アンパンマンに追いつけるか しまじろう、25歳の挑戦 - 日本経済新聞
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アンパンマンに追いつけるか しまじろう、25歳の挑戦

ベネッセの人気キャラ、初の映画化

 ベネッセコーポレーションが幼児教育サービスのキャラクター「しまじろう」のライセンス事業を広げている。今年で25歳になるしまじろうは親と子の2世代に支持されるキャラに育っており、3月には初めての映画も公開される。「子供に安心して与えられる」という教育キャラのイメージを生かし、この世界で圧倒的な存在であるアンパンマンに追いつけるか。

歯ブラシ、アンパンマンと人気競う

サンスターが2012年2月に発売した、しまじろうをあしらった幼児向け歯ブラシ「Doクリアこどもハブラシ」がヒットしている。

ベネッセの幼児向け通信教育「こどもちゃれんじ」の教材にサンプルと正しい歯磨きの啓発冊子を同封するキャンペーンを展開したところ、ペンギンのキャラを付けていた従来品に比べて約2倍の売れ行きという。

サンスターのマーケティング担当、柴田泰弘氏は「Doクリアは幼児向けと大人向けを同時購入する消費者が増えた。しまじろうに対する母親の信用がDoクリアのブランド全体に波及してきた」と分析する。ロイヤルティーの料率はやや高めだが、こどもちゃれんじの約120万人の会員と直接コミュニケーションできるため、「広告費用などを考慮すればリーズナブル」とみている。

幼児向け歯ブラシでは、ライオンがアンパンマンでシェア首位を守る。サンスターは09年にポケットモンスターを採用したジョンソン・エンド・ジョンソンにも大きく水をあけられていたが、しまじろう人気でかなり巻き返したようだ。

子ども向け野菜飲料市場を開拓

カゴメの幼児向け野菜飲料「すくすくやさい」のパッケージには、しまじろうとともに「野菜のシルエットクイズ」が付いている。外出先で子どもがぐずったときなどに与える場合も多く、クイズは「しまちゃんが持ってるこの野菜はなんだろうねぇ~」といった母親からの声かけのきっかけになるからだ。

11年9月発売のすくすくやさいの出荷は従来品に比べて約2倍のペースになった。こうした幼児向けパック飲料でもシェア首位は明治の「明治それいけ!アンパンマン」シリーズだが、売れ筋は果汁が多く、甘いもの。すくすくやさいは野菜100%の商品もあり、新市場を開拓した。

 「しまじろうは大切に育ててきた虎の子。ライセンスを乱発するつもりはない」。ベネッセこどもちゃれんじ事業部の手林大輔・開発ユニット長はこう強調する。今後もしまじろうの「安心キャラ」のイメージが生かせるライセンス供与先を見極めていく考えだ。

それでも、ここにきてベネッセがライセンス事業を積極展開しているのは、しまじろうが親子2世代に支持されるキャラに育ったからだ。

こどもちゃれんじは13年が開講25周年。初期の会員が母親になる年齢にさしかかり、同社の会員調査では25~28歳の母親の4人に1人は自らもしまじろうの教材を与えられた記憶がある。

新たなステージへ

「しまじろうは新しいステージに入った」(手林氏)とみたベネッセは3月、映画「しまじろうとフフのだいぼうけん~すくえ!七色の花~」を公開する。

本編50分の途中に休憩時間を設け、照明をやや明るめに調整するなど、これまでにない「ファーストシネマ」のコンセプトを掲げ、「集中できずに騒ぐかもしれないし、まだ映画は早いかも……」とためらっていた母親らの背中を押す。

幼児向け映画でもやはりアンパンマンは強く、昨夏公開のシリーズ第24作「それいけ!アンパンマン よみがえれバナナ島」は5億1000万円の興行収入をあげた。

もっとも、しまじろうも全国各地のコンサートで年間40万人を動員するキャラ。ベネッセは映画の興収目標などを明らかにしていないが、配給会社、東宝の大島孝幸・ODS事業室長は「ファーストシネマの位置を確立できれば、可能性は大きい」と期待を口にする。

「物語性に制約」指摘も 安心イメージの活用カギ

調査会社、キャラクター・データバンク(東京・港)によると、2011年のキャラクター商品市場における、しまじろうのシェアは0.91%で順位は26位だが、ベネッセコーポレーションの調査では、未就学児の認知度は約9割にのぼる。「教育キャラ」のイメージを守りつつ、ライセンス事業の拡大と両立できるかが課題となりそうだ。

ベネッセの公式サイトによると、しまじろうは5月5日生まれで血液型はO型。「ドーナツがだいすきなくいしんぼう。みんなとあそぶことがだいすき」というが、物語の主人公のキャラ設定としては特徴がない。

こどもちゃれんじを受講する幼児にとって「身近な友だち」であるためだ。教育キャラの安心イメージの裏返しで、エンターテインメント性にはおのずと限界がある。キャラクター・データバンクの陸川和男社長は「しまじろうはベネッセの企業キャラという面もあり、物語性や世界観を膨らませにくい」と指摘する。

当面は飲食料品や子育て用品など「安心」が重視される商品領域でライセンス供与先をさらに増やしていく一方で、本業の幼児通信教育サービスや企業イメージとのバランスに配慮しながら、映画などでしまじろうの新しい可能性をさぐることになりそうだ。

(表悟志)

[日経MJ2013年2月18日付]

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