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ソーシャルメディア運営 「管理せず」が開く可能性

(徳力基彦)

徳力基彦アジャイルメディア・ネットワーク社長

国際的な広告関連の表彰イベント「カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル」において、スウェーデン政府観光局の「キュレーターズ・オブ・スウェーデン」という企画がグランプリに輝いた。この施策はスウェーデンの国の公式のツイッターアカウント(@sweden)の投稿権を、毎週1人のスウェーデン国民に開放し、自由に投稿してもらおうという企画だ。

企業や組織の公式なツイッターアカウントやフェイスブックページというと、当然その組織の中でもインターネット専門の担当者やスキルがある人、もしくは社長や広報部長など権限がある人「だけ」が投稿を担当すると考えるのが普通だろう。

(1)スウェーデン政府が公式ツイッターの管理を国民に開放し話題に。
(2)トップダウンの価値観とソーシャルメディアは相性が悪い。
(3)ソーシャルメディアの支配と管理を諦めると新しい可能性がみえる。

 日本でも首相官邸が公式ツイッターアカウント(@kantei)を持つなどソーシャルメディアを活用している。鳩山由紀夫元首相が在任中にツイッターを始めて話題になったこともあるが、通常は情報の出し手である政府側の人間が投稿内容を管理するのが常識のはずだ。

ところが、スウェーデン政府はこの常識を逆手に取り、公式アカウントの運営を、通常であれば情報の受け手側であるはずの一般国民に開放してしまったのだ。

スウェーデンのツイッターアカウントの担当に選ばれた人は1週間、自分の好きなようにこのアカウントを運営できる。自分の生活をつぶやいたり、スウェーデンの料理や風土を紹介したり。中には多くの人と議論する人もいるなど、担当になった人の運営の仕方は多様だ。

トラブルも少なくなかったようだが、スウェーデン政府が担当者を信じて任せるという姿勢をとり続けたことで、多くのユーザーからの共感を集めた。この点が今回のグランプリ受賞につながっているようだ。

あくまでこのスウェーデン政府の施策は1つのシンボル的な事例でしかないが、実はここに日本企業が参考にすべきソーシャルメディアの本質的なポイントが詰まっている。

 通常は政府や企業がソーシャルメディアで情報発信する際には、必ず利用者によるネガティブな発言や、誹謗(ひぼう)中傷、炎上と呼ばれるようなトラブルをどう回避するのかという議論が巻き起こる。企業や組織の公式アカウントの担当者は注意に注意を重ねて発言するだろう。トップダウンで管理したくなるのも当然だ。

カンヌライオンズは国際的な広告表彰イベントだ=AP

ただ、ソーシャルメディア上のコミュニケーションというのは、実際には対面での会話と同じ、利用者や国民との意見交換会の場と同じであって、批判もされれば議論も巻き起こってしまうのは当たり前だ。

スウェーデン政府のように、組織による支配や管理の権利を手放してしまうということは、批判やトラブルも起きやすくなるというデメリットが増える。その半面、よりソーシャルメディアの可能性の本質に近寄ったことで、今回のようなグランプリ受賞につながる話題になっているともいえるのではないか。

ユーザーに公式アカウントの管理を任せるというのは、なにもスウェーデン政府が初めてではない。コカ・コーラは4300万超の「いいね!」を誇る世界最大級のフェイスブックページを持つ。もともとはコカ・コーラファンのユーザーが始めたものを企業の公式ページとして運営を委託したという経緯がある。

スウェーデンやコカ・コーラのようなアプローチが取れるかどうかは、文化やユーザー層に左右される。リスクがないと言えばウソになるが、ソーシャルメディアの支配や管理を諦めることで、新しい可能性が見えてくることも間違いない。

[日経MJ2012年7月4日付]

 「ECの波頭」は最新のEC事情を、専門家が読み解きます。執筆は、D4DR社長の藤元健太郎氏、通販コンサルタントの村山らむね氏、デジタルハリウッド大学教授の三淵啓自氏、アジャイルメディア・ネットワーク社長の徳力基彦氏が持ち回りで担当します。

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