2019年2月20日(水)

お金の世界には人間ドラマがある 久間十義さん 11月連載

2010/10/28付
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――「お金」という言葉から、どんなことを思い浮かべますか。

ぼくはあまりお金に縁がないのでよくわからないけれど(笑)、お金の世界にうごめいている人間には興味がありますね。いま、世の中がどんどん官僚的になってきているけれど、お金のからむ世界にはまだ人間ドラマがあると思うんです。

少し前にサラ金関係者と会って話を聞いたことがあるんですが、その人物がすごく面白かった。私たちはテレビを売るのと同じようにお金を売っているんだ、という調子で、あっけらかんとして威勢がよくて、どうやって格好よく生きるか、ストレートな欲望や本音がむき出しでした。今回のリレー小説では、そんなふうにサラ金の世界で生きてきた男を主人公にして、人間臭い物語を書いてみようと思います。

――久間さんの小説といえば、日経夕刊に連載した「刑事たちの夏」でも、警察という大組織のなかの男たちが人間臭く、生き生きと描かれていました。政財官を巻き込んだ疑獄事件に立ち向かい、殉職した主人公の松浦や、アロハシャツが似合う大男赤松などは魅力的でしたね。

あの小説は、自分にとっては節目となる作品でした。デビュー後、最初は世界をどう解釈するかを考え、観念的な小説を書いていたのですが、やがて、そうした純文学に違和感を覚えるようになった。だったら、いっそのこと自分の好きな(スウェーデンの)マルチン・ベックシリーズみたいな警察小説を書いてみようと思い、吹っ切れました。当時はバブルが終わり、大蔵官僚などが批判されているころだったので、警察という官僚的な世界を描くことに入れ込みました。

――10年余りたったいま、続編の長編小説「刑事たちの聖戦(ジハード)」を出しました。殉職した松浦刑事の息子が思わぬことから政財官の闇の争いに巻き込まれる……。この作品も、登場人物たちが生き生きとしていますね。

いまの社会は、普通の感覚の子なら、自分の殻に逃げ込んでいってもおかしくないくらい息苦しい。そこで、松浦の息子が自分の部屋に引きこもっているという設定にしました。そんな少年が赤松みたいな亡父の友人たちの手助けを受けて、どうやって生きのび、成長していくのか。こういう人間ドラマを書き始めると、物語が展開していき、終わりがありませんね。

ひさま・じゅうぎ 1953年北海道新冠町出身。早稲田大学文学部仏文科卒。87年、豊田商事事件を扱った「マネーゲーム」でデビュー。90年、「世紀末鯨鯢記」で三島由紀夫賞。97~98年日本経済新聞夕刊に連載した「刑事たちの夏」がベストセラーに。警察小説、医療ミステリーなど幅広く執筆。主な小説に「ダブルフェイス」「放火」「聖ジェームス病院」「生命徴候(バイタルサイン)あり」など。近著に「刑事たちの聖戦(ジハード)」(角川書店)。

久間十義さんの小説は、11月1日から掲載します。 

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