2019年8月25日(日)

電力は「歴史的な転換点」 京大の植田氏に聞く
編集委員 滝順一

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2012/7/8 7:00
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2030年に向けての国家エネルギー戦略を議論してきた総合資源エネルギー調査会(経済産業相の諮問機関)の基本問題委員会は、原子力や再生可能エネルギーなどの電源構成の4つの選択肢を公表し議論は一つの峠を越した。同委員会の委員であり、再生可能エネルギー固定価格買い取り制度の調達価格等算定委員会の委員長も務めた植田和弘京都大学教授に聞いた。

――総合エネ調の基本問題委員会は長い議論の末に、「2030年に原発比率をゼロ」「15%程度」など4つの選択肢を示しました。

植田和弘・京都大学教授

植田和弘・京都大学教授

「日本の電力供給体制は歴史的な転換点にある。情報技術(IT)によるスマート化で電力システムはこれから大きく変わりうる。私は電力システムの改革の結果として、電源構成が決まると考えており、30年時点の原子力や再生可能エネルギーの割合をあらかじめ政策的に決めるのは筋が違うと思う。ただ国民的な議論のためには具体的な数字を見せないといけないので、委員会で電源構成比の選択肢を示したのはやむを得ないことだ」

「今回のエネルギー政策の決め方には問題があった。例えば原子力発電のコストなど原子力に関係する事柄は、原子力委員会が決め、基本問題委員会はその結論を受け入れた。これは原子力委が原子力の既得権益を守っているかのようにみえる。基本問題委員会はその名の通り、エネルギー全体を包含した議論をすべきだ。複数の諮問機関で総合的な政策のパーツ(部分)を議論する格好になっているのは、官僚による一種の分割統治だとも言える」

――仮に原発ゼロの選択肢を選択したら、電力会社に対し使用可能な施設を廃棄しろと命ずるのですか。そうしたことが通用するのでしょうか。

「電力会社の経営に失敗があったと考えている。(原発という)リスクの大きな電源に依存しすぎた。原発を動かす必要があるのは、電力会社の経営が原発なしには成り立ちにくい構造になっているからだ。原発再稼働は経営問題だ。原発が止まったままでは、いずれ電力会社はどこも電力料金の値上げを申請せざるを得ない。料金値上げは国民的議論の対象となり、総括原価主義や地域独占、発電と送配電の垂直統合ビジネスモデルが問われるだろう」

「脱原発を支持する意見が大勢を占めた場合、廃炉のスピードを『40年寿命で順次廃炉にする』ケースより速めることになる。その場合、原子力は国策民営で進めてきたのだから、国が廃炉に関して一定の責任を負うことも考えうるだろう。原発は今や不良債権に似ている。すぐに損を出すか、先延ばしするかの違いだ。私は廃棄物から環境問題の分野に入った。廃棄物問題の視点から考えると、原子力は放射性廃棄物の処分が決まっておらず、根本的な問題を未解決なまま残しているのが問題だ」

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