2019年1月24日(木)

「トリウム」燃料にした原子炉、安全性は チェコ原子力研究所のウーリ博士に聞く
編集委員 滝順一

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2011/8/17 7:00
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トリウムという物質を燃料にした原子炉に世界の注目が集まっている。現在普及している軽水炉の燃料に使うウランに比べて資源量に恵まれ、廃棄物の処分も比較的容易であるなど利点がある。トリウム炉の研究に取り組むチェコの企業、原子力研究所(Nuclear Research Institute)のヤン・ウーリ博士(同社フッ素化学部門長)は「安全性の面でも軽水炉より優れる」と話す。

チェコ原子力研究所のヤン・ウーリ博士(同社フッ素化学部門長)

チェコ原子力研究所のヤン・ウーリ博士(同社フッ素化学部門長)

――トリウムの研究を手掛ける背景を教えてください。

「研究所は民間企業で、国内で原子力発電所を運転するチェコ電力に対し安全や信頼性の面で技術支援をしている。チェコ電力が50%以上を出資する大株主だ。一方、政府でエネルギー政策の責任を担う産業貿易省からは、長期の研究課題として『第4世代』と呼ばれる次世代原子炉の研究開発を請け負っている。トリウム炉はその一環で研究している」

――それはどんな炉ですか。

「溶融塩炉と言って、核燃料のトリウム232を高温の溶融塩に溶かして使う。化学の世界でいう塩(えん)とは食塩(塩化ナトリウム)が代表的だが、陽イオン(食塩の場合はナトリウムイオン)と陰イオン(同じく塩素イオン)が結合してできた物質のことを指し、高温では溶融して液体になる。トリウム炉の場合、フッ化リチウムとフッ化ベリリウムというフッ化物溶融塩を使うことを考えている」

「トリウム232は天然に存在する物質だが、このままでは核分裂してエネルギーを生み出すことはない。核分裂の連鎖反応に『着火』するには、最初に中性子をあてて分裂を導く必要がある。中性子をあてるとトリウム232は核分裂性のウラン233になる。ウラン233は自然に分裂し中性子とエネルギーを出す。この中性子がトリウム232をウラン233に変換する役割を担うので、いったん着火すれば次々にウラン233が生まれ持続的に連鎖反応が続く」

「原子炉内で高温になった溶融塩を炉外の熱交換器に導いて熱を取り出す。こうしたトリウム炉は1960年代に米国のオークリッジ国立研究所で実験炉がつくられ、技術的な基礎は実証ができている。ただウラン235を濃縮して使う軽水炉がすでに普及段階に入っていたので、商業的な応用を試みることがなかった。しかし軽水炉に比べて優れた点がたくさんある」

――それはどんな点なのですか。

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