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最先端ITが競演、全米テニスの舞台裏 クラウド、モバイル…

今年も熱戦が繰り広げられたテニスの全米オープン。ニューヨーク市内の会場には、8月下旬から9月上旬まで2週間の会期中に70万人を超えるファンが押し寄せ、テレビ観戦者は米国内だけで5000万人以上に達したとされる。

ビジネスの世界では「クラウドコンピューティング」や「モバイル」「予測分析(アナリティクス)」などの活用が旬だが、スポーツの世界も例外ではない。世界最大のスポーツイベントの1つとされる全米オープンの舞台裏をのぞくと、最新のIT(情報技術)が凝縮されていた。

クラウドの運用状況や試合の分析データについて説明するIBMの担当者

IBMが1990年からITシステムを運営

決勝戦など主要な試合が行われるアーサー・アッシュ・スタジアム。内部の「関係者以外立ち入り禁止」区域にある一室に足を踏み入れると、大型の液晶モニターやパソコンがところ狭しと並んでいた。

各試合のデータ管理から公式サイトの運営まで、ITにかかわるあらゆる裏方作業を1990年から請け負う米IBMのオペレーションセンターだ。

「クラウド、予測分析、モバイル、そしてソーシャル。全米オープンは4つの重要なテクノロジーに関する我々の取り組みを一堂に見てもらえる格好の機会」。IBMでスポーツ・スポンサーシップ・マーケティングを担当するリック・シンガー副社長はこう話す。

主催者の全米テニス協会(USTA)が大会公式サイトを開設したのは1995年。以来、世界中のテニスファンに提供するコンテンツやサービスの形態は年々進化してきた。

<全米オープンのIT活用の取り組み>
1990米IBMが公式ITプロバイダーに
1995公式サイト開設
2007試合経過をリアルタイムで把握できる「スラム・トラッカー」の提供開始
2009米アップルのスマートフォン「iPhone(アイフォーン)」向けに大会公式アプリの提供を開始
2010ITインフラをクラウドに移行
2011米グーグルの携帯OS「アンドロイド」搭載スマホ向けに大会公式アプリの提供を開始
2012アップルのタブレット(多機能携帯端末)「iPad(アイパッド)」向けに大会公式アプリの提供を開始
2013予測分析技術を活用し、クラウドの運用を自動化

大会のITインフラがクラウドに移行したのは2010年。会期中の2週間は、それ以外の期間の50倍の処理能力が求められる全米オープンのような大型イベントにとって、繁閑に合わせて処理能力を柔軟に変えられるクラウドはまさにうってつけといえる。

USTAでデジタル戦略を担当するディレクター、ニコール・ジーター・ウェストさんは「クラウドのおかげで、大会期間中も安心して眠ることができるようになった」と喜ぶ。

「ウィンブルドン」「マスターズ」とクラウド共用

2012年から配信を始めた米アップルのタブレット「iPad(アイパッド)」向け公式アプリ(画面は「スラム・トラッカー」)

IBMが構築したプライベートクラウドを、同じ課題を抱えるテニスの全豪オープン、全仏オープン、ウィンブルドン選手権の3大会、ゴルフのマスターズ・トーナメントなどと共同で利用することで、運用コストを低減した。

昨年までトラフィックの状況に応じて手動で調整していた処理能力の割り当てを、今年は予測分析技術を駆使して自動化するなど、運用面の効率も大きく改善した。

ここ数年の最も大きな変化はやはりモバイルシフトだ。

USTAは09年に米アップルのスマートフォン(スマホ)「iPhone(アイフォーン)」向け公式アプリの配信を開始。11年に米グーグルのOS(基本ソフト)「アンドロイド」を搭載したスマホ、12年にアップルのタブレット(多機能携帯端末)「iPad(アイパッド)」と公式アプリの対応端末を増やしてきた。

モバイル端末経由のトラフィックも年々増加している。12年大会では3億2500万に達したページビュー(PV)のうち、ほぼ3分の1の1億1700万PVがモバイル端末からだった。

最近は会場内など外で大会の様子をチェックするファンの利用に加え、自宅でテレビ観戦する際に、選手の情報や試合の分析データをスマホやタブレットでチェックする「セカンド・スクリーン」としてのモバイル利用も増えているという。

予測分析で試合の楽しみ方も進化

各試合のデータ管理から公式サイトの裏方までITにかかわるあらゆる裏方作業を請け負う米IBMのオペレーションセンター

コンテンツも進化している。試合の経過をリアルタイムで把握したり、各選手のプレー内容を分析して見せたりする「スラム・トラッカー」は、今大会から予測分析を強化している。

過去8年間の四大大会に関する4100万件を超えるデータを基に、出場選手が対戦相手に勝つ上でカギとなる3つのポイントと、その達成度を確認できる「キー・ツー・ザ・マッチ」機能を追加した。

ツイッターと連携した「トレンドキャスト」では、全米オープンに関するツイートを集計。試合の経過とともに変化するソーシャルメディア上の"世論"をフォローしたり、自らツイートして世界中のファンと一緒に盛り上がったりできるようにした。

米国では人気自動車レース「NASCAR(ナスカー)」が米ヒューレット・パッカード(HP)と組むなど、スポーツとITの融合が一段と進んでいる。

モバイル端末の普及やソーシャルメディアの台頭で観戦手段や楽しみ方が多様化する中、ファンとのきずなをいかに強くするかは各スポーツにとって大きな課題だ。

「要求水準は年々高まっているが、すべてはファンに全米オープンをより楽しんでもらうため」とUSTAのウェストさん。一息つく間もなく、視線はすでに来年を向いていた。

(ニューヨーク=小川義也)

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