ソニーが直面するハッカーの「倫理」と「伝統」
ゲームジャーナリスト 新 清士

(1/4ページ)
2011/6/15 7:00
保存
共有
印刷
その他

プレイステーション・ネットワーク(PSN)の情報流出問題に関係してスペインやトルコで逮捕者が出た。各国政府機関や任天堂といった企業が攻撃されたほか、ハッカー集団「アノニマス」もスペイン政府への報復を予告するなど、予断を許さない事態が続いている。

米ロサンゼルスでのゲーム見本市で発表した新製品「PS Vita」=AP

米ロサンゼルスでのゲーム見本市で発表した新製品「PS Vita」=AP

企業への攻撃の真の目的は何か、「アノニマス」は何者か、真犯人は誰なのか、など疑問は尽きない。しかし、少なくともPSNの情報流出については、「情報の自由」を標榜(ぼう)するハッカーと、「情報管理」を旨とする企業との根深い対立構図が浮かび上がってくる。理由がどうあれサイバー攻撃は是認できるものではないが、インターネットの普及でデータ通信が世界中で自在に使える時代だからこそ、ハッカーが唱える彼らなりの「倫理」と「伝統」をまずは知っておく必要がある。

■「情報を自由に」というハッカーの考え方

今でこそ「ハッカー=ネットワーク荒らし」と解釈される傾向が強いが、元来はコンピューター技術にたけ、深い知識を持つ人のことを指していた。米ジャーナリスト、スティーブン・レビー氏の著書「ハッカーズ」(工学社)によると、そのルーツの一つは1950年代末にマサチューセッツ工科大学においてコンピューターで先進的な技術を試そうとする学生たちだった。当時は、電算機の利用が厳格に管理され、自由に触ることができない制限下にあった。その中で、何とか電算機の応用の可能性を広げていこうという考え方が出てくる。それは「ハッカー倫理」と呼ばれ、以下のようなものだ。

・コンピューターへのアクセス、加えて、何であれ、世界の機能の仕方について教えてくれるものへのアクセスは無制限かつ全面的でなければならない。

・情報はすべて自由に利用できなければならない。

・権威を信用するな――反中央集権を進めよう。

・ハッカーは、成績、年齢、人種、地位のような、まやかしの基準ではなく、そのハッキング(行為)によって判断されなければならない。

・芸術や美をコンピューターで作り出すことは可能である。

・コンピューターは人生をよい方に変える。

この考え方は、1960年代の素朴な無政府主義的な雰囲気と結びついていた。実現不可能な理想像ではあるが、当時はこれが信奉されるほど純朴な学生が多く、関わる人間の数も限られていた。ともかく「ハッカー=悪者」ではなく「ハッカー=創造性」と位置づけられていたことが分かる。

  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 次へ
保存
共有
印刷
その他

関連記事

電子版トップ



[PR]