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逆風の中突き進む富士通 スマホビジネス継続の勝算

国内の携帯電話メーカーに逆風が吹き荒れる中、富士通はスマートフォン(スマホ)事業を引き続き推進している。NECやパナソニックなどNTTドコモとともに繁栄を極めた「ドコモファミリー」の有力メーカーだった各社が相次ぎスマホ事業から撤退または縮小する中で、同社の姿勢は際立つ。米アップルの「iPhone」(アイフォーン)の販売にドコモが踏み切るなど市場環境が激変するなか、同社に勝算はあるのかを探った。

■「スマホへの投資は続ける」と宣言

法人向けモバイル関連事業強化を発表する富士通の大谷信雄常務(8月27日、都内)

「ケータイは3ケタの赤字。ドコモの『ツートップ』に入れなかったことが響いた」。富士通の加藤和彦最高財務責任者(CFO)は、7月30日に2013年4~6月期決算を発表した会見でこう明かした。パソコン・携帯電話事業は171億円の営業赤字(前年同期は20億円の赤字)とふくらんだ。赤字拡大の主因が携帯電話だったとしながらも、加藤CFOは次のように続けた。「(スマホに関して)高水準の開発投資は続ける。新機種開発の手は緩めない」

スマホビジネスはいまや、アクセルを緩めたら負けの「チキンレース」。ドコモの夏商戦ではソニーと韓国サムスン電子の「ツートップ」から外され辛酸をなめたが、冬商戦はサムスンに代わり、富士通とシャープに販売促進費が投入される見通しだ。富士通が白旗を揚げなかったのは、ドコモから早い段階で何らかの耳打ちがあった可能性がある。

ライバルの戦線離脱もアクセルを踏み続ける富士通には追い風だ。NECは7月31日、スマホからの撤退を発表。携帯電話事業の統合について中国のレノボ・グループと交渉していたが、最終的には見送りを決定した。今後は「ガラケー」とよばれる従来型携帯電話の開発に集中する。ガラケーはスマホのような大きな開発投資が不要で「年間数十万台販売すれば黒字を確保できる」(川島勇CFO)ためである。パナソニックも個人向けスマホから撤退する方向だ。

強気の富士通はドコモのiPhone発売にも案外と冷静である。「iPhoneが仮にドコモの販売台数の半分を占めたとしても、残る半分を(少なくなった)国内陣営で分ければいいんだから」。ある幹部は打ち明ける。iPhoneがドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクの大手3社から出そろった結果、今後は通信会社がiPhoneを持つ持たないを争うフェーズから、国産端末の品ぞろえの豊富さを競うフェーズへと移るとの読みもある。

富士通にとって今後の経営戦略上もスマホが重要になる。「ICTと人とをつなぐ重要な技術」(山本正已社長)と位置づけているからだ。これまで財務会計や生産管理、人事総務など企業の組織のコストを下げ、効率化する情報システムの構築を主力にしてきた。こうした従来型ビジネスは将来、先細りが避けられない。

■狙うは「ICT生態系」

富士通の「らくらくスマホ」はフランスでも発売されたが、グローバルプレーヤーになるためのハードルは高い

富士通が狙っているのは企業なら顧客、自治体なら住民、病院なら患者と、法人顧客の先にいる個人までを含めて一気通貫でICTで結びつけ、そこに向けて様々なサービスを提供する新しい形の生態系ビジネスだ。その世界で欠かせないのが、人々が常に持ち歩きもっとも身近なコンピューターであるスマホ。山本社長は「ヒューマン・セントリック(人間中心)なICTビジネスに欠かせない。苦しくても頑張る」とスマホ事業継続の意義を強調する。

勝算はある。13年度のスマホ出荷計画は520万台と少なく、億台単位を出荷するサムスンやアップルと比べれば2ケタ少ない。しかし生産現場での徹底的なコストダウンの積み重ねで「年400万台弱でも利益がでる」(加藤CFO)生産体制を作り出した。計画では13年度の出荷は前年実績比で2割減ながら、黒字は確保できる計算という。

もっとも危うさもある。通信会社がスマホを消費者へ販売する商習慣の日本では、どれだけ売れるかは通信会社次第。今冬こそドコモの後押しを得られても、いつまでその関係が続くかは不透明なのだ。

海外市場での展望も明るくない。富士通はフランステレコムと提携しシニア向けの「らくらくスマホ」を仏市場で発売したが、サムスンやアップルと比べればニッチ市場向けの商品であることは否めない。スマホはブランドビジネスの側面もあり多額のマーケティング費用をかけなければグローバルプレーヤーとして認知度を高めることは難しい。

ICTと人との接点であるスマホの重要性はなにも富士通ばかりでなく、撤退するNECもパナソニックも認識していた。だからこそ何とか事業を残そうとNECはレノボとギリギリまで統合交渉を続け、パナソニックも他社との提携を模索した。そうした努力すらも水泡に帰してしまうことにいまのスマホ事業の難しさが映し出されている。

ある携帯電話メーカーの幹部は「富士通さんは楽観的すぎる」と語る。浮き沈みの激しいスマホ市場で疑念をぬぐい去り勝ち残るには、とにかく結果で示すしかない。(産業部 鈴木壮太郎)

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