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ロンドン五輪、トップブランドも競演

ステラ・マッカートニー、ジョルジオ・アルマーニ、ラルフ・ローレン……、27日に開幕するロンドン五輪は、ファッションショーさながらの様相になるかもしれない。各国の公式ユニホームを、その国のトップデザイナーたちが手掛けているのだ。種目別でもイタリアのヨット競技のユニホームをプラダが担当する。ファッション業界も火花を散らす五輪だ。

ラルフローレンが提供する米国の五輪代表チーム公式ウエア(提供=ラルフローレン)

五輪は格好の宣伝ツール

五輪に一流ブランドが登場したのは1948年ロンドン五輪イタリア陸上チームのウエアをデザインした「ミッソーニ」が初めてとされる。

もっとも、当時、創業者のオッタビオ・ミッソーニ自身が400メートルハードル代表として五輪に出場しており、ニットブランドとして名をはせるのはその後だ。

ここ数年、一流ブランドがこぞってスポーツラインを出すようになっている。鍛えられた肉体を持つ選手が着て、全世界で放映される五輪は格好の宣伝ツールともいえる。

ミッソーニの出場で始まった五輪とブランドの関わり。そのロンドンの地で今、トップブランドがそろってしのぎを削る。

開催国の英国はポール・マッカートニーの娘が担当

ビビアン・ウエストウッドでも、バーバリーでもなく、英国は早々と今が旬のデザイナー、ステラ・マッカートニーに白羽の矢を立てた。

英国チームのユニホームをデザインしたステラ・マッカートニー(中央)

ステラはビートルズのポール・マッカートニーの娘。クロエのデザイナーを経て、自らのブランドを2001年に立ち上げ、04年からアディダスと「adidas by Stella McCartney」というスポーツウエアも展開している人気者だ。フィギュアスケートの浅田真央選手(中京大)もオフアイスの練習で好んで着る。

ステラは今回、競技用と表彰式や開閉会式、選手村で着るウエアの両方をデザインした。

選手村などで着用するものは、ライオンをモチーフにしたもののほか、白、赤、グレーを中心に、普段、町で着ても「おしゃれ」なものをそろえている。

ステラ・マッカートニーがデザインした英国チームのユニホーム

特に工夫を凝らした競技用は、英国旗を濃淡のあるブルーで表現した。「国旗のデザインに忠実でありながら、現代風のアレンジにした」(ステラ)。赤を使わずに英国旗を表現したことに批判の声もあるが、選手には好評だ。

パフォーマンスにいい影響?

地元メディアに対して、ステラは「選手に聞いたの。『外見がよく見えると気分は違う? それってパフォーマンスにいい影響を与えるか』って。みんな『イエス』と言った。スポーツでもスタイルを犠牲にしてはいけない」と話す。

ファッション性を重視すると動きにくかったりするが、アディダスと提携してトップアスリート向けも出してきたステラにとってはお手の物だ。

ただし、誰にでも着せるわけではなく、スポンサー契約は女子テニスの世界ランク8位のキャロライン・ウォズニアッキ(デンマーク)一人に絞っている。

実力だけでなく「イメージに合う選手であること」(アディダス広報)が条件だそう。ゴルフのロリー・マキロイ(英国)が恋人のウォズニアッキは美貌でも知られる選手だ。全員もれなく着られる英国チームはぜいたくといえるかもしれない。

史上最もぜいたくな五輪キット

06年、サッカーのワールドカップを制したイタリアチームに、チームの愛称「アズーリ(空の青)」色のスーツを提供したのは、ドルチェ&ガッパーナだった。

ロンドン五輪を担当する、ジョルジオ・アルマーニも、五輪だからといって国旗の色にかまうことなく、五輪ウエアは白とミッドナイトブルーのデザインとした。

競技用のウエアは選手、または競技団体が契約したメーカーが担当しており、アルマーニが手掛けるのは選手村や開会式、表彰式などの式典で着用するもの。デザインの自由度が高い分、ブランドの力量も存分に発揮されそうだ。

「史上最もファッショナブルな五輪になるだろう」と発表会見で述べたアルマーニ。ジャンパーと、長パンツの上下はレーシングスーツのようで、男子選手が着ると、そのままランウエーを歩いてもおかしくないようなセクシーさが漂う。

約50点にもなるスポーツウエアを詰めたアルマーニの旅行カバンが「五輪キット」として代表選手に渡される。これで喜ばない選手がいるだろうか。

「これがアメリカ」ラルフローレン

米国の開閉会式と選手村で着用するウエアはラルフローレンが北京五輪から担当している。メダル授与式のものはナイキだ。バンクーバー五輪時のラルフローレンのダウンベスト、ポロシャツは好評で、メダル授与式後の記者会見、普段の練習でも選手が好んで着ていたが、今回も格好いい。

製造元が中国であったことから、自国の雇用機会を守ろうという共和、民主両党の議員がクレームをつける場面もあったが、競技関係者の信頼は変わらないようだ。

1920~30年代を彷彿(ほうふつ)させるような、ベレー帽、白いシャツに白いパンツ、短パンに赤と濃紺のポロシャツ。女性はスカート部分がフレアースカートになったシャツワンピースもある。

「いいデザイナーに頼むことはすごく重要。ラルフローレンはみんな好きだし、我々アメリカ人が1つのチームだという意識にしてくれる」。米国五輪委員会のスコット・ブラックマン専務理事は言う。選手、役員にはひとそろい配られるが、それとは別に追加で自分用に買う選手、役員は少なくないという。

実は06年まではカナダのブランド「ルーツ」を着用していたが、切り替えた。「ラルフローレンはとてもアメリカらしいブランドだろう。米国のウエアにぴったりじゃないか」とブラックマン理事。

ラルフローレンはゴルフ、テニスの全米オープン、ウィンブルドンにもウエア提供している。米国代表のスポンサーになるのも、スムーズに進んだ。

ちなみに、ラルフローレンもアルマーニも、ステラ・マッカートニーも五輪関連アイテムを一般向けにも出していて、通販などで購入できる。

ただし、バンクーバー五輪の際、ラルフローレンのポロシャツを2枚買ったが、きっちりラルフローレン価格だった。今回もポロシャツが145ドル(1万1600円)、パーカーが165ドル(1万3200円)、セレモニー用のスカート(シルク)が498ドル(3万9800円)、一番手ごろなTシャツで55ドル(4400円)、円高の今がお買い得か。

「プラダ」を着用するラッキーな選手は……

間違いなく今回の五輪で最も有名であろう選手が、陸上男子100メートル世界記録保持者で連覇がかかるウサイン・ボルト。母国ジャマイカの式典用ウエアと陸上チームのウエアはプーマが提供するのだが、デザイナーはセデラ・マーリー。「レゲエの神様」として知られるジャマイカのアイコン、ボブ・マーリーの娘だ。ジャマイカらしさを強烈にアピールする。

日本ではなじみが薄いが、スノッブなスポーツとして、ヨット、ボートは欧州で人気がある。屈指のヨットレースとされるアメリカズカップに参戦してきたプラダが今回、イタリアのヨット代表にウエアを提供する。こちらももちろん「アズーリ」。発表された素描によると、濃紺のズボンに、ロイヤルブルーのジャケットに白いポロシャツだ。

北京五輪の開会式で入場行進する日本選手団

日本は……

92年バルセロナ五輪開会式の森英恵、96年アトランタ五輪開会式の芦田淳、そして、レインボー柄のマントが現地であまり評判が良くなかった00年シドニー五輪、ユニクロ提供で、高田賢三がデザインした花柄のマントと帽子の04年アテネ五輪……、日本のウエアはこれまでビッグネームを起用した割にあまり注目されなかった。

北京大会はミズノとはるやま商事が提供、紺のジャケットに白いパンツと無難にまとめた。今回は高島屋が担当し、赤いジャケットに白いパンツというオーソドックスな線に。選手村やメダル授与式で着るウエアは長年、ミズノ、デサント、アシックスが分担して、Tシャツ、ウインドブレーカー、短パン、バッグ、シューズなどを提供している。

トップブランドを前面に押し立ててくる各国とのファッション対決。メーカーも苦労しているようだ。予算が限られているので、素材も自由に選べず、思った通りに作れない、と聞いたことがある。

しかし一方で、海外スポーツメーカーに起用される日本人デザイナーは少なくないのだ。

08年北京五輪で話題をさらった高速水着、英スピード社のレーザーレーサーをデザインしたのは、「コム・デ・ギャルソン」の川久保玲。ナイキも「GYAKUSOU」というランニングウエアを、日本の「UNDERCOVER」とコラボレーションして海外でも販売している。

アディダスと提携した、海外でも人気のスポーツブランド「Y-3」を持つ山本耀司、ダウンジャケットで有名なフランスの「モンクレール」と提携する「sacai(サカイ)」……、どれもファッション界では話題をさらっている。

日本も実力がないわけではない。見た目が良くなればメダル数が増えるというワケではないけれど、「クールジャパン」をアピールするのに五輪は格好の機会だと思うのだが……。

(原真子)

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