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「うどんの関西」でそばが勢力拡大 増える産地や人気店

 「時うどん」という上方落語があるように関西で麺と言えばうどん。そばは有名店がひしめく東京や原料産地の信州(長野県)などと違い、従来はイメージが薄かった。だが、地域活性化を目指して関西でも新たな産地が育ち、関東の味付けを取り入れた人気店が増えるなど、勢力を強めているようだ。そばの最新事情を調べた。
新産地 花開くソバ(兵庫県姫路市)

近畿圏内の2010年度のソバの作付面積は999ヘクタールで全国の約2%だが、08年度に比べ4割増えた。一番の生産量を誇るのが滋賀県。10年度の栽培面積は08年度比50%増の416ヘクタール。10年度の収穫量は279トンに上る。

同県内では多賀町が主要産地。1996年度に栽培面積0.2ヘクタールからスタートし、11年度は83ヘクタールまで拡大した。関西のそばといえば従来は兵庫県豊岡市の出石町の「皿そば」が有名だが、今、ここ以外にも「そばを特産品に」との動きが広がる。

最近、新たな産地として躍り出ているのが兵庫県姫路市夢前町だ。9月中旬から10月上旬まで真っ白なソバの花が咲く。ソバ栽培は耕作地の有効利用につながる。現在、6つの営農組合と農業法人が無農薬・無化学肥料の「夢そば」を作り、12年度の作付面積は約80ヘクタールと県内最大だ。

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農業生産法人「夢前夢工房」(同市)の衣笠愛之社長(51)は99年、5ヘクタールの土地で栽培を始めた。当初は地元のそば店しか販路がなく苦戦。その後、製粉会社や農家などと協議会を立ち上げ02年に乾麺の販売を始めると認知度が上がり、地元百貨店やスーパーに取扱先を広げることに成功した。

夢前夢工房は市内でレストランやそば打ち体験教室も開く。衣笠社長は「夢そばを通じ、地域の活性化につなげていきたい」と意気込む。

同じ兵庫県の八幡営農組合は05年から加古川市の5ヘクタールでソバを生産。06年からは生産したそばを同組合が運営する店で提供している。商品名は地元の神社から取った「八幡厄神そば」。殻ごと粉にするのが特徴で風味があり、腰も強い。地元住民に加え市外からの観光客も増加中だ。

「芦屋土山人」では契約農家のソバを自家製粉して手打ちする(兵庫県芦屋市)

栽培の拡大と同時に関西でも、そば好きをうならせる人気店が増えている。大阪発祥の老舗そば店といえば「砂場」といわれ、大阪市には石碑が立っているが、現代の関西のそば店も元気だ。

兵庫県芦屋市発祥の高級そば店「土山人」は店舗を増やし東京にも出店した。国内の契約農家のソバの実を自家製粉。ざるそばのつゆは関東よりで、かつお節中心の辛口だ。

温かいそばのつゆは澄んでいながら味は「やや濃いめ」

一方で、温かいそばのつゆは昆布とかつお節ベースで関西風だ。芦屋土山人の井手口未来店長(31)は「開業した98年当時は関西に手打ちそば屋が少なかったが、近年は兵庫県や大阪府で広がっている」と語る。

関西には大阪市にミシュラン一つ星を獲得した「なにわ翁」があり、奈良市の「玄」も人気店として知られる。

最近の人気店は「土山人」のようにざるそばのつゆは辛口にしているが、温かいそばは関東風の黒いつゆでなく、澄んでいながらそばに負けないやや濃いめの味付けにしている場合が多い。

雑誌「あまから手帖」の編集顧問、門上武司さん(59)は「関東の特徴を取り入れながら独自性を打ち出し、関西で受け入れられる形に変えた。そこが貪欲なところ」とみる。関東の有名店などから学び、関西で独立したそば職人も目立ち、新たなそば文化を創り出している。

高級店・人気店とはいえ、1000円ほどあれば食べられる店がほとんどで、昔も今も庶民の味であることは変わりない。秋が深まれば新ソバの季節。どんな関西のそばを食べようか。今から楽しみだ。

(神戸支社 原欣宏)

[日本経済新聞大阪夕刊いまドキ関西2012年9月26日付]

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