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時空のゆがみをつかめ 重力波観測、幕開け迫る

日経サイエンス

小柴昌俊・東京大学特別栄誉教授が超新星からのニュートリノをとらえた「カミオカンデ」や、その後継施設「スーパーカミオカンデ」があることで有名な奥飛騨の神岡鉱山(岐阜県飛騨市神岡町)が再び注目を集めている。ノーベル賞級の成果を生むと期待される「KAGRA(かぐら)」のトンネル工事が大詰めを迎えているからだ。KAGRAが狙うのは世界初の「重力波」検出という偉業だ。

昨年12月中旬、KAGRAの工事現場では断層を貫通してトンネルを掘るための調査が進んでいた。日経サイエンス提供

地下の超精密な物差し

アインシュタインの一般相対性理論によると、年老いた星が大爆発する時や、中性子星という超高密度の星どうしが合体する際などは、大質量の物質の激しい動きで時空のゆがみが波となって伝わるとされる。これが重力波だ。

重力波が存在することは間接的にすでに確認されている。だが、直接的に観測されたことは世界中でまだない。それを成し遂げようというのが重力波望遠鏡KAGRAで、東京大学宇宙線研究所を中心にオールジャパンで建設が進んでいる。

KAGRAはレーザー光を用いた超精密な物差しといえる。

一辺が3キロメートルのアームを直角につなげたL字形の構造になっており、両アーム内でレーザー光を常時、往復させる。重力波が到来すると空間がごくわずか伸び縮みするので、それに応じてアームの長さも伸び縮みする。その変動をレーザー光の振る舞いの変化としてとらえる。

光学望遠鏡の場合、観測の邪魔になるのは雲や都市などの明かりだ。そのために望遠鏡を人里離れた晴天率が高い山の頂上などに建設する。これに対し重力波望遠鏡で邪魔になるのは雲ではなく風だ。

私たちは感じないが、風が吹くと地面はわずかに揺れる。その揺れだけで、重力波による空間のわずかな変化は埋もれてしまう。車や工場などの人工的な振動も大敵だ。

 つまり風の影響がなく人工的な振動がない地下こそが、重力波望遠鏡を設置する適地となる。重力波はどんな物質も通り抜けるので、地下にあっても問題ない。そこでKAGRAは地下に建設されることになった。

神岡鉱山地下にある素粒子研究施設「スーパーカミオカンデ」

幕開け迫る重力波天文学

現在、施設を設置するためのL字形トンネルの掘削が終盤を迎えている。アクセス坑道を含めると総延長7.5キロメートルに及ぶ。

東日本大震災の影響で着工がずれ込んだこともあり、作業は24時間体制で進めている。1回の発破で通常の約2倍の奥行きの岩盤を破砕するなど先端的な工法を駆使して掘っている。今春にはトンネルが完成、来年末には初期観測を実施し、重力波検出感度を大幅に向上させた本格観測を2017年後半に始める。

米国と欧州でもKAGRAに匹敵する重力波望遠鏡の建設が進んでいる。重力波の検出感度はほぼ互角で、いずれも地球から約7億光年の範囲にある数十万個の銀河で起こる中性子星合体の重力波をとらえられるという。

中性子星の合体頻度が銀河1つ当たり1万年に1度とすると、単純計算で1年当たり数十回は、こうした重力波を観測できる計算となる。重力波で宇宙を探る重力波天文学の幕開けはもうすぐだ。

(詳細は25日発売の日経サイエンス3月号に掲載)

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