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運動能力を左右 「スポーツ遺伝子」はあるか

 ジャマイカの陸上選手、ウサイン・ボルトのように、疾風のごとく駆ける「超人」らを見ると、きっと生まれつき何かが違うのだろうとだれもが思ってしまいます。

Q 運動が得意かどうかを左右する遺伝子はあるのかな。

A 国内外でいくつかの研究グループが、運動能力のカギを握る遺伝子を探している。東京都健康長寿医療センター研究所のグループは2010年6月、細胞の中にあるミトコンドリア遺伝子の個人差(多型)が瞬発力や持久力に関係しているかもしれないとする研究論文を英専門誌に発表した。

陸上や水泳、バレーボールなどでオリンピックに出場した日本人選手139人と、一般人672人とを比較研究。ミトコンドリア遺伝子で日本人は12の型に分類できるが、短距離・瞬発力系選手の15%がF型で、持久力系選手の8.9%がG1型だった。一般人での割合(F型6%、G1型3.7%)よりも明らかに高かったそうだ。

Q ミトコンドリアって何?

A ミトコンドリアは小胞体と呼び、エネルギー代謝を担う。この遺伝子の個人差が持久力となんらかの関係がある点はある程度予想がついたと、この研究者は語っている。ただ、瞬発力は想定外だったという。

人間のゲノム(全遺伝情報)が完全に解読されてから、この10年で遺伝子探索が急速に進展した。病気が主な研究対象なのだが、運動能力に関係するとみられる遺伝子もこれまでに数十個見つかっているようだ。

研究者の間で最もよく知られているのが「ACTN3」。筋収縮や骨格筋の構造を保つたんぱく質を作り出す遺伝子で、3つの多型がある。03年、オーストラリアの研究者が瞬発力系オリンピック選手約30人で調べたところ、普通だと20%ほどいる欠損型「XX」が1人もいなかった。

ウサイン・ボルトを筆頭に最近、陸上競技での活躍がめざましいジャマイカ選手では、短距離系の多くが瞬発力を出すのに有利とされる型「RR」との研究報告もある。

Q スポーツ遺伝子の研究が進展すれば、将来、遺伝子検査をして、どのスポーツに向いているかどうかわかるようになるのかな。

A こうしたスポーツ遺伝子の有無が、選手の運動能力を大きく左右すると考えるのはよくない。研究が先行する「ACTN3」でさえ、その多型による個人間の筋肉量のばらつきは3%を説明しているにすぎないという。

順天堂大学スポーツ健康科学部の内藤久士教授は「いつ、どの国に生まれ、どんなコーチと出会うか。世界の頂点に立つには様々な環境にも恵まれなければならない。金メダルはまさに奇跡のたまもので、遺伝子もミラクルを生むひとつの要因でしかない」と話している。

(編集委員 矢野寿彦)

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