超電導、実用化へ日本が先陣  エネルギーを確保せよ(2)
技術で創る未来

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2012/5/24 6:55
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発電所でせっかくつくった電気も送電途中で約5%が失われている。このロスをなくすだけでも電力不足解消の有力手段になる。現在注目を集めている技術が「超電導」だ。一定温度まで冷やすと電気抵抗がゼロになる。超電導は蓄電にも役立つ。日本が得意とする研究分野で、世界に先駆けた実用化も狙える。

■冷却で電気抵抗ゼロに、送電ロスを削減

「7月にもデータセンターでの利用を想定した直流送電の本格実験を始める」。中部大学(愛知県春日井市)の山口作太郎教授は声を弾ませる。

現在の送電線は電気抵抗のある銅やアルミで交流で送る。基本は100年以上前から不変だ。山口教授が扱うのは銅酸化物の超電導線材。セ氏零下196度に冷やすと電気抵抗がゼロになる。直流は送電ロスが少ない。冷却に必要な電力を差し引いても、1000キロメートル以上の送電で損失を0.5%まで抑えられる。

中超電導直流送の実験装置は屋内で液体窒素を作って送電、屋外を回って戻す(中部大)

中超電導直流送の実験装置は屋内で液体窒素を作って送電、屋外を回って戻す(中部大)

同大は最先端の超電導直流送電の実験施設を持つ。ケーブルは住友電気工業製で長さ200メートル。今夏の実験では2キロアンペアを送る。当面の目標は変電所まで送られてきた電気を直流に変え、近くのデータセンターなどに供給すること。データセンターの消費電力を最大40%減らせる可能性がある。

国内の総発電量は年間約1兆キロワット時で、約1億1400万キロワットの発電能力が必要。仮にすべての送電線を超電導に変えると送電ロスが約513万キロワット減る。原発5基分以上が不要になる。課題は現在のインフラを大きく変える必要がある点。山口教授らはデータセンターの専用線設置を突破口に、普及を目指す戦略だ。「韓国や中国、ロシアも実験を始めた。実用化で一番乗りしたい」

太陽光や風力発電など天候に左右される再生可能エネルギーも、つくった電気を大量にためられれば安定にできる。千葉大学の野波健蔵教授は一般的な電池と異なり、化学反応を使わず損失がほとんどない電力貯蔵装置「フライホイール(はずみ車)」を開発中だ。

フライホイールは発電した電気をもとに円盤を高速回転させ、回転エネルギーとして電気をためる。取り出す際は電線を接続し、回転が徐々に落ちながら電気に戻る。試作機は丸いすほどの大きさ。容器の中を鋼鉄の軸が付いた直径40センチ、厚さ15センチのアルミ製の円盤が回る。円盤は磁石の力で数ミリ浮いている。

現在は電磁石を使っているが、超電導材料をもとにした永久磁石に置き換える。円盤も樹脂製に変えて大型化し回転数を高めれば、1世帯の1日分の10キロワット時をためられる。野波教授は「メーカーと2年後にも風力発電と組み合わせたシステムの実現を目指す」と話す。

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