「夫の病気にも圧勝する」 DeNA南場社長、退任への思い
「会社は公器」を貫いた決断

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2011/5/27 12:12
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■唐突な社長交代に揺れたネットと市場

DeNAの2011年3月期決算は売上高が前年比134%増の1127億円、営業・経常利益はそれぞれ同164%増の560億円、同161%増の562億円。5月26日時点の時価総額は4240億円と、同2860億円の日本テレビ放送網を筆頭とするテレビ民放各社を軽くしのいでおり、営業・経常利益ではともに電通(509億円、541億円)を抜き去った。設立からわずか12年で名実ともにネットメディア業界の雄へと育て上げた南場。辣腕経営者の突然の退任に多くの人が驚き、株式市場は動揺した。

社長退任の記者会見をした南場社長(左)と6月に新社長に就く守安取締役(25日、東証)

社長退任の記者会見をした南場社長(左)と6月に新社長に就く守安取締役(25日、東証)

25日午後3時過ぎ、退任の報はネットを駆けめぐり、話題をさらった。「びっくり」「家族のために、すごい」……。国内で1700万人以上が利用する「Twitter(ツイッター)」では、最もつぶやかれた単語を抽出する「トレンド」の1位に「南場」が浮上。株式市場では、翌26日に売り先行で始まった株価は106円ほど値を下げた。

実は南場にとっても、突然の退任は予期せぬ事だった。好決算を発表した大型連休前の4月28日、南場とCOOの守安が続投し、昨年買収した米ソーシャルゲーム大手、ngmocoのニール・ヤングCEO(最高経営責任者)が取締役に新任するなどの新体制を固めたばかりだった。連休前半には夫婦そろって結婚式に列席したとの話もある。ところが事態は急変した。

「私の夫ということで、病気だということを世の中にさらされなければならないのは、私と結婚して貧乏くじを引いたなと、かわいそうだなと思う」と話す南場は、本音を言えば病気であることすら明かしたくはなかった。これまでも家族のプライベートについては言及を避けている。プライバシーを考慮したうえで概略を説明すると、次のようになる。

■「夫を支える妻」という立場に全力投球

この連休中に夫の病状が悪化し、5月10日に手術を受けた。手術は成功、快方に向かっており、6月中には退院できる見込みだ。だが、中長期的な治療が必要な状況で、どの程度の看病が必要となるか先は読めない。社長業は常に全力が求められる。夫の看病で社業を最優先にできないのは社員にも申し訳ないと思い、退任を決意した。

早稲田での特別授業を持ったこの日、「人生をかけて成し遂げたいことは何ですか?」と聞く学生に、南場はきっぱりとこう答えた。「旦那を救うことですね」

夫は南場社長がコンサルティング会社のマッキンゼーにいた時の同僚。彼もまた1990年代後半からネット業界の最前線で数社の役員を歴任し、辣腕を振るった。互いに別の道を歩んできたが、夫の病を機に、今度は妻という立場で全力投球することを決めた。これが社長交代の直接的な理由だ。だが、それには裏がある。

足下の業績は絶好調で、米社の買収を足がかりにグローバル市場での事業を本格展開しようとしていた矢先の出来事。「私の夢は、このDeNAという会社で世界のてっぺんに登りつめることです」。常々そう語っていただけに、道半ばでの挫折と考えてもおかしくはない。

ところが南場は、「まあ、退任が1年早まっただけで、会社にとっては大したことはないですよ」と、"挫折説"を一蹴する。「夫の病気とは関係なく、もともと世代交代の準備を進めてきていた」と言うのだ。

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