2019年7月17日(水)

被災地で始動、未来の地域医療「クラウドカルテ」

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2013/8/22 7:00
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病院、介護施設、薬局が組織の壁を越えて患者の情報を共有する――。IT(情報技術)を生かした地域医療連携の意欲的な取り組みが被災地・宮城県で動き始めた。東北大学や県医師会、介護事業者などの関係組織が結集し、地域医療の革新をめざしている。

■石巻・気仙沼で70施設以上をつなぐ

NTT東日本「光タイムライン」は複数の病院にまたがる診療情報を患者ごとに時系列で一覧できる(写真はサンプル画面)

NTT東日本「光タイムライン」は複数の病院にまたがる診療情報を患者ごとに時系列で一覧できる(写真はサンプル画面)

医療業界でこれまでにない取り組みとして注目されているのが、病院や事業者がクラウドを通じて電子カルテなどを相互に共有する新システムだ。7月、県北東の石巻・気仙沼地域(人口約29万人)で70施設以上が参加し仮運用が始まった。今後2~3年をかけて県全域をカバーするのが目標で、第一歩を踏み出した。

このシステムでは、情報共有に同意した患者一人ひとりに独自の16ケタのIDを割り当てる。その上で、各病院や施設の利用者番号などと関係付ける。過去にどんな病気にかかり、どの病院でどんな治療を受けたか。これらの情報は従来なら患者本人の記憶に頼るしかなかった。今後は医師がデータベースから簡単に引き出せるようになる。患者が引っ越したり転院したりしても、病歴などを確実に引き継げる。

かねてIT化の遅れが指摘されてきた医療分野。地域医療の連携が切実に求められるようになったことで、IT導入の機運が一気に高まっている。住民の高齢化や過疎化、医師の偏在などで地域医療を取り巻く環境が大きく変わってきたためだ。病院や薬局などが単独で機能するのでは限界があり、病院などが互いに補完し合いながら質の高い医療を提供するという考え方がここに来て支持を集めるようになった。医療業界の動きを後押ししようと政府は6月、打ち出した成長戦略に地域医療介護連携ネットワークの推進を盛り込んだ。

主な地域医療連携の動き
名称主な連携地域
旭川クロスネット北海道旭川市
みやぎ医療福祉情報ネットワーク宮城県気仙沼市と石巻市
信州メディカルネット長野県長野市と松本市
ふじのくにねっと静岡県中部
晴れやかねっと岡山県岡山市、倉敷市
まめネット島根県
ゆけむり医療ネット大分県別府市
あじさいネットワーク長崎県

(注)富士通の資料などを基に作成

宮城県の取り組みで旗振り役を務めるのが「みやぎ医療福祉情報ネットワーク協議会(MMWIN)」と呼ばれる団体だ。災害に備え患者情報を共有しようと、宮城県や医師会、大学病院などが中心になって2012年に発足した。

同県の関係組織が一丸となって情報共有に動いた直接のきっかけは、震災時に苦い思いをしなければならなかった経験にある。津波でカルテや利用履歴を喪失する病院が相次ぎ、生存者の既往症や薬の処方歴を確認できなくなった。医師が手を出せず、亡くなった人も多かった。

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