2019年6月20日(木)

超人気ソフトが人質に ウイルス大規模感染の深層
ラック 取締役最高技術責任者(CTO) 西本 逸郎

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2014/2/27 7:00
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1月下旬、日本中のIT(情報技術)関係者がネット上のセキュリティーを脅かす"事件"に震え上がった。「GOM Player」(ゴム・プレーヤー)と呼ばれる無料の動画再生ソフトを介してウイルスがばらまかれたのだ。ゴム・プレーヤーの利用者は約650万。すべての利用者が感染し、悪意を持った攻撃者によって遠隔からパソコンが操作可能な状態に陥った可能性があった。保存するデータを抜き出したりほかのパソコンを攻撃したりされる恐れがあることから、企業や官公庁の担当者は大至急対応せねばならず大騒ぎになった。

■どんな動画でも再生できて、しかも無料だった

世界200カ国で5億ダウンロードされる超人気の動画再生ソフト「ゴム・プレーヤー」が狙われた。約650万人が使っていたという

世界200カ国で5億ダウンロードされる超人気の動画再生ソフト「ゴム・プレーヤー」が狙われた。約650万人が使っていたという

ゴム・プレーヤーを開発したのは韓国のソフト会社グレテック。世界200カ国で5億ダウンロードされた実績がある人気のソフトである。日本法人が手厚いサポートをしていたことから、2005年ごろから日本で急速に普及。あまり聞き慣れないソフトにもかかわらずこれほど広く使われていたのは、デジタルカメラで撮影したものを含めて様々な形式の動画を手軽に再生できるためだ。

事件を受けて実際にゴム・プレーヤーを使ってみた。企業や官公庁がこぞって採用した理由もうなずける使い勝手だと感じた。最近のデジタルカメラは写真だけでなく動画も高画質に撮影でき、仕事の現場でビデオカメラの代わりに使う人が増えている。ただメーカーや製品ごとに撮影したファイルの形式はバラバラ。ウィンドウズに標準で付いてくるソフトでは対応しきれず、メーカーが提供する専用ソフトを組み込むなど手間がかかるのが一般的だ。かといってデジカメ各社のソフトをすべて入れておくのは現実的ではない。

ゴム・プレーヤーがあれば、こうした形式の違いを意識せずに済む。大半のファイル形式に対応しておりいちいちソフトを組み込む必要がなく、送られてきた動画もすぐに見られる。テレビ向けにDVDブルーレイ・ディスク(BD)に書き込んである動画も再生可能だ。万能で無料の動画再生ソフトが世界中で使われていて、ほかに競合ソフトがない。そうくれば、あえて使わない理由は見当たらない。しかも、ソフトの自動更新で最新の機器にも迅速に対応してくれる。

ではなぜゴム・プレーヤーは、ウイルス感染の土台に使われてしまったのだろうか。グレテックを弁護するわけではないが、ゴム・プレーヤーというソフトそのものに問題があったわけではない。実はソフトのバグ(不具合)を修正したり新機能を提供したりする自動更新の機能を持っており、そのためにネット上に用意したグレテックの自動更新用サーバーが攻撃者に狙われ不正に乗っ取られてしまった。これが今回の事件の真相だ。

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