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日本発・宇宙インフラ事業をアジアに、14兆円市場にらみ産学官が連携

人工衛星からの観測などによって得られる膨大な空間・地理データを活用した「宇宙インフラ」をアジア諸国に輸出する一大プロジェクトが始動する。東京大など3大学によるコンソーシアムがこのほど発足、宇宙航空研究開発機構(JAXA)やNTTデータなどとも連携して、産学官で宇宙データをアジアにおける資源開発や災害対策、交通網整備などに生かしていく。同時に国内の航空・宇宙関連企業との共同研究にも取り組み、日本発の宇宙インフラを広げていく。欧米や中国が積極的に宇宙インフラの海外展開に動いており、日本も総力をあげて参戦する。

「日本は観測や測位、通信など宇宙インフラに関する個別の要素技術のレベルは高いが、それを横断的にシステムとして構築していく人材が育っていない」――。東大、東京海洋大、慶応義塾大の3大学は4月末に「宇宙・地理空間技術による革新的ソーシャルサービス・コンソーシアム(GESTISS)」を設立。旗振り役の一人で、コンソーシアム代表者の東大の柴崎亮介教授は、日本の宇宙技術の世界輸出に意欲を見せる。

具体的にはまず、全地球測位システム(GPS)を使い、人や建物の位置を高精度で把握・解析できるソフトウエアの開発を進める。設計図に当たるソースコードを公開する「オープンソース」方式を採用して、大学や企業、研究機関のノウハウを持ち寄ることで、世界最先端のソフトを短期間で実用化する。これをベースに、フィリピン、ベトナム、バングラデシュ、インドネシアなどのアジア諸国で、共同研究や調査にも取り組む。

さらに、開発する最先端ソフトを教材として、国際教育プログラム「G-SPASE」も展開する。コンソーシアムを構成する各大学在籍生のほか、バングラデシュ、インドなど海外の提携大学の学生らが対象。宇宙工学や衛星測位技術、衛星工学やシステムデザインといった座学のほか、JAXAや情報通信研究機構(NICT)、NTTデータ、NEC、日立製作所などの連携企業のプロジェクトに参加する機会を設ける。タイのアジア工科大学、米マサチューセッツ工科大学、バングラデシュ工科大学とも交流を進める。

 宇宙を飛んでいる人工衛星から時々刻々と得られるデータは、様々なインフラ事業に活用することができる。

例えば、携帯電話や測位衛星のデータを使って災害危険地域の住民に警報を効率的に届けるシステムや、携帯電話のログを解析し、人々の分布や移動状況を把握して災害対応を支援するシステムの開発などがある。一部はすでに取り組みが始まっており、国際教育プログラムを通じ、宇宙インフラ活用に関する基礎知識やフィールドワークを経験した30人程度の修了生を毎年、送り出す計画だ。

コンソーシアムの運営を担当する東大の柴崎教授は、「携帯電話が普及し、地上の情報通信ネットワークが爆発的に拡大している。衛星情報を地上インフラと統合すれば、防災だけでなく、資源開発や陸上・水上での交通管理、疫病対策など幅広い分野で革新的なサービスが構築できる」と語る。新たなコンソーシアムの目標について、「個別の技術に特化した専門家だけの断片的な議論にとどまらず、横断的、総合的に社会の基盤となるシステムを構築できる人材を急いで育成したい」という。

慶大の神武直彦准教授は「欧州諸国がタイなどアジアに衛星システムを積極的に売り込んでいるほか、中国も宇宙システムの研究開発を加速させている」と指摘。日本発の宇宙技術として、欧米中の衛星にも対応できるシステムの構築を目指すという。

コンソーシアムは、衛星観測や地理情報システム(GIS)、宇宙工学分野で強みを持つ東大の空間情報科学研究センター、衛星測位を研究する東京海洋大の海事システム工学科、システムデザインや国際プロジェクトマネジメントのプログラムを持つ慶大のシステムデザイン・マネジメント研究科の担当教員が運営する。

内閣府によれば、衛星やロケット製造や、地理情報システムなどの宇宙利用サービス含めた日本の宇宙産業の市場規模は約9兆円。現在はほぼ9割を国内の官需に頼っている。東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国では、防災や交通インフラシステムの需要が伸びるなど、世界の宇宙関連市場は年14%で拡大している。政府は、アジア諸国などの外需を産学官で連携して取り込み、2020年度に日本の宇宙産業を14兆円に引き上げる目標を掲げている。研究や技術開発の成果をシステムとしてまとめ上げる人材の育成を急ぎ、防災や交通・森林管理など日本版の社会基盤システムをアジア諸国に使ってもらうことができる体制を整える。

(電子報道部 杉原梓)

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