気球を携帯の中継局に ソフトバンク、開発の舞台裏
電波止めるな 携帯3社の災害対策(下)

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2013/3/11 7:00
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気球を上げる準備にかかる時間は、現場に到着後4~6時間。高度100mへの上昇と下降は、それぞれ最短10分程度で済むという。気球内部はナイロン製の膜が2重構造となっており、中に充てんしたヘリウムガスは「理論上は1年以上、実運用でも1カ月は抜けない」(ソフトバンクモバイル ワイヤレスシステム研究センターの中島潤一ソリューション推進課長)としている。

■「どうすればアンテナを高く上げられるか」が原点

携帯電話から送られた音声やメールなどの信号は、気球を経て車載基地局に送られる。ここからさらにパラボラアンテナで通信衛星に送られ、ソフトバンクモバイルの基幹回線につながる。被災地近隣に正常運用できている地上基地局があれば、車載基地局と地上基地局をつないで信号を送ることも可能だ

携帯電話から送られた音声やメールなどの信号は、気球を経て車載基地局に送られる。ここからさらにパラボラアンテナで通信衛星に送られ、ソフトバンクモバイルの基幹回線につながる。被災地近隣に正常運用できている地上基地局があれば、車載基地局と地上基地局をつないで信号を送ることも可能だ

2011年3月に発生した東日本大震災では、ソフトバンクの基地局のうち約200局が、倒壊や流失などで使いものにならなくなった。停電が原因で停波した基地局と異なり、物理的に被害を受けた基地局は、1日も早く復旧作業をしなければいけない。しかし、郊外にある基地局の多くは鉄塔になっており、そう簡単に建て直せるものではない。もっと短期間に、元通りの携帯回線網を提供する手立てはないものか。そうして震災直後の11年4月に始まったのが、新たな災害用中継局の開発プロジェクトだ。

同社も、災害への備えを怠っていたわけではない。車載型で移動可能な中継局は保有していたが、これではアンテナの高さが最大でも10m程度と低いため、カバー範囲が半径数百m程度に限られていた。今回の震災では、被災地が広く多数の避難所が設置されており、車載型中継局ではそのほんの一部しかカバーできなかった。

「プロジェクトの最初に考えたのは『どうすればアンテナをより高く上げられるか』だった」。プロジェクトを率いたソフトバンクモバイルの藤井輝也センター長(ワイヤレスシステム研究センター)は、2年前をこう振り返る。アンテナの位置が高ければ、アンテナからの電波をより遠くに飛ばすことが可能だからだ。

最初に出たアイデアは、大型のクレーン車を使うというもの。アームを最大限に伸ばし、その先端にアンテナを付ければ高さ数十mまで持ち上げられる。しかし、実際にその高さにアンテナを持ち上げて運用を始めるまでに、少なくとも数日かかってしまう。大型クレーン車が被災地入りするまでの移動時間を考えれば、さらに長くなる。被災地に迅速に中継局を設置する手段としては、理想とはほど遠いものだった。

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