2019年7月16日(火)

中国製日本語入力ソフトの危うさ どうする対策
ラック 取締役最高技術責任者(CTO) 西本 逸郎

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2014/2/13 7:00
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昨年末、中国の検索大手百度(バイドゥ)が、利用者の打ち込んだ文字情報を無断で同社のサーバーに送っていたことが明らかになった。無償提供している日本語入力ソフトで、パソコン向けとスマートフォン(スマホ)向けの両方で行っていた。

バイドゥはすぐさま無断送信しないようにする改良ソフトの配布を開始。しかしながら文部科学省や外務省で利用していたことが発覚し、内閣官房情報セキュリティセンターが全省庁に注意喚起するなど霞が関は対応に追われた。この問題によって浮き彫りになったのは、日本のIT(情報技術)環境が根本的に抱える巨大な脆弱性だった。

■設定オフなのに勝手に送信

中国の検索大手バイドゥが無償提供する日本語入力ソフト。インストールされたパソコンやスマートフォンから、利用者が打ち込んだ文字情報が勝手に送信された

中国の検索大手バイドゥが無償提供する日本語入力ソフト。インストールされたパソコンやスマートフォンから、利用者が打ち込んだ文字情報が勝手に送信された

日本語入力ソフトは、日本人がパソコンやスマホを使ううえで欠かせないものである。以前はパソコン内部に変換のための辞書を持っていたが、インターネット時代の到来によってサーバー上に辞書を置いて常に最新版に更新するアイデアが出てきた。「クラウド変換」と呼ばれる手法で、利用者が入力した文字列をその都度サーバー側へ送信する。ほかの人の入力履歴も生かして変換効率を高めるなど、クラウドならではの工夫を施してある。

クラウド変換型の日本語入力ソフトは米グーグルやジャストシステムなども提供しており、バイドゥだけが特別なサービスを手掛けていたわけではない。

なぜバイドゥだけが騒ぎになったのか。報道によると、入力内容をサーバーへ送信しない設定を用意していたもののやり方が利用者にとってわかりづらく、かつ設定をオフにしても同意を得ずに勝手に送っていたという。グーグルやジャストシステムの場合、初期設定はオフになっていて「クラウド変換を利用する」という設定を利用者が自分の意思でオンにして初めてサーバーへ送る仕組み。バイドゥはソフトに欠陥があったためと説明しているが、信頼を裏切られたと感じた利用者は少なくない。

以前はソフトがパソコンの中に閉じた環境で動作するのが当たり前だったが、クラウドの普及によって常にネットとつながって様々な便利な機能を提供できるようになった。クラウド変換型の日本語入力ソフトもその産物。流行語や顔文字などが辞書に登録不要ですぐに変換結果に出るし、だからこそ人気を呼んでいる。「自動アップデート」と呼ばれる欠陥の改修や機能改善を提供できるようになったのもクラウドの恩恵の1つである。

だからこそクラウドサービスを提供する事業者には、利用者から預かる情報に対しては誠実で安心感を与える運用が求められる。この点でバイドゥはクラウド事業者としては適切でなかったといわざるを得ない。騒ぎでクラウドのリスクが顕在化した以上、これからは単に便利な機能を提供するだけでなく、利用者の信頼を勝ち得ることもアピールしなければならなくなりそうだ。

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