2018年8月15日(水)

原子力を電力改革回避の口実にするな 自然エネルギー財団理事長に聞く
編集委員 滝 順一

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2013/7/10 7:00
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 電力小売市場の自由化や発送電分離など、電力システム改革の実行を目指した電気事業法改正案が先の通常国会で廃案になった。経済産業省が進めてきた電力市場改革はどう評価できるのか。自然エネルギー財団のトーマス・コーベリエル理事長に聞いた。コーベリエル氏は1990年代のスウェーデンの電力システム改革時に政府委員として同国の改革に深く関わり、その後エネルギー庁長官も務めた。

■なぜ電力会社は所有権の分離を拒むのか

自然エネルギー財団のトーマス・コーベリエル理事長

自然エネルギー財団のトーマス・コーベリエル理事長

 ――電気事業法改正案の廃案で、電力事業の改革は先送りになった。

 「改正法の中身は決して十分な改革とはいえない。ただ長年にわたり少数の官僚と電力会社が支配してきた市場をいかに改革するのか、法案の準備プロセスは日本にとって学ぶよい機会になった」

 ――改正法案は改革に十分な中身ではなかったか?

 「発電事業と送電事業の所有権の明確な分離が、改革には不可欠だ。送電網の公平な運用への信頼が、発電事業への新規参入と投資を促すうえで欠かせないからだ。今回の改革で、電力会社は発送電の法的な分離は受け入れたが、所有権の分離は拒んだ。なぜ所有の分離に抵抗するのか。改革を法的分離にとどめることで何らかの恩恵を得ることを考えているとの疑惑が生じ、公平で競争的な市場の実現が懸念される」

 「スウェーデンなど北欧では一挙に所有の分離まで改革を進めた。ドイツではまず法的分離、次に所有の分離と2段階で進んだ。法的分離が実現した段階で、電力会社は完全に公平に送電網へのアクセスを保証するなら自分たちが送電網を所有する必要はないと判断し売却する道を選んだ」

 ――日本でも法的な分離を完全に実施すれば、所有の分離に進むか。

 「日本の電力会社は自由競争に耐えられない。廃炉放射性廃棄物の処分など原子力事業に伴う債務負担が非常に大きいからだ。東京電力については事故処理の負担も加わる。本当に競争的市場ができたら,電力会社は今のままでは勝ち抜いていけない」

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