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4K・脱グーグル…夢より「商品」、CESが様変わり

ジャーナリスト 石川 温

 とにかく「確実に売れるもの」で勝負する――。米ラスベガスで開催している世界最大級の国際家電見本市「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)」に出展した各社の思惑をまとめるとこうなるだろう。今年のキーワードである「4K」「脱グーグル」「スマート家電」「ウエアラブル」のいずれについても、見た目の派手さよりも実際に「売る」ことを重視する戦略が目に付いた。

過去数年のCESは、3Dテレビのような市場性が未成熟の製品についても各社が競い合うように展示し、将来の「夢」を披露する場となることが多かった。だが今年は確実に市場に受け入れられる「商品」をアピールする場所に様変わりしつつある。その背景には、技術の進歩でようやく実現できるようになった製品が増えたことに加え、各社とも消費者に受け入れられない話題先行の製品を発表している余裕がなくなってきた点が挙げられるだろう。

手ごろな「4K」へ

映像関連では各社とも相変わらず「4K」の訴求に余念がない。ただし、昨年までのような「画質のよさ」だけでなく、普及を狙って手ごろな価格を強調しているのが今年の特徴だ。

シャープは、すでに日本で発売している「アクオス・クアトロンプロ」の米国向け商品「アクオス・クアトロンプラス」をアピール。同製品では4Kよりも解像度で劣るフルHDパネルを採用しながら「4K相当」の画質を実現。従来の4Kテレビよりもコストを抑えることで価格競争力を持たせている。

ソニーは4Kでの撮影ができるビデオカメラ「FDR-AX100」を発表。片手で4K撮影ができるのが特徴だ。2000ドルという従来に比べて安価な価格を実現し「4K撮影ができるのに価格は2K(2000ドル)だ」(米ソニーエレクトロニクスのマイク・ファスロ氏)と語り会場の笑いを誘った。

4Kというとハイスペックで高価格帯な商品という印象が強いが、日本メーカーはできるだけ価格を抑えて何とか普及させようと苦労しているのがうかがえる。

一方、韓国メーカーはいずれも「曲面」で競っている。サムスン電子は、4Kを超える5Kの105型湾曲テレビを世界ではじめて発表。さらに、平面状態から湾曲状態に自在に変形する「折り曲げ可変」のテレビを発表し、会場からどよめきが起こっていた。

韓国LG電子も同様の105型で5Kの湾曲型液晶テレビを発表している。

脱グーグルでスマートTVに再挑戦

数年前のCESで、テレビにインターネット機能を載せて様々なコンテンツを視聴できる「スマートテレビ」が話題を集めたが、結局あまり普及しなかった。だが、今年は各社とも「仕切り直し」といえる新型スマートテレビを相次いで発表した。

LG電子は米ヒューレット・パッカード(HP)から買収した「ウェブOS」を採用したスマートテレビを発表。「スマートテレビをシンプルに再定義する」(社長兼CTOのスコット・アン氏)という。

一方で、パナソニックもブラウザで有名なファイヤーフォックスOSを使ってスマートテレビを開発することを発表した。

かつてのスマートテレビは、米グーグルと手を組んで同社の検索機能などを生かす形の製品が多かった。だが、今年は各家電メーカーとも自由に開発できる環境を重視した「グーグル離れ」が目立つ。スマートフォン(スマホ)業界でアップルのiOSでもグーグルのAndroidでもない「第3のOS」が注目を集めているが、スマートテレビでも「グーグルから影響を受けたくない」メーカーがこぞってウェブOSやファイヤーフォックスOSを選び始めているようだ。

面白いのは、その一方で自動車メーカーは逆にグーグルと接近する動きを見せている点だ。グーグルと日米欧韓の自動車メーカー4社、米半導体メーカーのエヌビディアが、Androidの技術を自動車で活用する団体「オープン・オートモーティブ・アライアンス(OAA)」を結成した。グーグルといったん付き合った後に距離を置き始めた家電メーカーに対し、自動車メーカーがグーグルに近寄ってきた。はたして、グーグルと付き合いながら仲よくしつつ、各自動車メーカーが理想とする自動車を作っていけるのか興味深いところだ。

会話できる家電が新トレンド?

やはり数年前のCESで話題となっていた「スマート家電」にも新しい動きが見られる。以前は、白物家電に通信機能を付けてスマホなどで操作するというものだったが、話題先行で決して普及したとはいえなかった。そんななかでLG電子が発表したのが、世界で3億ユーザーが利用している無料通話・メッセージサービス「LINE」を使って家電と会話する新しいタイプのスマート家電だ。

この「LGホームチャット」は、LINEを使って家電に「冷蔵庫にある食材を教えて」「その食材で作れるレシピを教えて」と問いかけると答えてくれる。

 これまでは専用アプリによる無機質で味気ない操作だったものが、LINEを使うことで会話形式に家電をコントロールできるようになる。これにより、ユーザーとしても継続して使いやすいように配慮した。会話形式で遠隔操作できる機能は、すでに日本国内でシャープが掃除ロボット「ココロボ」で実現しており、今後のトレンドになっていくかもしれない。

リストバンド型活動量計がブレイク

もちろん身につけるデジタル機器「ウエアラブル端末」も今年のCESの話題だ。だが、昨年グーグルが開発者向けに販売して話題となった「グーグル・グラス」のようなメガネ型端末について各メーカーとも意外と慎重だ。ソニーはブース内で参考出展はしているものの、記者会見で特に言及はなかった。

その一方で盛り上がりを見せそうなのが腕時計型だ。ただし、こちらも昨年にサムスン電子やソニーが発売した大きな画面でメールなど様々な情報を表示するスマホのインテリジェント端末のようなものではなく、腕に付けることで歩数や睡眠状態を記録するタイプのものが中心となってきそうだ。

LG電子は2014年前半に有機ELディスプレーを内蔵した活動量計「ライフバンド・タッチ」を発売すると発表。

一方、ソニーは小さな「コア」と呼ばれる加速度センサーを腕に付けることで歩数などを記録する「スマートバンド」を発表した。スマートフォンを組み合わせることで、単に歩数や睡眠時間を計測するだけでなく、ユーザーが見たり聞いたりした音楽や動画などの再生時間なども記録する「ライフログ」として機能する。生活における過去、現在、未来をスマホで確認できるのが特徴だ。

運動量を記録できるバンドは、「ナイキプラス・フューエルバンド」「UP」「フィットビット・フレックス」など、すでに様々な製品が登場しており、ライバルが多い。ソニーでは、単に運動量だけでなく、自社が得意とする音楽や動画などのサービスと組み合わせることで特徴を出そうとしている。

ソニーでは、テニスのラケットにセンサーを内蔵し、ボールを打った回数なども計測して管理できる製品も参考出展するなど、スマホを中心として、人や様々な機器をセンサーで状況を把握できる世界観を目指しているようだ。

石川温(いしかわ・つつむ)
 月刊誌「日経TRENDY」編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。携帯電話を中心に国内外のモバイル業界を取材し、一般誌や専門誌、女性誌などで幅広く執筆。近著は、本連載を基にした「iPhone5で始まる! スマホ最終戦争―『モバイルの達人』が見た最前線」。ニコニコチャンネルにてメルマガ(http://ch.nicovideo.jp/channel/226)を配信中。ツイッターアカウントはhttp://twitter.com/iskw226

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