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異色の「ユカイ」ロボ、親しみやすさで家庭を攻略

編集委員 村山恵一

グーグルがボストン・ダイナミクスなどのロボット企業を相次ぎ傘下に収め、アマゾン・ドット・コムはヘリコプター型ドローンを使った空からの商品宅配を構想――。米国から次々と聞こえるIT(情報技術)企業の華々しい取り組みでスポットライトを浴びる「ロボット」産業に、異色のアプローチで挑戦する日本のベンチャーがある。「親しみやすさ」にこだわり市場開拓を狙うのは2007年設立のユカイ工学だ。

メカメカしてないロボットを

ユカイ工学の商品、「ココナッチ」(左)と「konashi」

「メカメカしたロボットには興味がないんです」。東京都新宿区にあるユカイ工学のオフィスを訪ねると、創業者の青木俊介代表はそう語り、第1弾の商品として11年に売り出した「ココナッチ」(5500円)を見せてくれた。

卵を少し縦に伸ばしたような丸みを帯びた形。パソコンにつないで使う「ソーシャルロボット」だという。短文投稿サイト、ツイッターへの反応があったり、メールを受信したりすると、音や動き、色の変化で知らせる。

ココナッチの表面は柔らかく、頭の部分をもむようにつまむとメール返信などができる。本体を揺らすアクチュエーターや触覚センサーが組み込まれている。

第2弾の商品は13年発売の「konashi(こなし)」(9980円)。ハンダごてを使わずに電子工作ができるキットだ。ソフト開発者などがスマートフォン(スマホ)と連動するハードの試作などを手軽に実行するための製品。ものづくりのハードルを下げ、促進するために編み出したという。

青木氏の経歴を紹介しよう。東京大学工学部で人工知能の研究に取り組んでいたが、3年生のとき転機が訪れる。01年、同級生と「会社をやろう」と盛り上がり、インターネット関連の会社チームラボを設立。最高技術責任者(CTO)に就任した。

「インターネットで世界が変わる」とソフト開発を中心とする仕事に没頭。検索エンジンやレコメンデーション(おすすめ)システムづくりに励んだ。

グーグルが買収したボストン・ダイナミクスの軍用4足歩行ロボット「LS3」は全世界の注目を集めている

「いまやらないと乗り遅れる」

これはこれで面白かったが、やがて物足りなさも感じるようになった。「どんなに頑張っても(ソフトだけでは)パソコン画面の外に影響を与えられません。もどかしかった」

そして05年。愛知万博でロボットが注目を集めたこともあり、この領域への思いが募る。「いまやらないと乗り遅れるぞ」。会社をやめ07年にロボット開発に乗り出した。ユカイ工学の始まりだ。

実は中学生のとき映画「ターミネーター2」を見て「将来はロボットをつくりたい」と思っていた。だが、手がけたのは映画の世界とは大きくテーストの異なるロボットだった。

 その名は「カッパノイド」。見たところ妖怪のぬいぐるみだが、内部はハイテク満載だ。

くちばしに組み込まれた赤外線バーコードリーダーでお菓子のバーコードを読むとカッパが喜びを表現する。頭の皿部分には無線通信NFCの機能があり、スマホをかざすとメッセージが受けとれるしかけになっている。試作品の扱いだが、頭の皿をこすると音が出るなど楽器風の味付けをした2代目カッパノイドもある。

ユカイ工学の青木俊介代表。抱えているのは試作品「カッパノイド」(東京都新宿区)

どことなく青木さん本人に似ていますねとカッパノイドを指さすと「よく言われるんです」との答えが返ってきた。

JAXAのロボットにも協力

ココナッチ、konashiと自社の商品はまだ少ないが、外部企業からの受託開発や、他社との共同開発ではさまざまな実績がある。

ガジェット好きの人ならよく知っている製品にユカイの技術は取り入れられている。例えば、メガネ型のウエアラブル端末「テレパシー・ワン」の試作。頭につけ脳波で動かす「ネコミミ」のプロトタイプも手がけた。来店者が手にとると商品についての情報が目の前の画面に表れ購買意欲を刺激する「チームラボハンガー」の開発にも携わった。

大企業・組織もクライアントだ。大和ハウス工業とはスマートハウスの開発で連携。家の電力消費量をココナッチで知らせたり、ココナッチを握ってエアコンなどを操作したりするシステムを考案した。宇宙航空研究開発機構(JAXA)のロボット計画にも技術協力したそうだ。

ユカイは家庭用ロボットを主戦場ととらえている。「家庭に普及させないとマーケットは広がらない」と青木氏。「キャラクター性があったり、だっこして寝られたり。これならほしいと思われるものを商品にしたいですね」

東大発ベンチャーの「SCHAFT(シャフト)」は2足歩行ロボットを開発した=共同

ビッグデータでロボットが再注目

日常の生活シーンに違和感なく溶け込むロボットをどう実現するか。決して簡単なテーマではないが、高性能化や低価格化が進むセンサー、スマホ、ネットをうまく組み合わせれば、これまでにないロボットを創出できると青木氏は前向きだ。

「これからの社会は情報が増えるばかり。利用者の意図をくんで取捨選択してくれる存在が重要です。インターフェースとしてロボットが欠かせない。家の中のネットワークやサービスと連携してはじめて役立つものになります」

パワフルで硬派なグーグルやアマゾンのロボットも面白いが、軽やかで軟派な印象のユカイロボにも心をとらえる要素がある。ネットとリアルの橋渡し、ソーシャル、コミュニケーション革命、ビッグデータ対応……。アルバイト、インターンを含めおよそ10人と小さな部隊だが、ユカイが描くビジョンには世界のトレンドがきちんと埋め込まれているように感じた。

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