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ITベンチャー注目の3社 世界へ羽ばたけるか

IT(情報技術)革命の追い風を受けて、日本のベンチャー企業の間に活気がでてきた。原動力は2つある。スマートフォン(スマホ)やタブレット(多機能携帯端末)などモバイル端末と、クラウドコンピューティングの普及だ。設備投資を最小限に抑えられるクラウドを使えば、世界中のスマホ利用者を対象にしたネットサービスを短期間に立ち上げられるからだ。2つの武器を巧みに使いこなし、2014年に飛躍が期待される国内ベンチャー企業を紹介しよう。

400万人が使う「ツイキャス」、ついに世界へ

スマホで使える映像生中継「ツイキャス」。いわばネット上のテレビ局を個人が開設できるサービスで、その手軽さから登録利用者数は既に400万人を超えた。運営するのはモイ(東京・千代田、赤松洋介社長)。昨年12月に拠点を米国に設け、世界展開を加速させようと意気込んでいる。「とにかく簡単に使える生中継サービスを目指した」。赤松社長の鼻息は荒い。

ツイキャスを利用するにあたって必要なのはスマホだけ。カメラで撮影した自分の姿や周囲の様子を不特定多数の利用者に向けて簡単な操作で生中継を始められる。支持するのは若年層で、利用者の半数が24歳以下だ。ブームの火付け役は女子高校生。友達同士の「ゆるい」やり取りを仲間に公開して楽しめる点が、彼女たちの交流ニーズにぴったりはまった。無料サービスだったことも心に響いた。

その人気急上昇ぶりには、今や企業も熱い視線を送る。地域ラジオが放送風景を中継する際に活用したり、テレビ局がアイドルグループを宣伝する手段に使ったりさまざまだ。海外では、反政府デモの呼びかけに使われたケースもある。「なぜここまで利用が広がっているのか、私自身も理由はよく分からない。デモなどは完全に想定外だ」(赤松社長)

創業者である赤松社長は、グループウエア大手サイボウズで製品責任者を務めていた。持ち前の技術力を生かし映像を効率的に圧縮する技術を独自に開発。「携帯電話回線でも問題なく使えるよう工夫した」という。

米国の子会社設立を機に、今後はさらなる利用者増を見据えて海外展開を加速させる考えだ。

利用者が毎月4割増えるビジネス情報界の「クックパッド」

「その会議、意味ありますか? 意思決定ができる会議のためにグーグルが心がけている5つのこと」「成功したいと強く思う人が知っておくべき、成功者の挫折エピソード5選」――。

ビジネスパーソンが思わず読みたくなる記事を延べ5000本も紹介している「U-NOTE」が人気を集めている。ビジネスに役立つノウハウや仕事術のほか、各地で開催されたビジネス関連イベントなどの情報を整理した、いわゆる「まとめサイト」だ。サービスと同名のU-NOTE(東京・杉並)を率いるのが小出悠人社長である。

U-NOTEが発信する情報の特徴は「ニュース性が低い、ストック型の情報」(小出社長)。利用者の35%がキーワード検索からの流入で、20~30代の若手のビジネスパーソンを中心に月70万人規模の利用者を獲得。直近の半年間で毎月40%ずつ増えており、認知度は徐々に高まりつつある。記事を毎日20本のペースで増やすなど、情報の拡充にも余念がない。

記事の作成は同社のスタッフに加え、クラウドソーシングなども活用。U-NOTEで取り上げた記事をミニブログ「ツイッター」でつぶやいた人を小出社長自らスカウトすることも。「業界やキャリアを問わず、現場にいる人だからこそ書けることがある」(小出社長)

皆プロの書き手ではないが「3分でわかる7つの習慣」といった見出しや記事編集のひな型を用意。自前の技術で誤字脱字や盗用でないかをチェックするなど、記事の質が書き手の能力によって大きく変動しない仕組みをつくっている。収益はバナーなど広告だ。

U-NOTEの設立は12年6月。1991年生まれで22歳の小出社長は起業する以前、情報収集のため積極的にセミナーなどに足を運び、経営者の生の声などに耳を傾けていた。起業のきっかけはある日ふと「皆がパソコンを開いてメモを取っているのに、その情報が(会場に来た)個人にとどまっているのはもったいない」と感じたこと。その問題意識が、ビジネス情報の共有サービスというアイデアを生んだ。

現在は正社員4人を含む15人程度で運営しており、半分以上を学生が占める。このほどベンチャーキャピタルなどから資金を調達。記事の作成や仕組みづくりにかかる人件費などに振り向け、14年は一段の飛躍を目指す。当面は、検索流入を増やし売上高を拡大させるため、2年間で記事数を10万本まで増やすことを目標に掲げる。

「ビジネス情報界のクックパッドを目指す」と意気軒高な小出社長。会社設立に伴い休学していた上智大学を13年1月に退学し、退路を断って事業に専念する。「正社員を雇うようになった以上、中途半端ではできない」と腹を固めた。

先輩経営者に刺激されて生まれた実名制グルメサイト

スマートフォンやパソコンの飲食店情報サイトを運営するRetty(レッティー、東京・渋谷)も注目株のITベンチャーだ。設立からの助走期間が終わったとして、「14年は1つ上のステージを目指す」。武田和也社長はこう力を込める。

Rettyは交流サイト(SNS)の要素を採り入れたグルメサイト。消費者が実名で登録したうえで、自分の気に入ったお薦めの店を投稿する仕組みが従来の競合サービスにはない特徴である。飲食店を探しに訪れる閲覧者は、自分の友人や好みが合いそうな人のコメントを参考に店を選ぶことができる。

「ぐるなび」や「食べログ」などグルメ情報サイトは、一般に匿名制を採用することが多い。Rettyは実名投稿にすることで、店の評判を落とすコメントが投稿されにくくし、良質な店が絞られて掲載されやすくした。

この仕組みが斬新だとして13年に口コミで人気に火がつき、利用者数や店舗数が急増。足元では投稿者・閲覧者をあわせて月間150万人が利用し、紹介店舗数は約17万店に及ぶ。

「(ぐるなびや食べログに続く)第3勢力と認められるには14年が勝負」。武田社長は、検索サイトからの誘導などサービス強化を急ぐ。14年末までに1千万人の獲得を目指す。

もうひとつのテーマが収益化だ。利用者獲得を優先しサイトの改善に集中してきた方針を改め、今春にも飲食店向けに集客支援事業を始める。飲食店と月数千~数万円程度で契約し、自店について投稿した消費者に対し飲食店が販促情報などを配信できる仕組みを提供する。飲食店にとっては自店のファンに絞ってアピールできるため、不特定多数の人に向けた広告よりも効率的に来店誘導できるとみている。

13年秋にはベンチャーキャピタル5社から合計3億3千万円を調達し、経営基盤も強固にした。武田社長は「投稿者が実名だからこそできる手法。飲食市場に対し、新しい付加価値を提供できる」と語り、第3勢力の座の獲得に自信を見せる。

武田社長の起業に大きな影響を与えたのが、サイバーエージェントの藤田晋社長ら先輩経営者の存在だ。藤田社長と同じく青山学院大出身の武田社長は、在学中から起業に関心を寄せ、藤田社長が大学を訪れて行った講演にも足を運んだ。先輩の成功を目の当たりにしたことで、起業への夢がさらに膨らんだ。

先輩起業家の存在が刺激となって次の世代が経営者が生まれる好循環。日本のベンチャーにこんな気風が着実に根付きつつある。14年は先輩から学んだ知恵を生かし、新しい若手経営者が日本から世界へと羽ばたき始める1年になりそうだ。

(産業部 玉置亮太、岡森章男、児玉小百合)

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