量子力学の"常識"に挑む 見なかった過去も推測
日経サイエンス

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2013/11/24 7:00
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ダブルスリット実験は、並んだ2つのスリットに向けて光子(光を作る粒子)を照射し、その先のスクリーンで捉える実験だ。何度も照射すると光子は周期的に散らばり、スクリーンに縞(しま)模様が浮かび上がる。


縞模様ができるのは、1個の光子が右のスリットと左のスリットを同時に通って互いに干渉するためだ。

だが1個しかない光子がどのように両方のスリットを通っているのだろうか? 弱測定を使うと、それを確かめられる。

光源を若干右にずらして、わずかに左右が非対称になった装置を用意する。スリットに少々細工をして光子が左右どちらのスリットを通ったのかを弱く測定し、そのままスクリーンに照射する。縞模様の中の特定の位置に行き着いた光子を抜き出して、さっきの弱測定の結果を平均し、弱値を計算する。

大部分の光子は、縞模様の最も明るいところに到達する(図中のA)。これらの光子の弱値は,例えば右スリットの通過確率が0.57、左スリットの通過確率が0.43となり、ほぼ半々の確率で通り抜けたことがわかる。一方、縞模様の最も暗いところ(図中のB)に到達したまれな光子の弱値は、右スリット通過確率が4、左スリット通過確率がマイナス3で、ほとんどが右を通ったと言える。

■マイナスの確率?

マイナスの確率とは一体何だろうか?

専門家の間でも議論があり「確率とは認め難い」との声もある。だが一見奇妙な数字も「総和が1になる」など確率の法則は満たしており、論理的にはつじつまが合っている。「確率マイナス3」というのは「マイナス3個のリンゴ」みたいなもので、「それ自体は想像しにくくても、論理の見通しがよくなるなら導入して構わないと思う」と細谷名誉教授は話す。

弱値というのは、最終的に「この結果になった」という条件下で、光子の経路などの物理量が過去にどのような傾向を持っていたかを定量的に示す条件付きの確率だ。

細谷名誉教授は「物理量の値は測定によって飛躍的に出現し、その前のことは問うてはならない、という従来の量子力学の主張は不自然だ。測定前の物理量の値とは弱値であると考えることで、そうした不自然さが克服される」と指摘している。

(詳細は25日発売の日経サイエンス1月号に掲載)

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