2019年7月17日(水)

本当に15年ぶりの円高? 外貨投資の誤解(6)
編集委員 田村正之

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2010/8/30 7:00
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もちろん、通貨安が今の日本にとってありがたいのは当然。企業の状況も様々なので、今の円高が堪えられない輸出企業も多いだろう。「企業の海外進出の加速は国内の雇用減を生み、特に若い世代が苦しむことになる。政府の危機感は薄すぎる」(林教授)。

ただし、実質レートの考え方に立った場合、円高の本質的な原因は、日本の長年にわたるデフレ体質(低いインフレ率)にこそあることになる。

円高による輸入価格の下落もデフレの要因の一つなので、円高とデフレは「鶏と卵」の関係でもある。ただしデフレの要因は、国内の需給ギャップ(生産能力が需要よりはるかに大きいと、価格下落圧力が働く)や金融政策など様々なので、円高だけをデフレの原因にするのも無理がある。

「国内のデフレを止めることこそが、長期的に考えた場合の円高の本質的な対策」(佐々木さん)なのではないだろうか。

金融・財政政策などを総動員して、そうした本質的な対策が取られないと、円高は長期的にさらに進む可能性がある。

グラフAで分かるように、実質実効レートでみた95年の水準は、現在より約3割も円高。当時と実質的に同じ水準まで円高が進むとすれば、ドルで計算すると1ドル=57円だ。そうなったら、本当に日本は沈没してしまうかもしれない。

個人が外貨に投資する際も、名目レートだけを見て「今の円高は経済実態を表していないのだから、絶対に円安に戻る」と決めつけて大幅な外貨投資をすると危ないかもしれない。

「実質実効レートで考えると、さらなる円高があってもおかしくない」という視点を頭の隅に置いておき、外貨に投資する場合も時期を分散することでリスクを抑えることが大切ではないだろうか。

もちろん、何かのきっかけで急に円安に反転し、「あの時に大量に外貨投資をしておけば」と後悔する可能性はあり得る。でもそれは、リスクを抑えながら投資をするために支払うべき必要なコストと言えるだろう。

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