ブームに溺れた任天堂、浮沈のカギ握る「サービス化」
ゲームジャーナリスト 新 清士

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2011/10/30 7:00
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ゲーム業界の大きな競争環境の変化が、高収益企業の代表格だった任天堂の業績を直撃している。同社は27日、2012年度3月期の連結最終損益が200億円の赤字に転落する見通しを発表。28日の決算説明会で岩田聡社長は「年末商戦の盛り上がりを期待している。来期には改善する」と語った。しかし任天堂を襲っているのは一過性の販売不振ではない。インターネットスマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)を駆使したゲームの急速な普及で、過去の「勝ちパターン」が通用しなくなっているのだ。盤石なプラットフォーム戦略でゲーム分野のイノベーションを先導してきた任天堂だが、環境の変化は同社が追いつけないほど加速している。

決算発表する任天堂の岩田聡社長(27日午後、大証)

決算発表する任天堂の岩田聡社長(27日午後、大証)

■ゲーム事業の環境、5年で激変

「ニンテンドーDS」と「Wii」で勝ち続けてきた任天堂を取り巻く環境はこの5年あまりで激変した。家庭用ゲーム機のビジネスは、1983年の「ファミリーコンピュータ」の発売以来、一定のパターンがあった。5~6年に一度、新型のハードを投入し、いち早くユーザーの支持を得た企業が高いシェアを獲得し業界の盟主になれた。

しかし05年から始まった「Wii」(任天堂)、「プレイステーション3」(ソニー・コンピュータエンタテインメント=SCE)、「Xbox360」(マイクロソフト)の3つのハードの競争が行われている間に市場の環境は激変した。

変化のけん引役となったのは、「Facebook」に代表される交流サイト(SNS)の浸透と、08年頃から始まったソーシャルゲームの台頭、さらには07年発売の「iPhone」に代表されるスマホの登場だ。

携帯型ゲーム機「ニンテンドー3DS」はハードソフトとも販売が振るわない=共同

携帯型ゲーム機「ニンテンドー3DS」はハードソフトとも販売が振るわない=共同

これらはハードの機種を問わない汎用的な「プラットフォーム」であるため、ゲーム以外にも多様なアプリやサービスを利用できる。消費者の立場からすれば、どこでも、どんなサービスでもスマホやパソコンで安く遊べる利便性を手にした訳だ。ネットの普及は技術革新とサービスの広がりに拍車をかけ、その上に乗ったプラットフォームが有利に事業を展開できる時代に突入したのだ。

■任天堂の「閉じたプラットフォーム戦略」が弱みに

任天堂は伝統的にオープン性の低いプラットフォーム戦略を採ってきた。それは同社の「強み」であり「弱み」でもあった。

ハードとソフトの技術を社内で磨き上げ、うまくコントロールされた質の高いゲームをじっくりと時間をかけて完成させる。それがブランドへの信頼性を生むと同時に、他社が自社のプラットフォームに容易に参入できないようにする敷居の高さを作った。質が高くて安心な上、まねがしにくいゲームコンテンツ(情報の内容)を作ることに注力してきた。

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