日本流で「イノベーション」を担おう
(テクノロジー編集部BLOG)

2014/1/7 7:00
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昨年末から紙面企画の「リアルの逆襲」にかかわっており、「イノベーション」や、それによる「破壊と創造」に思案をめぐらすことが多い年越しでした。

「世界の先端をゆく技術革新」となると、やはりとがった事例は海の向こう、とりわけ米国ばかり。国内では、技術の組み合わせや応用による新たなパッケージや、旧態依然とした組織や仕組みを新たな技術によって変えていく、といった話題にとどまります。

ですが、世界の先端をゆく技術革新が生まれなくとも悲観することはありません。大事なのは『イノベーションを受け入れていくこと』なのだと思います。

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日本社会は米国に比べ、イノベーションによって生活が変わる、あるいは、企業活動や組織のあり方が一変する「変化の受容」を苦手としています。インターネットとメディアの関係を見ても一目瞭然。米メディアはテレビも新聞も雑誌も、世界のどこよりも早くネットシフトを進めました。その一方で、日本の国内メディアはしばらく「抵抗」を続けました。

消費者への浸透も時間差があります。例えばスマートフォン(スマホ)。米グーグルが昨夏に公表した調査結果によると、各国のスマホ普及率は韓国が73%、シンガポールが72%、英国が62%、米国が56%、中国が47%と続き、日本は25%でした。

この傾向は、伝統を重んじる、奥ゆかしい、繊細、保守的といった日本特有の文化も関係しているのでしょう。新たなものに対する畏怖や拒絶反応が、諸外国にくらべ強いのかもしれません。ですが、そこまでかたくなに拒否するわけでもなく、周りが変わるのを待って、じっくりと変化していく。諸外国や友だちなど周囲が変化すれば、おのずと追随する傾向にあります。時代の流れに逆らうほど愚かではありません。

さて、どうせ変わるなら米国並みに早く変わる方がよい、だから早く変化を受容せよ、といっても、そう簡単に変わりません。であれば、日本の文化や良さを引き継ぎながらイノベーションを受け入れ、自分のものとしていけばよいのではないでしょうか。その芽はたくさんあります。

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チームラボの猪子寿之社長

チームラボの猪子寿之社長

国内5500万人超、世界3億人超まで普及したスマホ向けアプリ「LINE」もその一つ。すでに「フェイスブック」や「ツイッター」といったツールが存在し、国内でも普及していたにもかかわらず、後発のLINEは一気に日本中に浸透し、海外にも飛び火しました。

フェイスブックやツイッターなど米国発のツールと、LINEには、明確な違いがあります。前者は1対n、多人数に対して自己主張するツール。対して後者は基本的に1対1、クローズドな環境に適したツールです。広く不特定多数に対して自己主張することに慣れていない日本人になじみやすいツールともいえます。

ただ完全に閉じているわけではなく、グループを作ったり、「タイムライン機能」を通じて友だちに全公開したりすることも可能なハイブリッド型。日本流のコミュニケーションと、スマホや「ソーシャル」といったグローバルスタンダードがうまく融合した結果、世界にも受け入れられました。

「プロジェクションマッピング」などデジタル技術を駆使したアート作品で世界からも高い評価を受けているクリエーティブ集団のチームラボ(関連記事「現実を拡張せよ AR最先端事情」を参照)。その創業者で社長を務める猪子寿之氏が面白いことをいっていました。

「日本の豊かな文化の上に僕らのクリエーティビティーはある。日本の文化がバックグラウンドにあるという事実は、日本を認める認めないとは関係なしに、この国に育ったがゆえの運命。日本と関係なく、『自分は個として優秀だ』という人がいたら、それはウソで、本当にクリエーティブな行為をできていないはず」

欧米で生まれたイノベーションを日本流でものにし、人々の暮らしに浸透させる。長い歴史のなかでは、普及過程まで含めてイノベーションと呼びます。むかし、自動車やエレクトロニクスでとった杵柄(きねづか)をIT(情報技術)やネット分野でも発揮できる可能性は、十分に残されていると期待しています。

(理)

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