/

アジアを駆けろ日の丸電動バイク スマホ連携で輝く

シェア1位のベンチャーが新型を年内投入

世界で最先端の電動バイクが日本で生まれ、アジア市場に羽ばたこうとしている。二輪バイクでホンダやヤマハ発動機など日本メーカーは圧倒的人気を博してきたが、次世代の電動バイク市場でのけん引役を狙うのが、ベンチャー企業のテラモーターズ(東京・渋谷、徳重徹社長)だ。スマートフォン(スマホ)と連携する電動バイクをこのほど開発し、商用化にメドを付けた。第1弾で発売した既存製品に比べ、走行距離を大幅に伸ばすなど、電動バイクの開発競争で業界の先頭を走る。二輪バイク市場で8割を占めるアジアで先進性をアピールし、都市部で生活する若者らの間で一気に存在感を高めたい考えだ。

都市部の利用者がようやく満足する走行距離に

テラモーターズは10日、2人乗りの電動バイク「A4000i」「A4000」を発表した。最大の特徴は走行距離。時速30キロメートルで走った場合で約65キロメートルと、従来製品に比べ長くした。都市部での一般的な使い方なら1回の充電で終日走り回れる。「都内の原付きバイク利用者の約半数は走行距離が100キロメートル以下。ようやく電動バイクが実用に耐えるレベルに達した」。都内で記者会見を開いた徳重社長はこう胸を張る。最高速度も時速65キロメートルと原付きバイクに見劣りしない。

工夫したのはバッテリー。取り外し式の大型リチウムイオン電池を採用し、長時間出力に耐えられるようにした。家庭用のコンセントにつないで4.5時間で充電を済ませられるほか、従来の5倍の長寿命を実現した。バッテリーメーカーは非公表だが「安価かつ高性能な部材を8カ月かけて見つけ出した」(徳重社長)。

テラモーターズ、「iPhone」と連動する電動バイクを発表。アプリで走行距離やルート、電池残量を表示する(10日)

テラモーターズ、「iPhone」と連動する電動バイクを発表。アプリで走行距離やルート、電池残量を表示する(10日)

先行して12月に投入する「A4000i」はスマホ連携が可能なモデルで、価格は約45万円。2000台限定で、日本のほかアジアでも発売する。来春、スマホ連携機能を省いた廉価版の「A4000」を追加し販売に弾みを付ける。生産はベトナムで行う。

テラモーターズが新製品で狙うのは、アジア市場。「新興国こそ、電動バイクがこれから切実に求められている」(徳重社長)。同社の調べでは、世界の二輪バイク需要の実に8割がアジア各国で占めているという。日本の二輪バイク市場は年間30万台前後で、ピーク時から8分の1以上減ったとされる。一方ベトナムは350万台、インドネシアは750万台、インドは1000万台に及び成長が著しい。

需要が見込める背景には、アジアの都市部では自動車などがまき散らす排ガスで大気汚染の問題が深刻化していることもある。また、ガソリン価格が高騰し消費者の家計に重くのしかかっている。アジアのガソリン価格は6年で1.5倍になり、「給料が月1万円程度の消費者が多いにもかかわらず、日本と同水準」(徳重社長)。

「A4000i」は45万円と原付きバイクに比べて割高だが、テラモーターズは燃費がガソリン車の10分の1程度と安い点をアピールすれば十分勝算があるとみる。デザインの先進性と信頼性にもこだわった。電動バイクは2008年ごろ安価な中国製がアジア市場に大量に流れ込んだが、その後は需要が落ち込んだ。

現在、アジア市場でホンダやヤマハ発動機など日系の二輪メーカーが席巻しているのは、デザイン性と壊れにくい安心感が両立しているためだとされる。「弊社も日本メーカーである強みを生かしながら、スピード感を持って事業を展開していく」(徳重社長)。同社は新製品などで、2015年末までにアジアを中心に10万台を販売できるとみている。

深夜早朝の騒音に悩む宅配業者を狙う

本製品は日本市場でも売り出すが、主に宅配業者など業務用に展開していく考え。高齢化社会になり、宅配でモノを届ける需要が今後急速に伸びるとみているためだ。徳重社長は「宅配業者の悩みはクルマやバイクの騒音。電動バイクなら夜間や早朝住宅街を走り回っても音が静かなので目立たない」と語る。

同社が「世界初」というスマホ連携にこだわったのは、アジアの若者を中心とした中間所得層がスマホと電動バイクに対して強烈なあこがれを持っているためだ。各国でスマホ普及率は10~20%とまだ低いが「スマホを持って電動バイクにまたがる。そんなかっこいい生活のシンボル的な製品に位置づけるには、スマホと連携しているということが重要」(徳重社長)。

専用アプリ(応用ソフト)では当初、電池の残量を確認したり、走行経路を示したりできるようにする。クラウドとの連携も視野に入れており、全利用者から位置情報や走行情報をネットに吸い上げいわゆるビッグデータとして処理。新しい情報提供サービスも開始したい考えだ。業務用に複数台の運行管理などのアプリを個別受注することも検討している。

テラモーターズは2010年4月設立。資本金は6億6210万円で現在16人の社員が日々電動バイクの開発・販売などに携わる。10年4月に初号機を発売済、全国に築いた1500店舗の販売網を通じて販売実績を積み重ねている。日本の電動バイク市場で4割のシェアを持つという。フィリピンやベトナムにも拠点を設けており、新型の投入で販売に弾みを付ける狙い。経済成長著しいアジアを「日本製」電動バイクが駆け抜け、若者たちの豊かな生活に欠かせない製品の1つになる日はそう遠くないかもしれない。

(電子報道部 杉原梓)

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

セレクション

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン