に伴う税収増分や、役員給与への課税強化など、代替財源を広く求めるべきだとの考えもにじませた。
ただ民主党の提言案は配偶者控除や成年扶養控除の廃止、法人税率下げについて具体的な「着地点」まで明示することは避けている。政府税調も菅直人首相の支持率低下や、国会論議の混乱を受けて、決定権を発揮できるか不透明なのが実情だ。
自民党政権時代は党税制調査会が絶大な権限を持ち、政府税調との役割分担が明確だったが、民主党政権では党と政府の関係はなお手探り。12月中旬の来年度税制改正大綱のとりまとめに向けて、難航は必至だ。