「周回遅れ」の海洋エネルギーが秘めた力 東大の木下教授に聞く
編集委員 滝順一

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2011/12/7 7:01
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島国の日本はかつて、波力などを利用した海洋エネルギーの利用技術研究では世界の先頭にいた。しかしいつの間にか欧州諸国に周回遅れになった。語られる機会が少ない海洋エネルギー開発の現状と課題を東京大学生産技術研究所の木下健教授に聞いた。

木下健・東京大学生産技術研究所教授

木下健・東京大学生産技術研究所教授

――日本の海洋エネルギー技術は世界に大きく後れをとっているそうですね。

「1998年ころまでは日本は先進国だった。石油代替エネルギーの開発を目指し、浮体式波力発電装置の『マイティホエール』や『海明』など数々の実験を世界に先駆けて成し遂げたが、発電コストが1キロワット時あたり140円ほどかかるとの結論になり開発を止めた。欧州では英国やポルトガルが地道に研究を続け実験装置の発電容量が10年で10倍に大型化(波力で80キロワット級が800キロワット級に)している」

「欧州は発電コストが10円以下になりうるかどうかという採算性の尺度だけで研究を進めているのではない。エネルギー安全保障の観点からエネルギー源を多様化する一環として海洋エネルギーの実用化を息長く進めている。欧州は北アフリカの砂漠で太陽光や風力発電をして送電する構想を推進しているが、海洋もそれと同じ発想だといえる」

――海洋エネルギー資源利用推進機構という組織を結成していますね。

「海洋エネルギー資源の重要性を政治家や国民に説き関係者が情報交換するため3年前に設けた。重工メーカーやベンチャー企業など30社、大学の研究者ら約160人がオールジャパンで結集している。私たちが海洋エネルギー資源と呼んでいるのは、波力、海流、潮流、潮汐(ちょうせき)、海洋温度差発電、マリンバイオに、洋上風力発電も加えている」

「日本は海洋エネルギー資源のポテンシャルが大きい離岸距離30キロ、水深100メートル以下の海域で、波力発電は年間870億キロワット時、海洋温度差発電で1560億キロワット時の潜在的な利用可能量が存在する。原子力発電所に換算すると、それぞれそれぞれ14基、25基分という巨大な電力量になる。送電線を原発に引くのではなく海に引ければ、量的には問題ない」

「海洋温度差や海流はあまりエネルギーをとってしまうと自然環境に影響を与えるので、自然のお裾分けをいただく程度でいい。波力や風力はできるだけ利用したい。経済性の面でも2020年ころには1キロワット時あたり20円くらいまで下がるはずで、太陽光より安くなる」

――技術面でのブレークスルーがあったのか。

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