首相「法人税改革で強い経済」 数年で20%台明言
成長戦略の骨格固まる

政府が月内に打ち出す新しい成長戦略の骨格が固まった。安倍晋三首相は13日、現在35.64%(東京都の場合)の法人実効税率を2015年度から数年間で20%台に下げることをめざすと明言し、「グローバル経済を勝ち抜く強い経済をつくる」と訴えた。農業、医療など「岩盤規制」と呼ばれる分野に切り込む姿勢も打ち出した。経済の好循環に向けた具体的な取り組みが課題となる。

首相は13日、首相官邸で開いた経済財政諮問会議で、法人税改革について「成長志向に重点を置く。雇用を確保し国民生活の向上につなげていきたい」と述べた。諮問会議で決めた経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)の素案には「数年で20%台まで引き下げることをめざす」と明記した。
法人税率を1%下げれば約5000億円の税収減となる。減税財源は法人税の課税ベース拡大などを想定し「恒久財源を確保する」とする一方、アベノミクス効果による税収の上振れ分をあてる余地も残した。減税の実際のスケジュールや財源をどう確保していくかは今後の議論に委ねた。
政府は経済の好循環をつくり出す環境整備にも重点をおく。コーポレートガバナンス(企業統治)を強化し、投資家らの声を反映して戦略的な投資などによる資金の有効活用を促す。公的年金の積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)には、国債に偏った資産運用の早期見直しを求めている。
岩盤規制と呼ばれてきた農業、医療、雇用分野の改革にも取り組み、国際競争力のある産業育成を重視する。
農業は全国約700農協を指導してきた全国農業協同組合中央会(JA全中)の権限を縮小する。地域農協が創意工夫を生かしやすい仕組みに改め、各農協の自立を通じて効率的な農業の実現につなげる。
医療は保険診療と保険外診療を併用する「混合診療」を拡大する。患者の希望によって保険の対象となる薬や医療機器を追加する「患者申し出療養制度」(仮称)を新設し、審査期間を現行の3~6カ月程度から原則6週間に短縮する。
雇用では労働時間規制の適用を外し、働いた時間ではなく成果に応じた給与をもらう働き方を広げる。対象者は年収基準を「少なくとも1000万円以上」として専門職に限定する。15年の通常国会に労働基準法の改正案を提出し、16年春の施行をめざす。
骨太方針の素案には、人口減や少子高齢化への対策など中長期的な課題も盛り込んだ。20年までに税制や社会保障などあらゆる施策を動員して「50年後に1億人程度」を維持する人口の目標を初めて掲げた。少子化対策では、第3子以降の出産や育児に重点支援する。
政府は与党との調整を経て27日にも骨太方針や新たな成長戦略を最終決定する。一連の政策は15年度予算案に反映させ、年末にかけた税制改正で具体案を詰めるものも多い。意欲的な項目が並ぶ半面、政府が掲げる持続的な経済成長にどこまで寄与できるかは今後の制度設計が重要になる。