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こんな人が「ベンチャー起業家」として大成功する

伊佐山元(いさやま・げん) 1973年2月生まれ。97年東大法卒。日本興業銀行からスタンフォード大学ビジネススクールに留学し、ベンチャーに目覚める。現在、米大手ベンチャーキャピタルのDCM本社パートナーとしてITサービスやネットメディアの投資を担当。日米のテクノロジーベンチャーを発掘し、世界に広めることを生き甲斐とする。プライベートでは子供にゴルフを教えながら頭と心を鍛えることを趣味とする。

"ベンチャーで成功している経営者はどんな人?"

"成功している起業家に共通していることは?"

"どんな人が起業家に向いている?"

ベンチャーや起業家という言葉を耳にした時には、誰もが一度は想起する疑問である。当然このような質問に対して普遍的な解はない。それゆえ色々と研究や分析がなされ、成功特性みたいなものがまことしやかに語られている。

ただ、筆者がこの10年間シリコンバレーで出会った起業家、中でも、『ベンチャーキャピタル(VC)をはじめ投資家の立場から』成功したと言われている経営者、特に最高経営責任者(CEO)にいくつかの特筆すべき特徴があった。今回は、VCが好むシリコンバレーベンチャーの経営者の特徴を3つご紹介したい。

特徴その1:メガロマニア(誇大妄想癖)

このカタカナにすると仰々しい英語(Megalomania)は、日本語では誇大妄想癖というが、文字からイメージされるような悪いことではない。簡単に言えば、自分は他の誰よりも優れている、必ず勝つはずだという強烈な自信と成功意欲にあふれている精神をいう。俗にいう、オーラやカリスマだ。

スタンフォード大学の中心を通るUniversity Ave。多くのベンチャー企業のオフィスが居を構える。右側の角のオフィスはフェイスブックの最初のオフィスでもあった(筆者撮影)

私がシリコンバレーで一緒に仕事をした、成功しているベンチャーの経営者の大半は、程度は違えどもメガロマニアである。この手の経営者との会話は、正直、大変だ。何せ世界が自分を中心に回っているのだから、なかなか議論にならない。

ビジネスの軌道修正をするにもかなりのエネルギーと外野の支援なくしてはままならない。また、とにかく話が大げさな場合が多いので、良いニュースは割り引いて、悪いニュースは突っ込んで、という対応が不可欠だ。

ただし、このようなCEOは、会社が成長し始めたときに、中途半端な買収の提案など甘い誘いに乗ることもなく、とことん会社を大きくして富と名誉を得ることにまい進するため、我々投資家にとっては極めて好都合であったりする。またビジネスや技術のブレークスルーも、良い意味で"根拠無き自信や確信"がベースで起きたりする。ベンチャーの醍醐味を感じる瞬間でもある。

特徴その2:パラノイア(偏執症)

パラノイア(Paranoia)は日本語で偏執症という。このいかにも取っ付きにくそうな性格も、我々投資家にとっては都合が良い。

一見ただのゴルフ練習場だが、実はタイガー・ウッズ、ミシェル・ウィーといったゴルフプロやYahoo創業者のジェリー・ヤン、SUN Microsystems創業者のスコット・マクネリー、その他大勢の名経営者が通った、シリコンバレーならではの場所である(筆者撮影)

普段仕事をしている時は常人と変わらないが、ある特定の妄想に取り付かれヒトが変わることがある。いつ競合が現れるかわからない、自社製品が問題を起こすか分からない、従業員に裏切られるかもしれない……。常に自ら不安をかき立てることで24時間365日、勝ち続けるためにまい進するのが彼らの宿命だ。

私も様々なパラノイアな経営者と一緒に仕事をすることがあったが、この妄想に歯止めが利かなくなると、被害妄想になり、すべての提案に攻撃的になり、最後は独裁的になり組織から離れざるを得なくなるという危険性もある。

ただ、テクノロジーの世界のように技術進歩が目覚ましく、絶えず競争にさらされている世界では、多少はパラノイアでないと、勝ち残れないことは明白だ。パラノイアが組織への健全なフィードバックとして生かされ、企業文化の一部になることで、常に競合の一歩先を進む組織を作ることができる。

特徴その3:ヒューメイン(人間味あふれる性格)

最後に、ヒューメイン(Humane)。日本語で言う思いやりの心や、義理人情といった人間味あふれるキャラクターである。

創業者が単なるメガロマニアやパラノイアであれば、どんなにカリスマ性や実力があろうとも、長期的に誰もついていくことはできない。

ビジネスの勝負にどん欲な一方で、無邪気であったり、ちょっと抜けていたり、情け深い側面があるからこそ人はそのような経営者に魅力を感じ、ついていきたいと思う。

シリコンバレーの名物経営者であるアップル創業者の故スティーブ・ジョブス氏、インテルの元CEO、アンドリュー・グローブ氏、オラクルCEOのラリー・エリソン氏、最近で言えばフェイスブックCEOのマーク・ザッカーバーグ氏など、皆この3つの資質を持った経営者である。

起業家の町でもあるせいか、気楽に起業の話ができるおしゃれなカフェがいたる所にあるのもUniversity Ave.の特徴である(筆者撮影)

彼らと一緒に仕事をしてひどい経験をしたと漏らす人間も大勢いるが、それを上回るだけの"信者"がいることは確かである。

「ベンチャーの経営者」であるということ

考えてみれば当たり前のことだが、ベンチャー企業の本質が、新しいビジネスモデルで既存の企業に立ち向かうことか、今存在しない市場を作り上げることだとすると、中庸をいくら極めても成功するはずながない。

いかに人がしないことに"根拠無き確信"や"揺るがぬ信念"を持って挑戦し、周りにクレイジーと言われても、冷ややかな反応が続いても、リソースの続く限り臆せず前進し続ける精神力。そのエネルギーが新しいベンチャーを創造する根本である。

そんな経営者を、一人でも応援し成功させることが我々ベンチャーキャピタルの使命であり、今日も個性あふれる経営者との出会いを楽しみにしている。

在米ベンチャーキャピタリスト 伊佐山元 (e-mail: gen.isayama@gmail.com)

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