2019年7月20日(土)

どうなるネットの安全 迫る新型犯罪の脅威
ラック 取締役最高技術責任者(CTO) 西本 逸郎

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2014/1/6 7:00
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残念ながら2013年もさまざまなインターネット上の安全を脅かすさまざまな事件が発生し、数多くの企業や個人が巻き込まれた。新年を迎えるのに当たり、ネットセキュリティーを守る最前線に立つ弊社の経験から、2014年にどんなサイバー世界での事件が起こりうるのか展望してみたい。

■ネットバンキング被害、14年に本格化か

国別にみたネットバンキングの普及率(横軸)と電子商取引(EC、縦軸)の普及率の違い(総務省の平成24年版情報通信白書から抜粋)

国別にみたネットバンキングの普及率(横軸)と電子商取引(EC、縦軸)の普及率の違い(総務省の平成24年版情報通信白書から抜粋)

今年、まず注意すべきは金銭の窃取を目的としたネット犯罪だろう。昨年インターネットバンキング(ネットバンキング)で実行された不正送金の被害は過去最大となり、最悪だった11年の被害額の4倍に拡大。約12億円が犯罪者の手に渡った。しかし私は13年は「試験的な犯行」が行われたにすぎず、14年にいよいよ本格化するとみている。

実は日本はネットバンキングの普及率が欧米諸国に比べて低い。総務省が発表した12(平成24)年版情報通信白書にある2010年のデータによると、電子商取引(EC)や電子メールなどのコミュニケーションはほかの国に比べてよく使われている。ところがネットバンキングは明らかに使われていない。だからこそ被害額がまだ欧米より少ないだけだといっていいだろう。

犯罪者から見ると、日本はおいしい市場なのは間違いない。昨年9月、スマホの電池が長持ちするとの迷惑メールで「電池革命」といういんちきなアプリ(応用ソフト)がばらまかれたが、警戒心なく8000人にも及ぶ人がだまされてインストールした事実が明らかになった。金を持っているのに自己防衛意識が低い――。日本人はだましやすいとの情報が世界中のサイバー犯罪を企てる人々に伝わってしまったと考えるのが順当だ。国境や言語、法制度の壁がないサイバー社会と実社会とを巧妙に使い分けて、犯罪者はこれから確実に我々を襲ってくる。

個々の利用者が適切な用心を怠らないことは肝心だ。加えて組織化した犯罪者に対峙するには、捜査機関による犯罪基盤の調査を待ったなしでやらなければならない。犯罪者のネットワークは世界に広がっていると推測される。既に日本のネットワークやコンピューターが海外のサイバー犯罪で使用されていることも多い。にもかかわらず、日本に関係がないという理由で必ずしも国内の捜査機関が動いていない場合が多い。

国境を越えて張り巡らされた犯罪基盤の全容を解明する上で、海外の捜査機関に対して提供できる情報をまず国内で集め整理しておくことが重要になる。情報すら持たない現状では、一歩先をゆく海外の捜査機関と効率的な連携は難しいだろう。

次に、私が恐れているのは不正出金の発覚を遅らせるために、大規模なDDoS(分散型サービス妨害攻撃)が頻発する懸念だ。大量のパソコンを踏み台にしてサービス提供者側をマヒさせる大規模なDDoSを起こせば、そちらにかかりきりにならざるを得ない。実際欧米ではこの手口が既に使われており、犯罪者は送金先から現金を引き出すまでの時間稼ぎができ発覚しにくくできる。

しかしあくどい犯罪者なら、捜査機関が動き出さないようにあえて規模を小さくして、被害者となる個人だけを狙ったDDoSを起こすかもしれない。そんなDDoSを仕掛けられたら「素人」の個人にはお手上げだ。

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