2019年4月26日(金)

活字漬けの世界一周旅行
(テクノロジー編集部BLOG)

2012/10/26 7:00
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学生時代に起業したITベンチャーを米国企業に数十億円で売却し、この半年ほど「世界一周放浪の旅」を楽しんでいるSさんに会いました。

必携の品はスマートフォンとデジカメと米アマゾン・ドット・コムの電子書籍端末「キンドル」。アマゾンで大量の和書を注文して段ボールごと電子化代行会社に郵送してもらい、代行会社がコンテンツをデジタルデータに変換し、それを旅先で受信するのだそうです。

「日本語の新刊本は電子化されているものが少ないからこんな面倒な手順を踏まないといけないんですけどね」――。

   ◇         ◇   

アマゾンは今秋から日本語書籍の電子版の販売を始め、端末の日本語版も投入します。世界最大手の参入によって、ようやく日本でも本格的な電子書籍時代が幕を開けます。

莫大な会社売却益を手にしたSさんは気ままな旅を楽しんでいますが、物理的な書籍を1度も手にせず、地球上のどこにいても日本と全く変わらない「活字漬け」の生活が送れるわけですから、何とも今風の旅姿だと思います。

Sさんによると、旅をしていて改めて「ITには人間の生活スタイルと意識を不可逆的に変えるパワーが潜んでいる」ことに気付いたそうです。コミュニケーション、娯楽、業務、学習、文化、安全、地域活動……。世界のどこでもほぼ携帯電話がつながり、手のひらに収まるわずか数百グラムの端末で、大量かつ最新のコンテンツに触れることができます。

すごい時代になったといまさらながら驚くのは、当方が昭和30年代生まれで、新入社員が子供とほぼ同じ年齢で、ブルートレインや青函連絡船や自転車一人旅に郷愁を感じる世代だからでしょうか。

   ◇         ◇   

「奥の細道」で知られる江戸時代の俳人、松尾芭蕉。旅先の金沢で弟子の死を知ったのは、逝去から半年以上たってからでした。

「塚も動け 我が泣く声は 秋の風」

芭蕉が詠んだ慟哭(どうこく)の句は、今ならどんな表現になるのでしょうか。それとも、このような文学はもう生まれないのでしょうか。IT全盛の21世紀には旅もスピード時代。江戸期と今を比べるのはナンセンスかも知れませんが、「悲壮感と覚悟を背負い故郷を後にする」という旅人に対して抱くイメージは過去のものになりつつあるのかも知れません。

で、元起業家のSさん。あと半年ほどアジアや南米を回ってくるそうです。「またビジネスをしたくなったら、戻ってきますが、そうしたらきっと休みなしに働いちゃうと思うんで、しばらくは長期休暇ということで」。IT武装した旅人は、そう言い残して、明るく出立していきました。

(町)

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