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ミラーレスが「プレミアム」に 進撃するカメラ業界

ミラーレス一眼カメラに進化の波が訪れている。カメラメーカー各社は16~18日、年末商戦を狙った新製品を相次いで発表した。共通するキーワードは「プレミアム」だ。今回ソニーや富士フイルムが発売するのはボディーだけで10万~22万円する高級機。デジタルカメラの命である「撮像素子」「レンズ」「画像処理」のいずれにも惜しみなく最新機能を投入しており、ラインアップの上位に位置付けた。もちろん小さいというミラーレスならではの魅力はそのままだ。

ターゲットは一眼レフカメラを好んで使ってきたプロカメラマンやハイアマチュア層。彼らを取り込めれば入門機から高級機まであまねくカバーすることになる。レンズ交換式カメラ市場で約4割を占めるまでに成長したミラーレスは、野心的なカメラメーカーの挑戦によってますますその地位を強固にしそうだ。

交換レンズ、1人平均3.8本購入

18日に都内で新製品発表会を開いた富士フイルム。ミラーレスの決定版と同社が自負する「X-E2」などを発表した

これまでミラーレスが主に狙っていたのはコンパクトデジカメを使う一般的な消費者。需要を取り込むため安価な製品が中心だったが、プレミアムを追求した新製品群は、高価だが画質や機能においていずれも従来型の一眼レフカメラと肩を並べる。

「2年間かけてミラーレスカメラ事業の強化を進めてきた。今回の製品はミラーレスに必要なあらゆる機能を高度化したいわば決定版だ」。18日に都内で新製品発表会を開いた富士フイルムの田中弘志取締役執行役員はこう胸を張る。同社は6月にデジカメ事業強化のため関連部署を光学・電子映像事業部に統合。組織再編後初めて投入する「X-E2」は、外観こそ前モデルと大差ないが、オートフォーカス速度を最大75%速くするなど徹底的にブラッシュアップを図った。手を加えた場所は60カ所に及ぶ。

ソニーはフルサイズの撮像素子を採用した世界で初めてのレンズ交換型ミラーレス「α7」シリーズを発表

ミラーレスに力を入れる背景にあるのがコンパクトデジカメの惨憺(さんたん)たる販売状況だ。富士フイルムの調べでは、2013年4~9月期の市場全体の出荷実績は前年同期比で台数が半減した。一方ミラーレスは、同社の製品に限っていえば台数ベースで3.4倍と絶好調だ。交換レンズも2.2倍に増えており、「1人当たり平均3.8本のレンズを購入している」(田中取締役)という。

レンズ交換型カメラのうまみは、本体を買ってもらえればレンズも売れる可能性が広がる点にある。安く本体を販売してもレンズでかせぐことができる"おいしい"ビジネスモデルなのだ。好機を逃すものかと同社は、コンパクトデジカメの開発を今後縮小し、代わりに経営資源をミラーレスに集中投下していく方針だ。

ミラーレス人気で大胆な戦略を打ち出したのがソニーである。撮像素子を、一眼レフでも上位機しか搭載していないフルサイズ(35ミリのフィルム1コマ分とほぼ同じ)と大型にしたのだ。ラインアップは16日発表の「α7R」「α7」の2機種で、フルサイズを採用したレンズ交換型のミラーレスは世界初となる。

多くのミラーレスはサイズを小さくするため、面積がフルサイズの約半分の「APS-C」と呼ぶ撮像素子などフルサイズより小さいタイプを搭載している。撮像素子が大きければシャッターを切った瞬間により多くの光を取り込むことができる。結果として画質が向上することがフルサイズを選んだ理由。撮像素子を大型化すれば部品が大きくなりサイズを小さくしくくなるが、あえて難題に取り組むことを選択した。

これまでソニーは「α」の名称は一眼レフのブランドとして用い、ミラーレスは「NEX」という別ブランドだった。今回の新製品にαの名称を冠したことは、同社がミラーレスをプロカメラマンやハイアマチュア層狙いのプレミアな位置付けに"格上げ"したことを意味する。来年4月をめどに、キヤノンやニコンが提供しているのに近いプロカメラマン向けのサポートサービスも開始する。故障時に代替え機を貸し出すなど、きめ細かい対応で要求水準が高いプロカメラマンの期待に応え、支持につなげる狙いだ。

日本企業が主導権握り続ける

パナソニックも負けてはいない。17日に開いた記者会見では「ルミックスDMC-GM」を11月後半に投入することを明らかにした。撮像素子はAPS-Cよりやや小さい「マイクロフォーサーズ」ながら、ミラーレスとして世界最小サイズを実現した。マグネシウムやアルミといった金属やレザー調の合皮を多用するなど、質感を高める工夫が随所にある。同社は認めていないが、レンズ供給で提携関係にある独ライカと共同で20万円前後するミラーレスの開発を水面下で進めているとの噂もある。

一足早く9月に発表したオリンパスの「OM-D E-M1」は店頭で大人気

こうしたカメラメーカーの動きに消費者の側も敏感に反応している。一足早く9月に発表会を開いたオリンパスは11日にミラーレスの最上位機種「OM-D E-M1」を発売した。家電量販店などでの売れ行きは好調で、中でも19日に追加発売する高級レンズとのセット品は22万円という高額にもかかわらず「予想を超える予約が入っている」(オリンパス)という。ある家電量販店の店員は「すでに納期は1カ月待ち」とその人気ぶりを明かす。

レンズ交換式カメラの世界は、一眼レフからミラーレスへとカメラの歴史の中でも大きな変革期を迎えている。一方で稼ぎ頭だったコンパクトデジカメは、カメラ機能が年々高度化するスマートフォン(スマホ)に押され苦戦を強いられている。ただ「撮像素子、レンズ、画像処理が複雑に絡み合うなか、長年追求し続けてきた画質や機能をスマホが同等クラスまで高めるには時間が相当かかる」(富士フイルムの田中取締役)とカメラメーカーはみる。

欧米の列強メーカーの台頭を許してしまった家電やIT(情報技術)機器と違い、日本企業が依然として主導権を握り続ける数少ない分野。それこそがカメラだ。五輪やワールドカップではプロカメラマンがこぞってキヤノンやニコンの一眼カメラを使っており、国内外で出会う外国人旅行者が国産の一眼をぶら下げている光景もよく目にする。彼らの一部は、もしかしたらスマホ革命を前にして一眼レフとの別れを考えるかもしれない。その場面で、魅力的で小さく画質がよいプレミアムなミラーレスでラブコールを送ることができれば、次の10年も日本のカメラ産業は輝き続けることができるかもしれない。

(電子報道部 高田学也)

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