2019年1月23日(水)

ソーシャルメディアで経営改革 老舗食品スーパーの決断
広がる「ソーシャルシフト」

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2012/2/22 7:00
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茨城県を中心とする北関東に約140店舗を展開する老舗食品スーパーのカスミ。インターネットとは無縁で、ツイッターやフェイスブックなどでの情報発信もいっさいしてこなかった同社が「ソーシャルシフト」に沸いている。ソーシャルシフトとは、ソーシャルメディアを使って社内改革や経営革新に取り組む動きを指す。昨年11月に同名の書籍が発刊されたのを機に、全国でソーシャルシフトが広がりを見せている。

カスミは茨城県を中心とする関東に、大型の食品スーパー約140店舗を展開する

カスミは茨城県を中心とする関東に、大型の食品スーパー約140店舗を展開する

「ツイッターやフェイスブックでお客様や社員の声に耳を傾け、対話し、真の顧客志向の経営へと変革する。『ソーシャルシフト』に書かれている事例を知り、カルチャーショックを受けた。何を言ってるんだと思われるかもしれないけれど、それほど立ち遅れていた。地べたに這いつくばって汗水垂らし、お客様に頭を下げていればいいんだと、ずっと思ってやってきたから」

この3月に71歳になるカスミの小浜裕正会長は、茨城県つくば市に構える地方大学のような風貌の本社で、そう吐露した。1965年、米軍による北ベトナム爆撃が始まった年に神戸商科大学を卒業後、ダイエーに入社。たたき上げで専務取締役まで上り、2000年、カスミに転じた。以降、副社長、社長、会長を務め、カスミの再建に肝胆(かんたん)を砕く。

ファミリーレストラン、コンビニエンスストア、ホームセンター……。不採算事業を次々に整理し、本業の食品スーパーに集中。03年にはイオングループと資本・業務提携をし、持ち分法適用会社となった。徹底したコスト削減と顧客志向で業績は回復、右肩上がりで売上高を伸ばす。12年2月期の売上高は約2200億円、営業利益は77億円と、ともに過去最高を見込む。

だが、チェーンストア産業の生き字引ともいえる小浜会長は今、業績のV字回復を果たしながらも、強烈な危機感にさいなまれているという。

■「顧客の声を聞くと言いながら、何も聞いていなかった」

「昨年、カスミは創業50周年を迎えた。消費者のライフスタイルは大きく変わり、リーマンショック以降は生活感も変化した。しかし食品スーパーは何も変われていない。米国のGMS(総合・スーパー)を学び、それに縛られ、なかなか自己革新ができないでいる。食品スーパーが果たすべき役割や使命は何なのか。従来型ではない思想で社会とのつながりを再構築しない限り、食品スーパーは廃退していくんだろうという危機感が強烈にある」

カスミの小浜裕正会長。2000年、ダイエーから移り、業績回復を果たした

カスミの小浜裕正会長。2000年、ダイエーから移り、業績回復を果たした

「我々はお客様の声を聞くと言いながら、じつは何も聞いていないに等しかった。本質も捉えることができていない。地域の生活者との接点のあり方を根本から変えないと、過去の経験の積み上げだけではこの先、生き残るのは難しい。ただ分かってはいるけれど、どうすればいいのか。悶々(もんもん)としていたというのが正直なところです」

そう危機感を抱え、懊悩(おうのう)していた小浜会長は、書籍との出会いを機にソーシャルメディアを経営に生かすという未知の世界へと踏み出す。

全日本空輸、スターバックス、良品計画……。ソーシャルメディアを通じて社員と消費者、社員同士が対話しながら、ボトムアップで経営変革を進める各社。それらの事例が載ったソーシャルシフトを小浜会長に差し出したのは、カスミの監査役だった。

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