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対話アプリ争奪バブル ネット列強、勝者の行方

米フェイスブックが190億ドル(約1兆9千億円)を投じ、スマートフォン(スマホ)向けの無料対話アプリ(応用ソフト)最大手ワッツアップを買収する。利用者が4億5千万人超とはいえ、従業員は約50人。小さなベンチャー企業に2兆円近い値段がついたことは市場関係者を驚かせた。株式上場が噂されるLINEの"株価"にも影響する可能性がある。

わずか11日間で1.9兆円買収まとめる

「話を持ちかけたのは11日前。先週日曜日の晩だ」。米国時間19日(日本時間20日)、インターネット上で開いた説明会でマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は買収の舞台裏をこう打ち明けた。

フェイスブックは現金約40億ドルと120億ドル相当の自社株を割り当ててワッツアップを買収。その後4年間にわたって創業者や従業員に30億ドル相当のフェイスブック株を付与する。2014年後半に買収完了を目指す。

12年に約7億ドルで買収した写真共有アプリ「インスタグラム」を上回り、フェイスブックの過去最大のM&A(合併・買収)案件だ。シリコンバレーが本拠のワッツアップの創業者ヤン・クームCEOはフェイスブックの取締役に就任。ワッツアップは独立したサービスとして事業を継続する。

フェイスブックはSNS(交流サイト)最大手だが、スマホの急速な普及を受けて「対話アプリ」の存在感が急拡大。SNSの主役はパソコンからスマホにシフトした。

楽天が14日に9億ドル(約900億円)で買収すると発表した無料対話アプリ「バイバー」も利用者は3億人。「電子商取引(EC)でも、コンテンツ(情報の内容)配信でも、対話が重要な要素だ」(楽天の三木谷浩史社長)。

三木谷社長は14日、「このタイミングで(バイバーを)買収しないと無理だった」と説明していた。「バイバーが急速に伸びている」からという説明だったが、20日にフェイスブックのワッツアップ買収を聞いた関係者からは、巨額買収の発表後だったら、「9億ドルではまとまらなかったかもしれない」という。

対話アプリの存在感が増し、米ネット大手も注目するのは3億5千万人の利用者を抱え、いずれ株式上場するとみられているLINEだ。8千億円とも言われるLINEの"価格"。今回のフェイスブックの巨額買収で上昇し、「LINE相場」がうなぎ登りとなる可能性もある。

フェイスブックの証券アナリスト向けの説明会でも「メッセージングアプリ(対話アプリ)ではLINEや微信(ウィーチャット)、カカオトークなどとの競合が激しいが……」との質問が出た。

ザッカーバーグCEOが「確かに韓国や日本に強いサービスもあるが、ワッツアップはグローバル。欧州やインド、中南米にも展開する」と強調する一幕も。そして同氏は「フェイスブックよりユーザーが使う頻度が高い唯一のアプリだ」と買収の意義を強調したが、投資回収の道筋はみえていない。

もう一度痛い目にあう?広がる警戒感

対するLINEは無料の対話を入り口に集客力を高めながら、ゲームやスタンプ販売などで稼ぐ収益モデル。3億人の利用者ベースを踏まえ、広告の展開や有償サービスの拡充を一段と進めるとともに、ECや音楽配信など収益源の多様化を狙っている。

「対話アプリ」の事業としての「値段」が上がれば、LINEの株式を100%保有する韓国NHNの選択肢は広がる。単純な新規株式公開(IPO)だけでなく、その先に他社への株式売却やLINEの株式を使った提携も考えられる。

一方で過熱するバブルを警戒する向きもある。「無料アプリは水物だ」。フェイスブックが12年5月に上場を果たす前、足元の業績よりも、将来への期待から時価総額が急激に膨らんだ時期があった。結果的にその過剰な期待は上場日を境にはがれ落ち、フェイスブックの株価は1年ほど上場日につけた最高値を上回ることはなかった。

シリコンバレー、とりわけフェイスブックは過剰な「ソーシャル」への期待で上場後、痛い目にあったはずだ。「無料対話アプリ」で再び大きな賭けに出たフェイスブック、その余波を受けるLINE、ECに活用しようと動いた楽天。無料対話アプリで利用者を集めても、その顧客基盤を収益化できなければ、価格はどこかで反落する。進むも引くも「スピード勝負」だ。

(岡田信行、シリコンバレー=奥平和行)

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