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ボールペン、それとも筆ペン?…筆記具が描く新感覚

デザイン工夫し新たな購買層開拓

使い勝手はシャープペンだが、書き味は鉛筆。筆ペンだけど弾力があってボールペンのように書ける――。こんな新感覚の筆記具が好調な売れ行きを見せている。少子化による学童人口の減少やオフィスのペーパーレス化など筆記具市場には逆風が吹く。技術的には成熟した感のある筆記具だが、各社とも目新しい製品を繰り出すことで、既存のユーザーと異なる年齢層を開拓しようと知恵を絞っている。

東京ビッグサイト(東京・江東)で開かれた「国際文具・紙製品展ISOT2011」(6~8日)。鉛筆メーカーの北星鉛筆(東京・中央)のブースでは「大人の鉛筆」と銘打った商品が注目を集めた。形はノックできる金具がついたシャープペン状。そこに太さ2ミリメートルの芯を入れて使うが、実際に書き心地を試すと鉛筆そのものだ。先が丸くなった時には独自の芯削りでとがらせる。

「大人が使いやすい鉛筆って無いのですか?」。製品開発のきっかけは、同社の工場を見学した人の一言から始まった。「ボールペンのようにインク切れせず、シャープペンに比べ折れにくい鉛筆の良さを気に入っている大人は多い」(杉谷龍一専務)。ただ、仕事中にポケットに入れて持ち運ぶには不向き。長年、小学生が主要顧客だったため、量販店では子ども向けのキャラクター商品が並ぶ。「一般の大人が鉛筆を使うのは資格試験のときくらい」(同専務)なのが現状だ。

創業60年、下町に営業本部・工場を置く同社は、年間売上高5~6億円の9割ほどを鉛筆だけで稼ぐ。年産3000万本のうち約9割が学童向けだ。鉛筆市場は少子化やIT(情報技術)機器の普及などで、1960年代から半世紀、ほぼ一貫して縮小が続く。

新しい市場開拓には「一般の大人にも注目してもらえる新たな商品が必要」(同社)と考えた。役員が中心となってシャープペンの使い勝手を生かしながら、芯の丈夫さと書き味は鉛筆の良さを残すというアイデアに行き着いた。購入者からは試験のマークシートでも書きやすいと評判だ。4月15日の発売以来、徐々に引き合いが増えているという。

逆に中高年の需要が主体だった筆ペンを土台に、若年層の取り込みを狙ったのが、筆ペン大手の呉竹(奈良市)が開発した「ジグ レターペン ココイロ」だ。

字を書く際に「とめはね」ができる筆ペンならではの特徴を温存しながらも、芯先に弾力のある素材を使っているため書き心地はまるでサインペン。本体を握った感覚はボールペンのようだ。パステル調のカラフルな本体部分(全10色、税込み157円)と水性塗料インクの入ったリフィル(全6色、税込み210円)が別売りで、着せ替え人形のように好きな色のインクを好みの色の本体に差し込んで使う。

筆ペンの用途を調べてみると主に年賀状のあて名書きなどで、購入者も50~60歳代が多い。既存商品の出荷の伸びが期待できないなか、「需要を掘り起こすには、今まで筆ペンを使っていなかった20~30代に訴えかける商品が必要と考えた」(同社)。日記や手紙など日常生活の中で使ってもらえるよう、筆ペン独特の書きづらさを無くす工夫を重ね、ボールペン感覚でも味のある筆文字が書けるよう1年近くかけて開発した。

昨夏に発売。想定より低い10代の反応も良く、「販売店で品切れすることもあるほど売れている」(同社)。今月末には本体とリフィルの色をそれぞれ3色追加する予定だ。

日本のメーカーでは珍しく欧米の若手デザイナーを対象にコンペを行い、「新感覚」のデザインを施した筆記具ブランドも登場した。ゼブラの「アルベス」シリーズだ。第1弾は1985年生まれの若手フィンランド人デザイナーによる錐(きり)の形を取り入れた「アルベス・ピールト」。3月に油性ボールペン3色、シャープ、蛍光ペン3色(税込み各105円)を発売。これまで想定を超える累計20万本以上を出荷した。

ゼブラといえば、「事務用品メーカーというイメージが強かった」(同社)ため、比較的高い年齢層で認知度が高く、20~30代の取り込みが課題となっていた。そこで、ビジネスマンが格好良く使えるデザインで今までのイメージを打ち破ろうとしている。

今年の10月14日には、数量限定でオレンジ、ライトブルー、ライトグリーンの3色のボールペンを新たに投入する予定。今後も新しいデザイナーの起用を進めていく考えだ。

少子化で筆記用具を使う学生の数が減っているのに加え、オフィスのIT化で「筆記用具で書く機会自体が減っている」(北星鉛筆の杉谷専務)。逆境の中で需要を掘り起こすには今までと違った年齢層に訴える機能面での目新しさが不可欠だが、「技術面でほぼ成熟した筆記具は、デザインで新感覚を出す工夫が求められている」(ゼブラの担当者)。生産・出荷が伸び悩んでいるとはいえ、日常生活や仕事には欠かすことができないのが筆記具。長年で蓄積した技術を応用しながら、商品デザインなどでいかに「新感覚」を打ち出せるか、業界の挑戦が続いている。

(電子報道部 宮坂正太郎、町田知宏)

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