2017年11月23日(木)

歴史的な医療改革法成立後の米の出方

2010/3/24付
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 米国史に残る出来事であろう。長年の懸案だった医療の抜本改革がオバマ大統領の指導力によって実現する。米議会が可決した法案は10年間に約85兆円を投じ、無保険者を3200万人減らすという。

 一方で「大きな政府」への傾斜を懸念する議員は共和党中心に多く、法案への賛否の差はわずかだった。高所得層への課税を強化することもあり、右派と左派、高所得層と低所得層の間に亀裂を生じた。そのことは米政府の今後の経済政策や対日政策にも影響を及ぼすだろう。

 もし法案が否決されていれば大統領への信任は低下し、政権は支持回復のためなりふり構わぬ政策をとっていたという見方もある。法案可決でその心配は薄らいだとはいえ、米社会に生じた分裂をどう修復するかという宿題は重い。大統領は多くの議員と「法案に賛成してもらう代わりに要望を聞く」という約束を取り交わしたとも報じられている。

 高所得層と低所得層との利害対立を解消するには、経済全体を拡大するのに越したことはない。医療改革で膨らむ公的債務の負担を実質的に抑えるためにも成長促進が要る。オバマ政権はリーマン・ショックで痛手を負った家計消費に代え、輸出を向こう5年間で2倍に増やして成長の原動力にする方針である。

 すでに輸出への様々な公的支援を打ち出した。さらに、秩序あるドル安を追求したり、中国政府に人民元改革を一段と強く求めたりすることが予想される。

 オバマ政権は米製品の輸出先に対し市場開放をあまり強く主張していない。だが輸出倍増の目標達成には2国間交渉などで市場開放を求めることも避けられまい。

 またロシアがベトナムに潜水艦を供与して原子力発電の商談を有利に進めたが、この種の政府支援が当たり前になれば米企業からも踏み込んだ支援を求める声が高まろう。

 そうしたなかで同盟国の日本に対する米国の要求も厳しくなる可能性がある。自動車など日本製品への風当たりは強い。農産物などの市場開放を望む向きも多い。普天間基地移設で手間取る日本の事情には配慮しつつも、以前に比べこらえ性がなくなっているのも事実であろう。

 日米ともお互いに苦しい国内事情を抱えている。内政がうまくいかないときは国民の目を外交にそらすのが古今東西の政治の常道だが、それが過ぎれば日米同盟に亀裂が走りかねない。それは避けるべきだ。医療改革論議が米社会に残したキズは、日本にとっても人ごとではない。

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