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サイバーエージェント、躍進支える「キラキラ女子」

サイバー流、女性活用の研究(1)

 大手ネット企業のサイバーエージェントにおける若手女子社員の活躍が目覚ましい。仕事だけではなく、おしゃれも、プライベートも、全方位で手を抜かない「キラキラ女子」がその中核。最近では複数の女子社員がスマートフォン(スマホ)向けアプリの開発チームトップとしてテレビCMに出演するなど、八面六臂(はちめんろっぴ)の活躍を見せている。全3回の連載を通じて、サイバーエージェント流女性活用の実態と戦略に迫る。(文中敬称略)
昨年11月から放映された「アメーバスマホ」のテレビCMには、サイバーエージェントの社員が出演した

「アメーバスマホ♪」「どんなゲームなんですか?」――。オフィスの女子社員に、人気放送作家の鈴木おさむがインタビューするテレビCMを記憶の方も多いだろう。サイバーエージェントが昨年11月下旬から月間約30億円と過去最大級の費用を投じ、放映したCMだ。

演じるのは芸能人ではなくすべて社員。出演した12人中9人が20歳代の女子社員で、放映回数の割合では、それ以上に女子社員バージョンが手厚い。華やかなサイバーエージェントの社内が垣間見えるような作品。しかし彼女らは単なる「広告塔」ではない。

「美女を集めて業績が悪かったら、僕はアホ」

出演したのは、いずれもスマホ向けアプリ開発チームを率いる現場トップ「プロデューサー」の肩書を持ち、自分が責任を持つサービスの紹介をした。社員数は連結で約2500人。男女比はほぼ半々。うちプロデューサー職は約200人。この中からCM出演者は「見栄え」で選定されたのか。あえて女性を選んだのか。社長の藤田晋(39)は真っ向から否定する。

テレビCM発表会で出演する女子社員に囲まれた藤田晋社長(中央右)

「いや、これは違うんです。本当にいけているサービス、CMに値するサービスを並べると、結果として女子プロデューサーが手がけるサービスが多すぎただけなんです。社内ランキングの上位は女子ばかり。逆に男子が手がけるサービスを何とか増やそうとしたくらいで」

「うちの女子のパワーはやっぱり男子とは違いますね。理解も早いし、仕事を推進するチカラも、正直、男子より勝っている。男子の方が、瞬発力が弱いし、成長も遅い」

「僕、よく『顔採用』してるといわれるんですけれど、それは正直いって違うんです。美女を集めて業績悪かったら、僕はアホじゃないですか。ただ、社内の女性を見ると、すごくキラキラしている雰囲気はある。実際、女性としても輝いていて、かつ仕事も活躍しているし、頑張っている。できる女性が多い。みんな、公私が充実しているのは確かですね」

今、サイバーエージェントは「キラキラ女子」が支えている、といっても過言ではない。

スマホ向けメディア「アメーバ」へ急激シフト

インターネット広告の取次事業からスタートしたサイバーエージェントは、スマホ向けコミュニティー・ゲーム事業「Ameba(アメーバ)」を軸とした「スマホシフト」を急いでいる。収益は後回しにし、とにかくスマホ上での覇権を握ろうと経営資源を集中投下している。

前出のCMプロモーションはその一環。直近四半期(2012年10~12月期)の連結売上高は前年同期比27%増の408億円と増収だったが、営業利益が前年同期比68%減の15億円と減益になったのは、そのためだ。子会社を通じたソーシャルゲームの課金収入のもうけを一気に注いだ。

スマホ向けアメーバ事業全体のページビュー数の推移(決算資料より)

人員面では、ネット広告事業からアメーバ事業への職種転換などを進め、2011年末に全社の約25%にあたる約490人だったアメーバ事業の従業員数を、12年末までに全社の約40%にあたる約1000人まで増やした。今年1月にはヤフーにFX事業を売却、よりアメーバ色を鮮明にしている。急激なスマホシフトは、確実に結果を残しつつある。

月間133億PV、中核担う若き女子プロデューサー

スマホで稼ぐアメーバ全体で得たページビューは、昨年12月で月間120億。それまでの1年間で約3.5倍まで伸ばし、今年1月は月間133億まで飛躍した。ちなみに、ネット国内最大手のヤフーがスマホで得たページビューは、昨年12月で月間99億(10~12月の平均)。スマホに限れば、すでに国内トップクラスのメディアに育った。

スマホ向けアメーバの会員数は今年1月で655万人。わずか半年で400万人以上も上乗せした。種まきの段階で本格的な収益化はこれからだが、それでも直近四半期、アメーバ事業全体の広告売り上げで、スマホ向けはパソコン向けを超えた。

スマホ上での仮想通貨の消費額は今年1月、10億円に達し、すでにフィーチャーフォン向けの売り上げを抜いてパソコンをも超えようとしている。こうした全社を挙げたスマホシフトの中核を担うのが、若き女子プロデューサーたちだ。

第一コミュニティ事業部の山崎ひとみ事業部長。黄色い人形は自ら手がけたサービス「きいてよ!ミルチョ」のキャラクター

CMにも出演している山崎ひとみ(28歳、07年入社)は女子プロデューサーの筆頭格。入社以来10を超えるサービスをプロデューサーとして立ち上げた後、複数のスマホ向け人気サービスを扱う第一コミュニティ事業部の事業部長に就いた。50~60人の事業部は「山崎組」と呼ばれ、部屋の壁には姉御風の山崎のポスターが飾られている。

「2つ以上、大ヒットを作ったら、本物」

山崎はパソコン向け仮想空間サービス「アメーバピグ」を、入社2年目でプロデューサーとして立ち上げた辣腕。ピグは自分の顔に似せた2頭身の分身「アバター」を操り、他のユーザーと交流するコミュニティーで、そのコンセプトや企画策定を山崎がこなした。

09年2月のサービス開始後、1カ月でユーザー数が10万人を突破。翌10年4月には300万人を超え、タレントの千秋、矢口真里らを起用したテレビCMも放映した。11年10月には1000万人を超え、派生サービスも含め巨大コミュニティーに育つと、山崎は「このままピグにいたら自分が腐っちゃう」と考え、自ら社長にスマホ向けアプリ開発への配置転換を志願した。

「ピグは社長や、チームメンバーのアイデアなどに助けられて大きくなった。総合プロデューサーという立場だったけれど、私が100%立ち上げたと自負できるものではなかったし、いろんな奇跡もあって育ったんですね。私はヒットの確率をどんどん上げていくプロデューサーになりたい。2つ以上、大ヒットを作ったら、本物っぽいじゃないですか」

そういって笑う山崎は12年8月、独り言をつぶやくとペットが成長するスマホ向けアプリ「きいてよ!ミルチョ」をリリース。自らほぼすべてを企画したサービスは、開始から約2カ月で10万人を獲得、累計のひとりごとの件数が1000万件を超えるなど、いきなりのヒットを打った。今年1月時点のきいてよ!ミルチョのページビューは、社内のスマホ向けサービスのランキングで堂々の1位。会員数は40万人を超えている。

teens事業部の永山瑛子チーフプロデューサー(左)と、同事業部でデザイナーを務める美大卒の松本美由貴さん

「アメーバを拡大していくのが私の使命」。そう話す山崎の背中を、多くの女子プロデューサーたちが追いかける。現在、日本に約360万人いるといわれる女子中高生にネット業界で最も食い込んでいるであろう、teens事業部でチーフプロデューサーを務める永山瑛子(27歳、08年入社)はその1人だ。

女子中高生向けサービスのトップ

アメーバ版ツイッター「アメーバなう」をメーンプロデューサーとして立ち上げた後、自ら社長に女子中高生向けアプリの企画を提案。「女子高生の気持ちは俺はもうわからんから。好きにしろ」といわれ、12年4月にリリースしたアプリ「Candy」がヒットした。

女子中高生向けスマホアプリ「Candy」の画面。友達とシェアできる現代版「プリクラ帳」のようなツールだ

「デコれるホムペアプリ」と銘打たれたCandyは、写真をかわいくキラキラに、思い思いの装飾で遊べるのが特徴。現代版「プリクラ帳」としても活用されている。リリース後、3カ月で30万ダウンロードを記録、現在は50万ダウンロードを超えた。永山は「女子中高生に思った通りの使い方をしていただいて、思った通りの世界ができあがっている」と自負する。

今年1月時点での社内ページビューランキングでは、山崎のきいてよ!ミルチョに続く2位。好調なことから昨年12月、女子中高生向けアプリ開発を束ねたteens事業部を発足することとなり、永山は30~40人の新規部署をまとめる立場となった。

現在、チーフプロデューサーとして5つのサービスの責任を持ち、Candyを任せる後輩プロデューサーを育成中の永山に「4年目ですごいですね」と水を向けると、「ふつーですね。山崎さんを見ているので」とけろり。もはや1年目でサービス立ち上げの責任者になることは「ふつー」だということを、その後輩が示してくれる。

新卒1年目から4つのサービスを立ち上げ

テレビCMにも出演している奥田綾乃(26歳、09年入社)は入社してすぐ、社長の藤田直下の新卒プロデューサー育成機関に入り、初年度から4年間で4本のスマホ向けサービスをプロデューサーとしてリリースした。今はソーシャルゲームを手がけるが、はやりのカードバトルゲームではない。

奥田がプロデューサーを務めるのは、主に女性をターゲットとしたスマホで飼えるペット育成ゲーム「あそんで♪HuggPet」。ペットの着せ替えで楽しむのが特徴で、お世話を重ねることで様々な技を覚え、コンテストに参加することもできる。ユーザー数は約25万人。着せ替えアイテムの販売が収入源で、課金収入はアメーバのスマホ向けサービスのうちベスト10に入る。

新卒1年目からサービス開発に責任を持つ奥田綾乃プロデューサー。今年の「書き初め」の意味は、何でもいいから実績を作って世間を「見返す」とのこと

奥田が率いるチームは総勢20人。「ほかの誰にも負けないと思っているのは、メンバーからの『愛され力』。メンバーに読まれると恥ずかしいんですけれど、そこは自信があります」と照れながら話すが、奥田は約100人いる同期でトップを走っている実力派だ。

「女子向けサービスなんだから、それは女子プロデューサーが強いのは当たり前では」と考える方もいるだろう。そう社長の藤田に問うと、こう答えた。

「それは違う。例えばソーシャルゲームは主に男子向けマーケット。アメーバで一番課金収入がある男子向けの『ガールフレンド』は女性プロデューサーだし、ほかの上位ゲームも女性。女性雑誌の編集長も男性がやるわけだし、優秀な人であれば対象となるマーケットは関係しない」

就職氷河期に内定18社、初の女性取締役に最も近い女性

女子の活躍がプロデューサー業にとどまらず、マネジメントにまで及んでいる事実が、藤田の言説を裏付ける。今年2月、サイバーエージェントはスマホ向けオークション「パシャオク」事業を2億5000万円の資本金とともに分社化することを決めた。

サイバー子会社、パシャオクの石田裕子社長。デスクには広告営業時代の社内表彰のトロフィーが並ぶ

新会社の社長に就いたのは石田裕子(31歳、04年入社)。広告営業として7年半、数々の記録を打ち立てた後の11年10月、アメーバ事業のスマホシフトを担う責任重大な立場へと職種転換。数十の個別サービスを束ねるスマホ向けアメーバ全体をどう設計するかなど、この1年間、スマホ向けサービスの躍進の中心で活躍してきた。

その石田が、今度は分社化するほどの戦略的な事業のトップに抜てきされた。「石田はもともと、うちの会社の人事ランクの最高レベル。(抜てきは)自然な流れ」と藤田も太鼓判を押す。そのはず。石田は03年、就職氷河期のまっただ中の就職活動で、公共放送、3大出版、某大手広告会社、某メガバンクなどそうそうたる大手を中心に18社から内定を得たという武勇伝の持ち主。社内からは「初の女性取締役に」と目される存在だ。

本人は「現時点で(役員昇格を)考えているわけではない」とするが、「サイバーエージェント全体としてどういう戦略をもって拡大していくかを考えるのが一番楽しいし、個人的には経営に近い立ち位置で仕事をしていきたいと思っています」と心強いセリフも。

「髪を振り乱して女性らしさを捨てるほど頑張る意味はない」

ともかく、見渡せばこれでもかというほど優秀な女子社員にぶつかる。だがサイバーエージェントの女子の特徴は、単に優秀なだけではない。その全員が「キラキラ」していることなのだ。

彼女たちは口をそろえて「仕事が楽しい」と言い切る。志向は「仕事で成果を出す」ことにとどまらない。女性として自分をいかに魅力的に見せるか。おしゃれにも気遣い、恋愛や結婚、出産など私生活を犠牲にすることは絶対にせず、友人との余暇も存分に楽しむ。全方位で輝いていたいと望んでいる。前出の山崎はいう。

「男性を超えるために頑張るというのは、あまり意味がないと思っていて。髪を振り乱して女性らしさを捨てるほど頑張る意味はない。女性らしく輝きながら仕事も頑張る方が、幸せに生きていけると思っています」――。

「仕事もプライベートも楽しんだ方が、絶対、人生楽しい」

プロデューサー1期生、女子プロデューサーの筆頭がこういうのだから、下の女子も女性らしさを失わないよう、美や楽しみも追求している。そうした彼女たちの気持ちの表れが会社の雰囲気として醸成され、ネット上では「顔採用」「ちゃらい」「リア充(リアル生活が充実している人)が多い」と揶揄(やゆ)されることも多くなった。これに、前出の奥田は反論する。

「ちゃんとおしゃれもして、プライベートも満喫して和気あいあいとしているのをフェイスブックやブログで紹介する社員が多いので、ちゃらいといわれるんでしょうか……。きちんと遊んでるよー、人生も楽しんでるよー、と自信をもっていえるくらい、みんな仕事をおろそかにすることなく頑張ってる。すごく絶妙なバランスでまじめにやっているんです」

技術者の新卒採用の礎を築いた人事部の小川璃紗マネージャー

入社以来、人事畑一筋、新卒採用・育成グループ マネージャーの小川璃紗(28歳、07年入社)は、学生から「サイバーエージェントはリア充ばかりで、やっていけるか不安」とよく相談されるという。

「どうせ1回の人生を生きるなら、仕事もプライベートも楽しんだ方が、絶対、人生楽しいんじゃないんですか、って返すんです。両立して楽しんでいる社員が集まっているのは、すごく誇りだなと。ほかの会社でも、楽しんでいる人はたくさんいると思うんですよ。でも会社から規制がかかって、ネットで自由に書いたり、表に出す人が少ないのでは。うちの会社は、そこは本当に自由。それが引用されて広がっていく。いい意味で注目されているのかなと思っています」

なぜキラキラ女子が集まるのか

そう話す小川自身、キラキラ女子。帰国子女で、米国ではクラシックバレエ団の奨学制度に合格し、主役も務めた。就活は法律事務所やメガバンク、外資系証券会社などを受け、そのうち、いくつからか内定も得た。最終的にサイバーエージェントに入り、人事部門に配属。08年、サイバーエージェントは初めて技術者の新卒採用を開始したが、小川はその礎を1人で築いた。

今は、エンジニアとデザイナーの新卒対象者、2000人ほどの3分の1の採用にかかわるなど、新卒採用の要となっている。仕事に「不満はない。本当に楽しい」。総務部門にまで、キラキラ女子は浸透している。

サイバーエージェントの躍進。それを支えるキラキラ女子。なぜかくも優秀で、公私ともに輝いている女子社員が多いのか。サイバーエージェントが意図して集めているのか、それとも、彼女たちに好まれる何かがサイバーエージェントにあるのか。続編以降、サイバーエージェントに集結するキラキラ女子の謎を解き明かしていく。

(続編「『キラキラ女子』集結の謎と効用、藤田晋社長が語る」を24日に掲載します)

(電子報道部 井上理)

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