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ネット選挙「決戦の土日」 無党派の閲覧急増

参院選で解禁された、インターネットを使った公示後の選挙運動がいよいよ山場を迎えている。これまでのところ盛り上がりに欠けている点は否めない。ただ前哨戦だった6月の都議選では、投票前日・当日の2日間に検索して候補者のウェブサイトを閲覧する有権者が急増する現象が起こった。ネットを活用してどの程度無党派層を取り込めるかは、「決戦の土日」までにコツコツ積み重ねてきた取り組みが鍵を握る。

投票前日のアクセスは5倍、当日は10倍以上

「告示前は1日に30~50ページビュー(PV=閲覧数)だったアクセスが、投票前日には250PV、当日は500PVと飛躍的に増えた」。都議選で複数の候補者からネット選挙の支援を請け負ったソーシャルグループウェア(東京・品川)の数又拓氏はこう語る。同社はウェブサイト制作を請け負う中で積み上げたネットの知見が生かせるとみて、ネット選挙支援事業を立ち上げた。

数又氏が担当したある候補者の選挙期間中のPVは1日平均100PV。投票直前の「駆け込み閲覧」が通常の5~10倍に跳ね上がったのは想定を超えていたという。「投票先を決めかねていた無党派層の有権者が多く、一気にネットを検索するなどの行動に出たのでは」(数又氏)とみている。参院選でも投票前日(20日)と当日(21日)に有権者からのアクセス数が急増し、投票行動を左右しうると断言する。

ソーシャルグループウェアは都議選で5人の候補者のネット戦略を支援。数又氏は23区内のある区から出馬した野党候補を担当した。都議選はネット選挙の解禁前で候補者は告示後の書き込みはできなかったが、それでも十分な手応えを感じたという。

実は投票直前に駆け込みアクセスが急増した背景に、念入りにネットの様々なサービスを使いこなす戦術で準備していたおかげもある。数又氏が支援を始めたのは5月上旬。まず手を付けたのはウェブサイトの大改造だった。

まずトップ画面の中に候補者のミニブログツイッター」、交流サイト(SNS)「フェイスブック」、動画共有サイト「ユーチューブ」の小画面を貼り付けた。いずれかを更新すればウェブサイト側も自動的に更新され、常に候補者の最新動向を有権者が把握できるようにした。

企業が社名や製品名で実施するのが当たり前になった「検索エンジン最適化(SEO)」も採用。重点政策に関する記述を充実させ、同じ政党・地域の議員同士でウェブサイトを相互にリンクさせる工夫により、米グーグルやヤフーなどの検索サイトで候補者名が検索された際に、検索結果の画面の上位に候補者のウェブサイトが表示されるように配慮した。

個々の書き込みも吟味、「いいね!」の広がり狙う

ソーシャルメディアもフルに活用している。ツイッターでは、担当した候補者の名前や本人が取り組む重点政策について書き込み(ツイート)している人を探し出した。候補者と同じ選挙区の有権者と思われる人物が見つかればフォローし、有権者との接点を積極的に設けることを心がけた。

1回の投稿で140字しか書き込めないツイッターでは、踏み込んだ政策の話は伝わりにくい。そこで有権者の側からも候補者をフォローしてくれた場合、有力な支持者になる可能性が高いとみてさらに手を打った。「フェイスブックのページを登録してほしい」という内容のメッセージ(DM)を送り、フェイスブックを通じて深みのある交流ができるようにした。

フェイスブックでは、企業などが使う「フェイスブックページ」として候補者の専用ページを新規に作成した。候補者のプライベートな友人と有権者が混在するのを避けるのと、ソーシャルグループウェアが企業向けに提供しているフェイスブック管理ツールを導入しやすくするためだ。候補者には文字だけの単調で目立たない発信にならないようアドバイス。一目で内容が分かるよう写真も織り交ぜて投稿し、賛同を示すボタン「いいね!」が押され発信が拡散しやすくなるよう気を配った。

フェイスブックでは、候補者の書き込みに対し有権者が「いいね!」ボタンを押すと、有権者の友達にもその書き込みが表示される。候補者を直接登録している有権者が100人程度に過ぎなくても、有権者の友達まで含めれば数千~数万人に重点施策などが伝わる可能性がある。「有権者の名前入りで『○○さんがいいね!と言っています』と転載されるので、ツイッターより伝搬力が強く働く」(数又氏)

さらにユーチューブでは、本人の基本政策をまとめた5本の動画を作成。告示日から逆算して数日おきに更新されるよう、小出しにして掲載した。これは以前、千葉県内の首長選を支援した際の経験が役立っている。選挙事務所を訪れた年配の3人の有権者に、ユーチューブはやってないのかと言われてはっとしたという。ネットは必ずしも若者向けではないとの事実が数又氏の脳裏に強烈に焼き込まれた瞬間だった。「パソコンやスマートフォンに不慣れなシニアも、動画の再生ボタンを押すだけなので簡単。ネット選挙に熱心なシニアが1人でもいれば、その周りの方々を巻き込んで動画が見られるはず」(数又氏)

都議選で駆使した各種サービスの利用は無料。しかも当選・落選に関係なく、選挙後も無駄にならず支持者とのつながりを保つのに役立てられる。一般にツイッターやフェイスブックの利用者は自分が登録した人を削除することは少なく、政治家に対しても登録を続けているケースが多いそうだ。同社が担当し落選したある候補者は「ネット選挙があればお金のない人でも政治に挑戦できることが分かった。数年後の次の選挙に向けた下地作りにもなってよかった」と前向きに語る。

ツイッターなどの輪、次回選挙への下地作りに

日本経済新聞社が14日から16日まで実施した世論調査では「ネット情報を参考にしない」との回答が81%に上り、ネット選挙が有権者に浸透していない状況が浮き彫りになった。自民党でネット選挙戦略を統括する平井卓也衆院議員も「なりすましや誹謗(ひぼう)中傷、落選運動などのトラブルは思ったほど出ていないが、ネット選挙が大きな話題を呼び起こしている例も出ていない。準備不足もあるが……」と拍子抜けする。

そもそも今回の参院選では与党の優勢が伝えられており、ネットで話題になる大きな争点も見当たらない。ある野党候補者は「改選数の多い東京、大阪、名古屋周辺の選挙区や比例代表で、当落線上の候補者がネット選挙の追い風を受け当選する例が数人出ればいい方ではないか」とみる。

ただ有権者は、候補者が早くから戦略的にネットを活用していたのか、慌ててツイッターなどを活用したものの炎上を恐れて身辺雑記ばかり書き込んでいたのかしっかり見ている。投票前日と当日に有権者が各候補者のサイトを閲覧し、そこで得た情報を基に無党派層が投票する候補者を決めるケースが少なからずあるだろう。有権者の行動は投票翌日以降、各候補者のウェブサイトのPVやネット企業各社が発表する検索語のランキングなどを通じ明らかになる。

(電子報道部 金子寛人)

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